異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価

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29話 船

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王女様やなどお世話になったりした方々にジーンズ王国を出ると挨拶した。
 パンジーさんやアネモネさんはもう動けるようだしエンガオウ討伐の前線部隊で戦っていた人たちは火傷が治りほとんど人はもう病院にはいなかった。
 ぼったくりだが民謡を演奏してくれた人にも会っていこうかとしたが同じ場所にはもういなかった。
 キャットさんはレイニーの正体が分かってからも普通に接してくれた。

「まぁレイニーだってだけでしょ~急に出てきてビックリだけどぉ」
「有難うございます」
「それはそれとしてレイニーたちさぁ――」

もっと国にいて一緒に討伐依頼をしないかと誘ってくれたのだが他の国も見たいので断った。
 ドラレコさんに次はどこの国へ赴くかと問われそういえばまだ決めていない。

「ここからなら近いのはニカナです」
「ニカナ?」
「そうですね……う~ん」

 レイニーが説明しづらそうにしていたらドラレコさんが教えてくれた。

「和風というより中華風のエセテーマパークみたいな国だ」
「なにそれ面白そう」

 こうして最後にドラレコさんに別れを告げてジーンズ王国をあとにした。
 国の門から港までは歩きだったが1時間もかからなかった。
港には停泊している船がいくつかあり、その中にニカナに行く貿易船がないか探していると――。

「そこの2人!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

もし表すならビックリマークをこれでもかと付ける必要がありそうな、大声でガタイのいい男の人に船上から声をかけられた。
船から降りてきた大男はどうやら俺に用事があるらしい。

「おふたりさん、行き先はニカナか?」
「一応その予定ですが」
「釣りとか、飯のスキルカードなにか使えるなら乗せてやるぜ?」

釣りのスキルカードは使ったことがないが……と少し甘い氷を出して見せた。
かき氷を舐めた男は本当に少し甘いと驚き、俺達2人を船に乗せてくれるという。
ボディーガードへよーやく反応した。

「一応そのフードとってくれねぇ?」
「彼は火傷で……」
「最近どこかの大罪人が牢屋から脱獄したっていう風の噂があってな」
「怖い」
「おえ」

急にグロッキーになる大男。
陸にいると気分が悪くなるのだと説明され、さっさと船に乗ることにした。
乗組員が『出発しますよおカシラ』と男を呼んでいて、なるほど船長なら俺たちの乗船を許可する権限があるわけだと納得した。

「その2人誰っすか?」
「砂糖のかかった氷を作れるスキルを使える奴」
「……? 砂糖の部分が意味わかんないっすけど」

 そういう反応になるのすごい分かるぅ。

「かき氷が作れるスキルだから、まぁ飯屋の類だろ」
「へー! まぁ夜の暑い時に氷が使えるなら乗せる価値あるっすね」

すでに船が動き出しているので、船員にお世話になりますと頭を下げる。
船員はほっと息をして、ウチのお頭はヤバイ奴を乗せたがる時が多くて困っているのだと語ってくれた。
船は大きいし、ハンモックで良ければ寝る場所も2人分が用意できると船室を案内される。
廊下のど真ん中で、女性とばったり行き会った。

「船長! また出向直前になって変なのを!」
「大丈夫だよ、こっちの人は氷業者さん」

 それは違うと言うか迷ったが、氷が出せるのも事実だ。

「俺はカドマツです」
「そっちのあやしい男は?」
「私はカドマツ様のボディーガードです」
「お前たち、こいつら頼むわ」

船長は船員たち2人に俺たちを任せてどこかへ向かった。

「海の戦いは陸とは勝手が違うから、アンタらはひっこんでいたほうがよ」

何でも過去に貴族をこの船に乗せてやった時、ボディーガードとして雇われていた男がまるで使い物にならず、戦闘の邪魔だったことがあるのだという。いろいろと面倒だから引っこんでほしいらしい。
レイニーは頼まれてもいない仕事をする気はないのでそういうことは雇い主のほうに言ってくれと。
俺のほうも海の戦いの常識など知らないので、戦闘に口出しはしないと約束した。

「ならいいのよ」
「2人はここのハンモック使っ――汚ねぇ!」
「最近は使ってなかったから前回いつ掃除したかも覚えてないわ」
「ホウキとちりとり貸すから自力でなんとかできるか?」
「【スキル:掃除機】」

俺はスキルで掃除機を召喚してガーガーと床のホコリを吸いはじめた。

「何それ」
「掃除機です」
「ところで今【スキルカード】使った?」
「転生者なので、これは元から持っているスキルですが――」
「オカシラッ!!」

何やら騒がしくなり、船員に呼ばれて船長が慌てて部屋までやってきた。ちょっと待ってホコリが立つから。
さっきのスキルをもう一度やってみせてくれというので、かき氷を作る。
さらに俺の掃除機を見て驚きの声をあげた。

「掃除機じゃねぇか!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
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