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結 勇者の行動

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男の店長に思いを伝えた。


「ここを辞める!?」
「はい」
「まさか引き抜き……あっ給金がたりなかった!?」
「違いますよ、今までお世話になりました」


店長にも仲間にも良くしてもらった、しっかりと別れを告げて家に帰ってきた。
絶対に叶わない恋ならばせめて彼に抱かれた所で終わりたかったのだ。
脳が壊れた愛玩用クローンほど『酷く醜い』ものもない。



「私、引っ越す事になりまして」

世話になった大家さんにも伝えた
既に契約分の料金は払っているので、そこまで嫌な顔はされなかったが

「どこに?」
「……」
「西の地区だけは、止めておきなよ」

治安が悪い所といえばの代名詞が西区である。
体を売る商売人が多く、店で何かやらかしてもここでなら再び娼婦が出来るだろう
大家は仕事を知っていたために、遠回しに心配していってくれていたのだ。


「その地区ではありませんので……」
「ならいいや、新しい所でも頑張ってね」

それから家の物を処分していった、沢山あった衣服を捨てるのは大変だった
売ればいいいと言われるかもしれないが『自殺した女が着ていた』など、後で知れば可哀想だ
身の回りを全て無にするのに何日もかかってしまった。


「お世話になりました」

真夜中に住んでいた家を出て行った。
旅立ちの荷物について問われても困ってしまうので最後の挨拶も出来ない
走って国で一番大きな『橋』がかかる場所まで来た。

この時間はもう流石に人がいない、橋から真夜中の川へと身を投げた。


「何しているのです!?」


最後に誰かの声が聞こえた気がしつつも、息も出来ずに意識が薄れていく









走馬灯しては変わっていると思った

「……?」
「目がさめましたか?」
「えっ」

兵士に助けられてしまった、さらにギャラリーが出来ている
だが民だけではなく魔王と『王妃』も構えていた
彼は出会った時と同じドレスだった

「ちょっと王妃様!!魔王様がいるのに他所で遊ぶなんて最低ですよ!!」
「魔王様あんなに一途なのにっ!!」
「どういう気の迷いなんですか!?」

同じ仕事をした仲間やボーイ、さらには大家から服屋までいて

「彼女が可哀想でしょ!!」

王妃は首を傾げていた


「……えーと?」
「この女性と知り合いか?」
「初め出会ってキスをされた時から、貴方が好きでした」


黙って死ぬのは、彼を守る為でもあったのに
大ごとになって魔王にバレさせてしまったのだ
惚れた事を伝えられてどんな反応をするのかと待っていたら

「……僕、君とあった記憶が無いよ?」


―――――――え?


「僕って……言いました?」
「いつ?」
「最初は本屋で、今と同じドレスを着ていたじゃないですか」

魔王と王妃が顔を見合わせたあと、一人の兵士に目を向けた
それは先ほど目が覚めた時に抱き起こしてくれた彼で



「すみません『アミ』さん、あなたが惚れたのは『私』なんです」
「へっ?ならどうして『立場があって』なんて?」
「それは……」

言いよどむ、本当に惚れた勇者と


「パチモンだからですよ」
「兵士長、止めて下さい」
「715番です」

715!?



「貴重な初期型じゃないですか!!」
「作られた会社が違うのです」
「え」
「私はディープランド社ではなくオクション社が作った偽のクローン商品なのです、だから名乗りたくなかった」

オクションは発明された商品の模造品を次々に作って法律の穴をかいくぐって売りさばいていた。

「立場っていうのは?」
「城に『そんな者』がいては評判も悪くなるので」

この世界に産まれた者たちは、よく分からずに首を傾げた
だが彼の言い分は異世界転生者たちにはよく分かる
お城に飾ってある宝石が『ダイヤにそっくりのガラス』ではよくない声も出てくる


「貴方に抱かれたあと、他の者を相手にしていないのでもう助かりませんよ」



もう14日のタイムリミットは数分後である

「それほど時間が無いのですね?」
「最後の別れで、誤解がとけて良かったで――――」



突如として彼女に剣が振り下ろされた。
だが怪我はしていない、服だけが破けた
大勢のギャラリーの前で715は彼女の手を掴んで、押し倒した。

「何をして!?」
「まって魔王様!!」

魔王を王妃が止め、黙って見守りだした。

パチ者とはいえ兵士と女では力の差があり、715は片手で動きを封じて彼女を犯した
キスをして舌をからめ、現れた乳房を軽く揉みだし膣に指を入れる
前戯もほとんどなく入れられたペニスに痛みの声を出した


「いっ……!!何で、こんな事を!?」
「城には辞職届けを出す事にしますよ、外で無理やり女性を襲った者など余計おいておけませんから」

店でのセックスとは全く違って、今度はあまりにも痛かった
激しく腰をゆらされて中に注がれた温かい物
身体の中から引き抜かれ、気力が限界を迎えた。

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ピチチッ


鳥の鳴く声で、目が覚めた


「う、ん?」
「良かった、間に合ったようですね」

知らないベッドに寝かされていた身体を起こした
昨夜の事をハッキリと覚えている
目の前にいる男に犯されたおかげで命が助かった事を

「なんでっ、私を助けてどうするつもりです!?」
「惚れた相手に死なれたくなかった」
「……では何故あの時王様のドレスを着てたのでしょうか?」

ため息を一つつくと

「あれ罰ゲームだったんです」
「え!?」


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「王様ゲームね、変わってるね」
「何で王様ゲームに王妃が参加してるんだよ」
「遊びなんだからいいでしょ?」

それは、ランダムな数字を配って
誰か分からない数字を持つ相手に罰ゲームを命令する遊びで
禁止事項なんかも細かくとりきめた

『怪我させない』
『命令されたら今日の間はずっと』
『性的な物は不可』


「じゃあ1番と2番が服を入れ替える」
「私ですね」
「僕だ」
「大事故じゃねぇか」

仕方なく王妃のドレスを着させてもらって
次は魔王様に王様があたり
悩んでいたので簡単な頼み事でもいいと助言した


「じゃあ次7番が俺の為に本をかってくる」
「今から街で!?」
「実は今日発売の本を忘れていてな」

手にある7番の板を折りたくなった

「たしか最初に命令は『今日中ずっと』って取り決めなかったっけ?」
「誰が外行く事なんか想定するかよ」
「いいですよ、このまま行ってくるので」

街へでれば王妃様と間違って声をかける者たちもいれば
何も知らないのかあの勇者はドレスを着ているが気でも狂ったのかなんて声も聞こえた
早く片付けたいのだが3件ほど回っても人気があるのかどこも売って無かった

ようやく見つけた本には、もう一人手を伸ばした人がいて

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「本当に助かりました」
「街中であんなことすれば、助かったとは言えないのでは……」
「王妃様から『責任をとれ』と城を追い出されましたね」

やはりどんな理由であれ、外で行為に及んだ罪は問われてしまうのか


「ごめんなさい」
「責任をとりたいわけですが……私の妻になってください」


TUMA?
つま……えっと
妻!?


「ええええええっ!?」
「お城の兵士ってほとんど家に帰れないので、鍛冶屋に復帰して妻を守れと『王妃様』に言われまして」
「……断れなくなっちゃいましたね」
「改めて、世界で一番幸せにしますので妻になって下さい」





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数日後


「いらっしゃいませ!」
「ナイゴ(715)さんの鍛冶屋が復活してる!?あんた弟子かい?」
「えーと」


奥から出て来た715は照れながら紹介した

「私の妻です、可愛いでしょう?」
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