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52話 魔王の右腕

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イチは頭を抱えていた
敵だ何だと言われても、自分は戦闘力が無い
できる魔法はちょっと力が増すとか、速度があがるとか、あと鈍らせることも出来はする
剣の才能も無いように思う、背中に傷跡があるのは弱い証拠のような物だ
だから自分は内政を頑張っているとはいえ

「クソ忙しいですね、もう」

王妃の事とかゼルディンとか、敵とか
それはそうと街のトラブルは全部自分に廻ってくるのだ
魔王め、私にもっと感謝しろ

「ふう!」

しかし警察嫌いだった自分が取り締まる側になるとは思わなかったな、金持ちが正義だったあの頃とは役目が違うとはいえ――――

「げっ」
「おや?」

街の酒場で自分の顔みてげって失礼ですねー、そういう人なのはよく知ってますが


「何にします?」
「あーいや、俺は」
「隣空いてますよ、この方にミルクを1杯」
「おい」
「それとも酒が飲めるようになりました?」
「・・・・・・チッ」

隣に座るのは、魔族は魔法が使えてこそという事で大した魔法の使えない自分を散々バカにしたあげくに呪いにかかって夜しか出歩けなくなった日陰者

「今なんの仕事してるんです?」
「呪われてるんだから、ロクな仕事ねーよ」
「別に貴方でも魔王城に歓迎しますよ?うちの兵士長は優秀なんで」
「そうかよ、んでテメーはこんな所で何してんだ?」
「はっきり言って魔王のことや王妃の事より
、税金や治安についての方が要望多いので対処に当たっていました」
「魔王の補佐って言ってもロクな魔法使えない癖に」
「大半の人々が魔法を使えませんから、使えなくても困らない生活を支えるのが私の仕事ですよ」
「ご立派なことだな」
「街の物騒さが最近また上がってきたことについて何か意見ありません?」
「はー、元々寄せ集めなんだから悪いもんも沢山いるだろ」

「ミルクです」

「呪われてから、生活大丈夫なんですか?」
「ちまちま稼がせてもらってるさ、悪い奴をこらしめても悪にはならねぇしな?」
「……王妃様にお話きかせて欲しいのですが」
「はぁ?王妃様なんて俺みたいな裏者にゃ用ないだろ!?」
「それなんですが……」







「キャー!!」

外で女の悲鳴

「代金はここに」

店の外に出ると、ローブの何者かがいた
どうやら切りつけたらしい


「止まれ!私は魔王の補佐イチです!」

あまり剣は抜きたくは無かったが、向こうが抜刀していてはこちらも動かざるを得ない
止まらず向かってきたので仕方なく構えた

他の兵士に援護を頼みたいが、本当に弱いと呆れられる声は聞きたくなかった

「おい!?」

店から出てきた彼が前に出ようとするので制した

「一般市民の方は下がっていてください」
「けどお前!」
「これは軍人の仕事です」

相手の呼吸が無い、不気味だ
魔王と旅をしていた日々では感じたことが無い異様な不気味さ

「何者ですか?」

しかし、問いかけには答えず
襲いかかってきた
単調すぎる動きに余裕さえあると思ったが

ローブの何者かは逃げ遅れた子供に剣を向けた

「いけないっ!」


その刃は、振り返ってイチを貫いた




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