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128話 謎の女性
しおりを挟む女性が悲鳴をあげたのが聞こえたので皆できてみれば――
「なんだありゃ!?」
作りが独特の化け物。
魔物というよりは子供が頑張って作った工作品のよう。
木と葉っぱで出来た4足の何か。
「魔物でもなければ熊ですらないね」
「ありゃ植物のゴーレムだな、ゴミカスてめぇの仕業か?」
「【スキル:ドール マリオネット】」
化け物から逃げていた女性を糸がこっちへ手繰り寄せた。
意識はあるが寒さで凍えている。
何故って半袖だから。そして敵に俺が立ち向かえるわけもない。
トングさんに任せた。
「【スキル:マジックハンド ハンマー】」
真っ赤で1メートルはある巨大な手が天高くから化け物に拳骨。
化け物は崩れ去ったので脅威は去ったと判断。
決着はあっさりついたが、それよりも目の前にいる女性だ。
俺は上着を脱いで女性に着せた。
よく見れば足のふくらはぎの部分がぱっくり切れている。血が流れているしすぐ手当てしたい。
しかし治療のスキルカードは今、ない。
「ゴミカスッ!! お前そういう治療得意だろ!?」
「……【スキル:ドール 縫合(ほうごう)」
彼女の足にあった怪我は細い糸で縫われ、血も止まった。
今朝の場所へ戻るよりも新しく作った方が早いと判断。
力を合わせて女性の救助にあたる。
「【スキル:ラップ】【スキル:コンロ】」
ラップでまずは上着を譲った俺自身の防寒を足し、コンロでまた焚き火。
軽いお喋りをしながらお湯を沸かして飲ませた。
「いやー俺たちが気付いて良かったな」
「まったくだ」
「スキルも俺より強い奴がいて」
「君より弱い異世界転生者なんかいるわけないだろ」
「ホンイツほんとのこと言うなよ」
どうしてこんな状況で喋り続けるのか、これはサカネさんから教わった講習。
弱った人間の傍にいる時はできるだけあたりさわりない会話を聞こえるようにすること。
声なく救助しようとすれば相手は混乱して俺たちから逃げようとするかもしれないのだ。
女性が声を出す。
「……ありがとうございます」
「お名前とか言えますか」
「フラワールです」
「はい?」
「私はアル・フラワール、です」
フラワール―――でも敵ではない。
そもそも俺はドリ王国で会議の時にフラワールに出会って顔を知っている。
失礼だがこんなに美人ではなかったはずだ。
「カドマツさんが慌てねぇように聞くけど、それってフラワールの妹じゃねーか?」
「確かにユイ・フラワールは私の姉です」
フラワールは苗字か、それなら納得。
「君はなんであそこにいたんだ?」
「山奥の異世界転生者を探していました」
「山奥?」
「はい、【スキル:闇】を扱う転生者です」
「ホンイツがいるのもクソだが、ここマキナがいるってことか」
「彼に姉の悪事をとめてほしくて」
で、何で半そで? と誰しも疑問に思うだろう。
他に服がないからという理由は不思議でも半そですらよく見ればボロボロ。
確かにお金があるようには見えない。
「お嬢さん、君はなんのスキルが使えるんだい?」
「わたしのは【スキル:植物治療】です」
「けっこう畑仕事とか便利そう」
「……そこにいるのってホンイツさん、ですよね?」
「久しぶり」
何だ知り合いかって、まぁ当然よな。
でも異世界転生者で姉妹って初めて聞いた。
どういうことだろうか?
「すみません、何か食料を――分けて下さい」
「あんこなら」
さっき作ったおしるこを煮詰めすぎてできたもの。
割り箸を渡してあんこをたべさせどうにか回復。
詳しい情報をようやく聞けそうだ。
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