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25話 犠牲者

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6155と6024は机を囲んだ

「それで、私に何の相談が?」
「ゼルディンさんについて聞きたい、教えてくれる?」
「先にこれを教えてください、魔王様に聞かない理由を」
「悪者って彼は言っていたけど、悪とか正義とか抜きにして彼について出来るだけ教えて」
「……分かりました」




それはこの国よりも遙かに寒い北の国で、ミナト(魔王・魔法使い)、6155(勇者・魔法も一応使えはする)、ヴァイド(医者)、イチ(変わった魔法しか使えない)、ヘリウズ(魔法のつかえない魔族の剣士)、ミミ(武闘家)、フリル(動物に変身出来る魔法を使う姫)

そのメンバーは国々で発生している病気について調べていた。
手や足が痛みで動かせなくなり、徐々身体が変化して死んで行くというものだった。
原因は何と全て一人の男が仕組んだ事だと突き止めた。
男は研究施設を作り病気や人間、魔法とあらゆるジャンルについて世界中からさらったり買ったりして来た身寄りの無い子供や旅人、罪人などで人体実験をしていた。
研究施設は北の洞窟であり、寒さが凄すぎて人が訪れず目立つ事は無かったのだが魔王や仲間なちの活躍でようやく特定して、激しい戦闘を繰り広げた後に魔王がゼルディンも研究施設も焼き払った。


「まぁ、ざっとこんな感じです」
「6155は毒見役を躊躇しなかったよね」
「ずっとアレ食べてみたかったので」
「だとしても敵が差し出した食事を何の考えも無しに兵士長が口にするとは思えないな」
「私はAシリーズに偏見があったようですね、随分と鋭敏な方だ」
「確信していたんでしょ?彼が毒を盛らないって」
「……」



XX年前

闘いの中で仲間たちと引き離されて、6155は牢獄に囚われていた。


「貴方がばら撒いたのは『ウイルス』では無いですね」
「よく気付きましたね」

風邪のような流行り病で、身分の低いものたちよりも王族・貴族が先にかかるなどおかしいのだ。とすれば伝染病の線は薄いと調査していて治療薬そのものが病気を引き延ばす原因であるとつきとめたのだ、上級市民は『金があるから薬を買える』のである。



「でも、金を集めるだけなら流行り病の方がより簡単だった筈です、何故金持ちばかりを狙ってこんな事を?」
「ウイルスでは大勢が死にますから」
「人が死にすぎるのは都合が悪いとでも?」
「人を殺す事が目的ではありません、私はこの先の人類が暮らしていく為の基盤を作りたいだけなので」
「……その為なら、犠牲者は出していいと?」
「ええ、この寒い国で震える孤児の為に旅をやめて孤児院でも開きますか?今その選択をしてなかったせいで出た者は平和への犠牲者と呼ばないのでしょうか?」
「結局なにを選んだとしても、光には必ず影が出来る事は私も分かっていますよ」

牢屋からでも分かる爆発の音と共に、魔王たちは再び集い『敵』を打ち取った。



「妙だな……焼き殺したのは確かなんだが、奴は手加減していたような?」
「何にせよこれで『平和』は訪れたと皆に伝えられますね」

彼に囚われていたミミと双子の姉妹であるハナを助け出して、旅の大元である目的は達成され、その後に魔王が新たに国を作った。
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