ヤンデレblゲーに転生しましたが、モブの俺には主人公ルートしかない

ベポ田

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代替器蒐集編

『強欲』の愛犬 上

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────『色欲』の代替器は、レタンタの森で生みだされた。
 レタンタの森に生きた、さる民族相伝の魔術刻印。それが刻まれた三枚の鏡を向き合わせ、無尽蔵に魔力を反射させる伝統工芸品。たった一つを除き、100年前の山火事で、民族もろとも残らず焼失した。残された一つは、100年以上その内部で幾何級数的に魔力を増幅させ、一級品の魔導具となった。
 相性の良い──『色欲』の罪源ならば、40年は抑え込めると推定されるが、山火事以来、未だに行方知れずのままである。
 資料も何もかもが焼失し、実態のすべてが謎に包まれたそれを、世界中のコレクターや権力者、研究者達は血眼になって探している。
 …………と、いうのが物語上の設定であるが。
 俺は、その伝統工芸品の正体が、小さな『万華鏡』であることを知っている。何ならそれが、今はペンダントに加工されていることまで知っている。
 なんせ原作者なもので。
 ただ原作者と言えど、学園に流れてくる前の在処は知らない。こういった、設定上のブラックボックス的な要素ばかりは、地道に足を使って埋めていく他無いのである。
 そういうわけで、比較的在処のはっきりとしている万年水晶の採取に行く間に、情報収集の得意なグリードに万華鏡の探索を任せていたわけだが。

「えん…えん……怖いよぉ、痛いよぅ…………」
 全身打撲と青痣だらけで、腫れてお岩さんみたいになった右目から涙を垂らす。
 鼻をつくような酒の匂いと、目に沁みる煙草の煙。霞んだ視界の中で、古い木製の椅子に腰掛けた男が、上半身を捻ってこちらを向いた。
「すまないね、圭一くん。もう少し我慢していてね」
「煩え犬だな、グリード。躾がなってねえんじゃねえのか」
「ひん……」
 優し気な男──グリードの向い席から、目に傷のある「いかにも」な強面に睨まれて縮こまる。
 腐り、ささくれ立った床に頬を擦りつけ、ベコベコのスチール皿に注がれた液体をペロペロ啜れば、そこら中から下卑た笑いが響いた。
 …………あの後、満身創痍でマーカーにたどり着いた俺が転移してきたのは、片田舎のパブだった。
 そこで待ち受けていたグリードは、満面の笑みのまま、「直接マーカー繋いじゃった」と俺を簀巻きにして転がした。
 そして、パブの店主であるという、あの怖い男と今こうしてカードゲームに興じているわけだが。
 店主が煙草をくゆらせる。薄くなった煙の向こう。店主の目は、既に自分の手札へと注がれている。
 自らから関心がそれた事に安堵しながら、俺は引き続き液体を啜る。
 流石は、ミンチ状態のグラトニーを30分ちょっとで修復したポーションと言うべきか。
 あれだけ治りの悪かった怪我が、徐々に回復していっている気がするが──。
「──ロイヤルストレートフラッシュ」
 そんな宣言に、酒場がしんと静まり返る。
 次に沸き起こった歓声と怒号に、スチール皿が飛び上がる。顔面にポーションを被ることになった俺は、本当に犬みたいにブルブル首を振る。
 真っ暗な視界の中で、「おまたせ」なんて囁きが、思わぬ至近距離で降った。
「ほぎゃー!」とひっくり返った肢体を、厚い手に支えられる。
 液体の染みる双眸をこじ開ければ、案の定、壮絶な美貌がすぐ眼前に鎮座していた。
「…………終わったんですか」
「ああ、言ったろう。『すぐ終わる』と」
「はあ……」
 縄を解かれて自由になった身体で、差し出された手を取り起き上がる。
 机上に無造作に散らばったカードは、なるほど確かに、10-1がスペード一色で揃えられていた。
「…………」
「では、約束通り総取りだ。これはもらっていこう」
 そんな言葉に、視線を机上から隣の男に向ける。
 節くれだった指先が、しなやかに跳ねてはコインをピンと跳ね上げた。
 通貨ではない。表面にあしらわれた複雑な文様は、エンブレムか何かだろうかと思った。
 ここにきて、ようやっと状況が読めて来る。
 グリードは、このコインを得るために店主とのポーカーに興じていたということだろうか。
「…………縛る必要ってありましたか」
「もちろん。君は私のパートナーであれど勝負に介入してくることはない。手早く示す必要があった」
「そんな……!」
 口を開く前に、腰に回った手にグイグイと前進を促される。
「さあ、きりきり動きたまえ。あまり時間が無いんだ」
「ちょっと──」
「『憤怒』がじき学園に戻ってくる。…………『怠惰』と一緒に」
 耳に吹き込まれた囁きに、咄嗟にグリードへと視線が吸い寄せられる。
 しかし、その横顔は相変わらず涼しいもので。「モーガンと…?」と尋ね返せば、「そう」と、視線を前方に向けたまま答えた。
「あの二人、随分と仲が良いみたいじゃない?」
 そんな指摘に回想するのは、狩野の元で療養生活をしていたときの会話である。
 ────『今の生徒会長さんが計らってくれて』
 その言葉から察するに、狩野とモーガンには、全く接点が無いというわけではないのだろう。けれども、俺は彼らが話しているところを見たこともないし、いつ知り合ったのかもわからない。
 彼らが行動を共にしているのなら、やはり、相応の利害関係が存在するのだろうが────。
 パン、と。手を叩く乾いた音に、意識を引き戻す。
 グリードが、人当たりの良い笑みを浮かべたまま、「そういうわけだから、オヤジ」と首を傾けた。
「私たちは早々にお暇するよ。次に会った時は、ボトルをかけて一勝負しよう。そうだな私は──」
 言葉が途切れる。
 そのころには俺は、頭を抱えて蹲っていた。
 黒々とした、底の見えない銃口が俺たちを四方から取り囲んでいたからだ。
 縮こまったままブルブル震える俺に反して、グリードの佇まいは実に悠然としたものだった。
 眼前の銃口を、無感情に一瞥。そして、どこか哀愁の滲んだ視線を、正面から銃を突きつける店主へと向けて。
「──何のつもりかな」
 朴訥とした言葉は、酷く空気を冷やした。
 数人が、グリードを避けるように後退る。
 異様な光景だった。一見では、圧倒的に不利な立場にいる筈の男の一挙手一投足に、皆が怯えていた。
「…………イカサマは認められない」
「イカサマ?イカサマなんて、私は……」
「お前の手札には、9以上の数字は行かないことになっていた」
「ちょっとジョークが高度すぎるよ、オヤジ」
 眉根を寄せては、潔白を主張するように両手を上げる。
 突きつけられたそれを、玩具とすら思っていないような緊張感の無さだった。
 どこまでも飄々とした態度に、店主の表情が苛立ちに歪む。
 返事の代わりに、金具と金具の擦れ合う音が響いて。
「──それは、やめたほうがいい」
 穏やかな、諭すような声だった。
 しかし、すぅと細められた双眸は、どこまでも剣呑な光を宿していた。
 強張った表情のまま、店主が引き金にかかった指を折る。その様子に、「そう」と、何かを諦めるようにかぶりを振って。
「残念だ」
 破裂音。
 何が破裂したのかは分からなかった。厚い手のひらに、すんでのところで視界を覆われたからだ。
 暗い視界のなか。眉間に風穴をこさえたグリードを想像して、ただ震える。
 しかし、次に響き渡ったのは、情けない男の悲鳴だった。
「指が!俺の腕が!」
「何!?一体何が──!」
「君は見ない方が良いと思うよ」
 制止を振り切って、視界を覆う手のひらを払い除ける。
「───────っ、」
 そして、絶句する。
 店主が──屈強な男が、赤子のように泣き叫んでいた。
 そしてその右腕には、手首から先が無かった。
 歪な断面から、肉と骨が露出している。詰まった蛇口を捻ったみたいに、赤黒い血が、ゴプゴプ絶え間なく流れて。
 肉片と血飛沫の飛び散った床に、生臭い血溜まりが広がっていた。
「…………ぇ、う゛っ!」
「だから言っただろう。お子様には刺激が強すぎる」
 咄嗟に口を覆った俺の顔を、膝を折ったまま、呆れたように覗き込んでくる。その生温い空気感は、眼前の惨状に対してあまりにもアンバランスで。
 無防備に背をさすられては、促されるまま立ち上がる。
 そして、グリードが立ち上がるなり、店内は引き攣った恐怖に鎮まり返って。
「それ」
 悠然と突き出された左手に、数人の男が尻餅をついては後退りする。
 繊細な指先は、店主の首を指していた。
「そうだな。次は、それをいただこう」
「赤い……痣」
 店主の無骨な首に、赤い痣が首輪のように巻きついていた。
 そしてその意味を、俺は確かに知っている。
 臓腑が冷えるような感覚に、今度は俺がそのグリードの腕を掴もうと手を伸ばす。
 だが、それを避けるように、ごく自然な所作で左手が持ち上げられる。
 「頼みがあるんだ」と。どこまでも穏やかな言葉は、店主ではなく、室内の全員に向けられていた。
「私たちに危害を加えないこと」
「……っ、ぁ゛あ゛!?」
「無闇に騒ぎ立てないこと」
「────っ!」
「ここで見たことは、口外しないこと」
 淡々と告げられた言葉に、男たちはただ頷くことしかできない。
 何もわからないからだ。
 グリードに逆らった店主の右手が消し飛んだ。
 それ以外は、何も。
 唇の端だけで微笑しては、右目を細める。「ありがとう」と答えた声音に何故か、刃先で頬を撫でられたような錯覚を覚えた。
「今度こそ、私たちはお暇するよ」
 腰に回された手に促されるまま、歩みを進める。
 行手を阻んでいた男たちが、割れた海よろしく道を開けて。
 店の敷居を跨ぐと同時に、「そうそう」とグリードは振り返った。
「約束は守るべきだ」
 ────さもないと、痛い目を見る。
 低く落とされた言葉に、扉の脇の男が尻餅をつくのが見えた。
 
 

 めいいっぱい息を吸い込めば、煙に濁った肺が丸洗いされるみたいだった。
 冷えた夜の空気は澄んでいる。
 全身の鈍痛を誤魔化すように、深く呼吸をしては足を引き摺りながら歩く。
 眼前でゆらゆら揺れる、瀟洒なケープコートと深い藍髪をボンヤリと眺めて。
「順に説明しよう」
 そんな言葉に、肩が揺れる。半身で振り返っては、気遣わし気な笑みで足を止めた。
 慌てて歩を速めると、俺が追いつくのを待って、「歩きながらになって申し訳ないけれど」と口を開く。
「まず件のペンダントは、アマン氏の元にあった」
「アマン氏」
「裏社会のビッグネームだ。狡猾で、性悪で、キラキラ光る金目の物が大好きな──凶暴なムール鳥みたいな男だよ」
 穏やかに話す男の横顔は、どこか苦々しい。
 その表情だけで、その『アマン氏』がかなりの曲者であることは察せられる。
 清らかな空気感に反して、また胸中に思い濁りが沈殿するようで。
「そのアマン氏から、どうにかしてペンダントを頂かなきゃならない?」
 俺の問いに、「それならまだ良かった」と、どろりとした疲弊顔で答える。
 首を傾げれば、グリードは返事の代わりに掘っ立て小屋の戸を引いた。
 敷居を跨ぐのを躊躇えば、問答無用で屋内に引き摺り込まれる。
 また無造作に戸を閉めて、一本道を進むように閑散とした室内を土足で闊歩する。
 埃臭くはあるが、人の生活の形跡がある。そして恐らく、グリードはこの家の住民ではない。
 未だ温もりを残す暖炉を渋い顔で一瞥すれば、庭に続く戸を開きながら、俺の手首を解放した。
「アマン氏は、つい先日ご逝去した」
「は?」
「そして彼は、自らの愛する『子供たち』──舎弟たちのうち、最も相応しい者に、全財産を相続すると遺言を残した」
 言いながら、ぴ、と人指し指と中指を立てて見せる。先刻まで、俺の手首を掴んでいた方の手だ。
 何かを握っている感触は無かったのに、指先には、店主からぶんどったコインが挟まれていた。
「これは、アマン氏の『子供たち』である証」
「ああ…………」
「ああいう連中ほど、絆だとか恩義だとかを必要以上に重んじるものだけれど──」
「…………」
「あの酒場のオヤジは、絆よりも賭け事が好きみたいだから」
 話は大方見えてきた。
 ペンダントの相続権を得るために、グリードはあのコインを欲したのだろう。
「ここまでで、何か質問は?」
 そんな言葉に、思考を中断する。
 荒れ果てた庭を一瞥しては、逡巡して。
「どうやったんですか」
 結局、俺の口から出たのは一番気になっていたことだった。
 拍子抜けしたように、「へ?」と聞き返される。
 何だその顔。間抜けではあるが、別に意外な質問ではないだろ。
「だから」とでた声は、若干上擦っていた。
「したでしょう。イカサマ」
「…………」
「あれ、どうやったんです」
 あの時、一瞬だけ、こちらからグリードの手札が見えた。
 店主の言うとおり、間違ってもロイヤルストレートフラッシュを作れるような手札ではなかった。
 考えられるのは、男の注意が逸れた瞬間にカードを入れ替えたという可能性だが。
 あの一瞬の時間で、全ての手札を入れ替えらえられる物だろうか。
「…………ふ」
 そして、そんな笑み声に視線を上げる。
 グリードが、笑みを押し殺すように口元を覆っていたからだ。
「なんで笑うんですか!」
「ふふ……いや、失敬。こう、ここまで聞いて、一番にでる質問がまさかそれだとは…………」
「わ…………」
「拗ねないで、悪かったよ。当然の疑問だ、うん」
 カッと顔面に熱が集まる。
 やっぱりこいつ、罪源者だ。完全に馬鹿にしている、性格が歪んでやがる。
 口を開こうとしたところで、足を止める。グリードが立ち止まったからだ。
 井戸を示して、こちらを振り返る。
 ところどころ苔の蒸した石の井戸は、年季を感じさせるつくりをしていた。
「私はスペードのキング」
「はい?」
「君はジャックだ」
 頭上に疑問符を並べる俺に、こいこいと手招きする。
 満面の笑みが気持ち悪かった。
 少し迷って、グリードの隣に並び立つ。
「では、疑問にお答えしよう。圭一くん」
「…………?」
「すべての答えは、この中にある」
 背に添えられた手に促されるまま、井戸の中を覗き込む。
 目を凝らして、底の見えない深淵を睨めつける。水が腐ったような、泥臭い匂いがした。
「何も見えませんけど」
「本当に?もっとよく見たまえ」
「ええ?」
「そうそう、こう、もっと身を乗り出して……良い調子だよ!」
「だから何も……」
 どん、と。
 背に軽い衝撃が走る。
 そして、次の瞬間に襲ってきたのは浮遊感。
 心地の良い物ではない。臓腑が裏返って、口からとびでるような凄まじいやつだ。
 俺は、頭から井戸の底に吸い込まれていた。
 ──諮ったな、噓つき野郎め!
 そう言った類の罵言を叫んだ気がしたけど、ゴウゴウと風が吹きつけて来る音しか聞こえなかった。
 

 
「たすけて……たすけて…………」
「圭一くん、圭一くん。泣かないでおくれ。どうか元気を取り戻して」
「ヴーーーッ、ワンワン!」
「ほら、見て。小鳥さんがいるよ」
「触˝る˝な˝ーーーーッ!ア˝ーッ!殺˝ざれ˝る˝ーーーーー!」
 頭を抱えてのたうち回れば、背後で辟易したような溜息が降る。
 バタバタと耳元で小鳥が飛び去る音を聞きながら、鼻を啜った。
 先刻、この鬼畜外道野郎の巧みな口車に載せられた俺は、気付けば乾いた地面の上に転がっていた。
 そして地面に書かれた文様は、落書きのようでいて実のところ魔術刻印で。
 グリードの十八番である、転移魔法だった。
 体感するのは三度目なので、説明されずとも分かった。
「圭一くん、見てごらん。毒カマキリの交尾」
「え…………」
 絶妙に気になる誘い文句に、顔を上げる。
 決まりの悪そうな表情をした美丈夫が、こちらを覗き込んでいた。
 そして、決まりの悪そうな表情のまま差し出された手のひらの上では、本当にパステルカラーのカマキリが交尾をしていた。
「わぁ…………」
「悪かったよ。悪ふざけが過ぎた」
 神妙な謝罪に、少しだけ冷静になる。
 元はと言えば、こちらは協力してもらっている身なのだ。
 多少信頼関係の構築に難はあれど、彼が代替器集めに尽力してくれた事実に変わりはない。
「…………転移魔法」
「へ」
 言えば、グリードはまた目を丸くする。
「転移魔法を使って、一瞬でカードを入れ替えたんですね」
 転移魔法については、理論だけは理解している。
 専用の魔術刻印をマーカーとして、2カ所に設置。そこに同程度の魔力含有量の物質を乗せ、入れ替える。
 主として、郵便局や運送会社で利用される魔術だった。
 術の高度さはもとより、本来専用の機器で行われる魔力量の計測を目視で行うなど、常人にはまず不可能である。
 ゆえに、転移魔法が個人単位で行使されることはまず有り得ない。
 「その通り」なんて。
 袖口からカードをバラバラ出しながら微笑む男に、じんわりと嫌な汗が滲んだ。
「この程度の入れ替えならば、わざわざマーカーを引く必要は無いのだけれどねぇ。如何せん、人はそうもいかなくて」
「……充分人間業じゃないと思いますけど……」
「うふふ。照れちゃうよ」
「というか。俺はともかくとして、グリードさんはどうやって飛んでるんです」
 罪源者の魔力量と対等な触媒など、まず思い当たらない。
 顎を指先で擦れば、不思議な色彩の瞳が2、3度瞬く。
 毒カマキリを野に放して、ぐ、と右手を握りこんで。
「目˝ェ…………っ⁈」
 目だった。
 ニコニコ顔で眼球を差し出されてしまった。
「な、何?!目?目!!」
「そう、グラトニーくんのね。それも魔力をギュッと濃縮した特別製なので、君なら30回は転移させられる」
「で、でもでもでもでも。目、メ…………ッ⁉」
「あともう2つあるよ」
「目は2つですが?!」
「?目なんていくらでも生えて来るでしょ?」
 そ、そうかな。そうなのか?そんなことは無いと思うけれど。
 無駄に自信満々なせいで、こちらがおかしいことを言っているような気になってくる。絶対にそんなことはないのに。
 そして、釈然としない表情の俺を置き去りに、パンパンと手を鳴らす。
「さあ、茶番はこれくらいに。そろそろ立ちたまえよ」
「ええ…………」
「いつまで弱ったふりをしているつもりだい。なけなしの特性ポーションをあげたんだ。逆立ちで森を一周するくらいの気概は見せてくれないと」
 …………弱った『ふり』とかではない。断じて。
 抗議の意を込めてグリードを見上げれば、やはり、その双眸は美しい弧を描いていていて。
 グイグイと腕を引かれるまま、重い腰を上げる。
 草むらで、雌カマキリが雄カマキリを捕食し始めたのが見えて、少しゲンナリした。
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