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104話 歴史を知る後編
しおりを挟むレイニーによって月へ誘拐された。今は水でできた家が凍ったので氷の家のなか。
「【スキル:割り箸】」
床が冷たいので割り箸を敷き詰めて断熱材の代わりにした。
キノコでは炎を使っているので爆発して使えない。
布を召喚するスキルならばある。
「【スキル:トラウマ】」
毎度おなじみ顔面が虎で下半身が馬、ただのぬいぐるみ。
ダメージを受けると消えてしまうので綿や布は使えない。
けれどベッドにするには割り箸よりは柔らかいし温かくなる。
「ひっく」
この酔っ払いが暴れて国が亡ぶよりは月にいるのはいい気がしてきた。
海とか最悪、大津波になる恐れまでありうる。
今いるテントも気温があがってきてギリ耐えられそうな温度である。
というか強くてもアルコールには酔うの?
「フレンドのスキルカード持ってるか? ウルフに連絡とりたいんだけど」
「【スキルカード:フレンド ウルフ】」
「どうした?」
「酔っぱらったレイニーに月へ誘拐された」
「……月!?」
「ここ、これる?」
「月に移動できるのなんて俺が知るかぎりレイニーとティラノぐらいだぞ」
「5代目に俺が月にいてレイニーのおもり中だって伝えて―――」
通信が切れた。
「……」
「レイニー?」
硬い割り箸を敷き詰めた床で寝てしまったが幸せそうなのでよしとする。
【スキル:ラップ】で出したラップを布団がわりにして眠った。
翌朝にはスキルカードで連絡とろうとしたら電波が届かないみたいなマークが出たし最早こういう事態には慣れた。
「俺が被害者になってるだけならいいか、飯の支度しよ」
「気持ち悪いです」
「吐くなら外に行ってくれよ!?」
「大丈夫ですよ万が一吐いたとしてもスキルで空中を漂わせて外に出しますから」
「どうしてレイニーはそう汚物を空中乱舞させる発想になっちゃうかな!?」
「それより、私とあなたが月にいる理由を教えて下さい」
テレポーターで国に一度帰ろうとしたがテレポーターのスキルカードが燃えた。
どうやら来るもの拒まずで去る者は許さない空間にいるらしい。
「これどうやって帰るの?」
「水スキルを足から出して飛べば帰れはします」
「へー」
「バリアを無理やり突破するのでカドマツ様は全身ズタズタになりそうですけど」
「それ以外の方法で帰るからな!!」
「四天王を倒せば帰れはしそうですが――」
「倒せないの?」
「戦闘力を数字で表すならイチドペンギンさんで70(本気んなら)、魔王で200、マグマにいた四天王で300ぐらい―――で、私の強さは100万ぐらいですから勝てはするでしょうね」
「おまえが100万ならハクアも100万?」
「本体で10万ぐらいです」
「俺は?」
「……5?」
俺を正当な数字でみていてくれて助かる。
「ハクアの本体もまぁまぁ強いけども、何でハクアに負けたわけ?」
力の差が10倍もあって負けるか普通?
「私は……レイニーは私に負けたのです」
「え?」
「私は私自身が本体だと思い、奴に造られた影を切り捨てたつもりでした」
「俺も二人になる恐れがあんの?」
「あります」
目の前に俺が現れたら影か俺の本体か咄嗟の判別は不明だな。
これはあくまでハクアとの戦闘に期せずして俺が巻き込まれたらの話。
俺がもしも影って言われたら――
「影になった俺はドヤ顔しているかもしれない」
「何故」
元々、異世界転生で特別な存在になれることにワクワクしてた。
でも出るわ出るわキャラが濃くて誰が主人公でも成り立ちそうな異世界転生者。
特別感は俺の中でどんどん薄れていった。
影分身なんて超特殊な存在になれたら俺は嬉しさが勝つし唯一自慢できる俺に自慢する。
こっちに向かってお尻たたいてやーいやーい本体って言い出す。
……想像上の俺の影分身がとてもむかつく。
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