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107話 本名
しおりを挟むこれは日本という国で起きた話。
20XX年、大学に落ちて好きな女が自殺した――そんな時の話だ。
両親にブチ切れ喧嘩して出てきた。
ちょっとの小遣いぐらいしか持っていない。
「……出て行ってやる、って俺でも言えたのか」
でも食事と寝床だけは両親に提供され生きてきた俺だ。
人生で一番スッキリしたしハッキリいってもう死んでもいい、クソ両親に復讐できるなら川とかで溺死――いや、死体を見つけた人が可哀想だ。
「あっ」
昔々、小さな頃に祖母の家へ行ったことがあった。
村の名前しか覚えていないが頼りは他にない。
電車などを使っても3時間ほどかかった。
「……真っ暗闇」
暗闇を歩いていると一台の軽トラが止まった。
『おめぇ、どこのガキだ?』
「俺は日照眼一位(ヒデリメイチイ)……日照眼さんの家を探している迷子です」
『えっ迷子!?』
「お祖母ちゃん家が――ある、はずでして」
『日照眼さんって……おっちゃん、送るからさ』
まだ大学に落ちたばかりの俺から奪えるようなものはなく、俺は信じてついていった。
やがて記憶の片隅にあった家へとたどり着いた。
呼び鈴で出てきた祖母は俺を見るなり――
「イチイ!?」
「俺が、分かるの?」
「……よーきたな、あがんなさい」
『じゃあ俺はこれで』
「本当にありがとうございました」
俺は祖母の家で、親の教育について話した。
カルト宗教にはまっていて勉強ができないと信仰心が足りないと怒られた。変なエピソードもある。『馬にのれば今年は健康に過ごせる』とかいう酷い教祖の嘘を信じて馬が怖いと泣く俺を無理やり馬へ乗せた。正直、転生した今でも馬はちょっと苦手だ――だから俺のトラウマはあんなに変な姿なのかもしれない。他にも数えきれないほどほど正気とは思えない行動が多かった。
勉強、勉強あとは仕事が口癖でそれ以外の行動は神に背くとか――
「腹へっとるか? ワシの家には野菜ばかりしかないんな……」
「すっごく助かります」
祖母は娘がおかしな男と結婚したのは分かっていたが、娘が幸せならいいかと思いだまっていたのだがやがて娘には俺が産まれ、一度だけ俺をつれてきたらしい。
「両親の傍にいるほうがお前さんも幸せじゃと思っていたが……すまんかったな」
祖父に関しては3年ほど前に死んでしまったという。
布団がなくて祖母とは同じ布団で寝た。
とても狭くて、けれど温かくて。
「何とかするに……村の連中も、事情を話せばワシに手を貸してくれるんな」
こうして新しい生活になったのだが俺は本当に大切なことを色々と学ばせてもらった。
※ただしテレビを叩いても治らないことは俺のほうが教えた。
両親が何か言ってきたらしいが18歳を超えた人間に両親がどうのこうの言う権利はもうない。
事情を聴いた村人たちは俺の味方をしてくれたのだが、順調にはいかなかった。
祖母が亡くなってしまったのだ。
『日照眼さん、もし良かったら賃貸に住まない?』
「え?」
『あなたの祖母には借りがあるの、孫を頼むって言われててね――』
その人は祖母から何かあれば頼れと助言してもらったちょっとした金持ち。
祖母の家は古く、なによりこの村では俺のやれる仕事がない。
アパートに安い値段で住まわせてもらえることに。
祖母の遺産と保険金は俺宛てになっていたので細々とならバイトをしなくても一生俺が生きられるだけの金額ではあったと思う。
やがて俺はその金で風俗に行った。
笑う者もいれば怒る者もいるだろうな。
俺はその仕事がどれだけ立派であるかを聞いて、夢を応援した。
性的に誰かの魅力になることがいかに難しいかよく分かったし結果としては後悔していない。
二つの意味でスッキリした。
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