2 / 152
2話 大歓迎からの……?
しおりを挟む異世界に転生したのが分かった。
俺の目の前にヨーロッパ系の貴族が着てそうな服を着た金髪のイケメンがいたからだ。
白い手袋をはめて胸に手をあてている、少なくとも敵意はなさそう。
周りの風景も、行き交う人々も……なんというか、異世界だ。
「私はレイニー・サックと申します。転生者様のお名前はなんと?」
自己紹介をしろと言われたが本名は毒親に付けられたDQNネームなので名乗りたくなかった。
せっかく生まれ変わったのだし新しい名前を考えてもいいのだがすぐには思いつかない。
SNSやゲームでいつも使用していた名前があるので、それを名乗ることに。
「カドマツです」
「女神様よりカドマツ様をおもてなしするように言いつかっております。パーティーを開催し今日という日を祝福させてください」
「怖い」
イケメンがいい笑顔でご馳走を並べているがホラーとしか言いようがない。
まだ『何者だ!?』って全員に怖がられる方が異世界に転生した身として実感が沸く気がする。
歓迎されまくり、ご馳走を並べられまくる異世界に転生した作品は……ちょっと俺の脳みそには記憶されていない。
「転生者様はカドマツ様で151代目です」
思ったより多い。しかも中途半端な数字を聞かされた。
どうせなら100人目とかが良かったが、贅沢は言わないから現状をもう少し詳しく教えてほしかった。
自分の姿が変わっているのは分かるが、鏡がないのでどう変わったのかまでは分からない。
「あの、鏡ってありますか?」
「転生者様が鏡をお望みです!!」
そこまで急がなくてもいいですと言う前に巨大な姿見が運ばれてきた。
レイニーさんほどじゃないがなかなかのイケメンなので、この容姿なら女子にキャーキャー言ってもらえたりするかもしれない。
女子にモテるとそれはそれで苦労するかもしれないが、俺の見た目がいいのは気分がいい。
「えっとレイニーさんは何者ですか?」
「元・日本人であり私も異世界転生者の1人。そしてこの国を治める王子です」
「王子!?」
確かに貴族のような服装だとは思ったが、まさかの王子だった。日本人で転生者? ということは先代ってこと? 疑問だらけだけどご馳走を所狭しと並べられてしまったし、王子様が遠慮なくどうぞって言うものは食べないと話が進まなそうだ。
「頂きます―――あ、美味しい」
ロールパンを恐る恐るかじってみたが毒などもなくふわふわモチモチのロールパン。
バターもたっぷり入っているし挟んである肉と野菜も味付けがいい。
鶏肉の炒め物らしきものの他にもオニオンスープやポテトサラダ、苺味の甘いパイも美味しい。
「この世界の食事はいかがですか?」
「美味しいです」
「それは良かっ―――」
「ヘプシッ!!」
コショウが大量に使われている料理を手に取ったらクシャミが出た。
パァン!! と大きな音が響き、俺が着ていた服は全てバラバラに弾け飛んでしまった。
パーティー会場にいた人々からから悲鳴があげる。
『攻撃されたぞ!?』
『ああなんて愚かなことを!』
『この国はもうお終いだぁ!!』
大歓迎からの大混乱。とんでもない騒ぎになってしまった。
「クシャミしてスキルが暴発しただけです!!」
「転生者様がスキルを見せてくれただけのようですよ」
王子の一声でピタッと皆が声を出すのをやめたのだが、……今度は王子が怖くなってきた。
女性もいるのに裸になった俺は普通なら嫌な顔をされる。
人々がなごやかな雰囲気で小さな子がお漏らしたのを見守るような生暖かい視線は逆にかなり恥ずかしかった。
33
お気に入りに追加
180
あなたにおすすめの小説

神の加護を受けて異世界に
モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。
その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。
そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

平民として生まれた男、努力でスキルと魔法が使える様になる。〜イージーな世界に生まれ変わった。
モンド
ファンタジー
1人の男が異世界に転生した。
日本に住んでいた頃の記憶を持ったまま、男は前世でサラリーマンとして長年働いてきた経験から。
今度生まれ変われるなら、自由に旅をしながら生きてみたいと思い描いていたのだ。
そんな彼が、15歳の成人の儀式の際に過去の記憶を思い出して旅立つことにした。
特に使命や野心のない男は、好きなように生きることにした。

一般人に生まれ変わったはずなのに・・・!
モンド
ファンタジー
第一章「学園編」が終了し第二章「成人貴族編」に突入しました。
突然の事故で命を落とした主人公。
すると異世界の神から転生のチャンスをもらえることに。
それならばとチートな能力をもらって無双・・・いやいや程々の生活がしたいので。
「チートはいりません健康な体と少しばかりの幸運を頂きたい」と、希望し転生した。
転生して成長するほどに人と何か違うことに不信を抱くが気にすることなく異世界に馴染んでいく。
しかしちょっと不便を改善、危険は排除としているうちに何故かえらいことに。
そんな平々凡々を求める男の勘違い英雄譚。
※誤字脱字に乱丁など読みづらいと思いますが、申し訳ありませんがこう言うスタイルなので。

5歳で前世の記憶が混入してきた --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--
ばふぉりん
ファンタジー
「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は
「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」
この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。
剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。
そんな中、この五歳児が得たスキルは
□□□□
もはや文字ですら無かった
~~~~~~~~~~~~~~~~~
本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。
本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記
ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。
そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。
【魔物】を倒すと魔石を落とす。
魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。
世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

異世界に転生したのでとりあえず好き勝手生きる事にしました
おすし
ファンタジー
買い物の帰り道、神の争いに巻き込まれ命を落とした高校生・桐生 蓮。お詫びとして、神の加護を受け異世界の貴族の次男として転生するが、転生した身はとんでもない加護を受けていて?!転生前のアニメの知識を使い、2度目の人生を好きに生きる少年の王道物語。
※バトル・ほのぼの・街づくり・アホ・ハッピー・シリアス等色々ありです。頭空っぽにして読めるかもです。
※作者は初心者で初投稿なので、優しい目で見てやってください(´・ω・)
更新はめっちゃ不定期です。
※他の作品出すのいや!というかたは、回れ右の方がいいかもです。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明
まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。
そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。
その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる