上 下
22 / 65

glass:22

しおりを挟む
「コーちゃ~ん!起きて~!朝だよ~!」
神沢の声で目が覚める。
あ、そうか・・・皆で海に遊びに来てたんだった。
昨日は買い出しに行かされ、お風呂でのぼせ、海で森下に置いてかれて・・・散々だったな・・・。
なんてことを思いながら朝食を食べるために食卓に向かう。

「あ、車道君と神沢君!おはよう!」
食卓では女子3人が仲良く朝食の準備をしてくれていた。
・・・森下・・・朝はメガネかけるんだな・・・お前はきっといい奥さんになるよ。メガネかけてるからな。
そして5人で机を囲み、朝食をとる。

「そういえば、コーちゃんと森下さんは昨日、一緒に海見にいってたんだよね?・・・キスとかしたの?」
俺と森下となぜか桜山がビクッとする。
「い、いや!してねーよ!してねーし、してたとしてもそんなこと聞くなよ!」
「そ、そうだよ!してないし、聞くことじゃないよ!」
「なんか2人とも面白いね!」
「面白くない!
  面白くない!」
2人でハモる。その様子を見て神沢がニヤリと笑う。・・・嫌な予感がする。

「それにしても、この焼き魚美味しいねー・・・これ、なんの魚かな・・・『鱚』かな?」
「ブォフ!
  ブォフ!
  ブォフ!」
3人同時にお茶を吹き出す。
「そういえば、皆は夏休みの課題のテ『キス』トってやってる?」
「ブォフ!
  ブォフ!
  ブォフ!」
3人同時にお茶を吹き出す。
「っていうか、5人ってあれだよね・・・奇数(『きす』う)だよね・・・」
「ブォフ!・・・いや、流石にそれは無理やりすぎだろ!本当になんにもないって!」
「ごめん、ごめん!反応が面白くてさ・・・!」

そんなやりとりがあったのち、それぞれの部屋に戻り帰り支度をはじめた。
その際に神沢に何気なく昨日の出来事を話した。
「・・・なるほどね。それであんな反応をしてたのか・・・多分、桜山さんは森下さんを探しに行ったときにたまたまその下りを聞いちゃったんだろうね・・・。」
なるほど・・・だからあいつも反応してたのか・・・。
「・・・でもさ、もしそれが例え話じゃなくて告白だったらコーちゃんはなんて答えてたんだろうね・・・。」
「いや、そんなことは無いだろ。森下にはもっと相応しい相手がいるよ。」
「あはは!確かにコーちゃんとじゃ不釣り合いだねー!」
「お前、今日ずっとデリカシー無いな。」
「デリカシー無いはよく言われる!でも恋って相応しいとか相応しくないとかでするもんでもないから可能性が無いとも限らないじゃん?」
「・・・まあ、確かに・・・でも森下は多分俺のことをそんな風には思ってないよ。」
「・・・そうかもね!まあ、その辺のことは本人にしかわかんないさ!」
森下から告白されたらか・・・。もし、本当にそんなことがあったら俺はなんて答えるんだろうな・・・自分でもわからん。

荷物を持って5人で地元に戻る。
帰り道、もの思いにふけてしまったせいで桜山に毎度のごとくいじられたりしながら学校の最寄りの駅で俺たちは解散した。
・・・告白ねー・・・そういう色恋沙汰はずっと無縁だったからなー・・・俺はどんな人に好かれてどんな人と恋に落ちるんだろう・・・そもそも恋をするという気持ちはどういうものなんだろうか・・・。
しおりを挟む

処理中です...