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16話 正月が思っていたのと違う
しおりを挟む年越しについて聞いてみた
「蕎麦とか食べますか?」
「天国には年越しで空を飛ぶ風習があるよー」
「その風習マジなんだ」
こうしてシェアハウスの上空を飛び近所の人たちもパタパタと出て来た
年を超える瞬間に地面から離れていれば
過去に悪いものを捨てて行ける言い伝えがあるらしい
「実際そんな事はないけれどね」
「エンマ様がそういう事言っていいのかよ」
「今はもうただの死神だよ」
「ぶっちゃけた話をすると雪が降っていて寒いので家の中に帰りたいですね」
「僕それ賛成」
中に入って皆で掃除した部屋においたコタツで温まる
えんま様がサンタに願った物らしい
これが入る『くつした』は相当大きかったのが分かる
「よくこれが入る靴下が売っていましたね」
「クリスマスの時期になるとクリスマス用として売られているじゃん」
「見なかったですね」
普段料理をしてくれる三日筋肉が質問する
「天国って雑煮は食べる風習あんのか?」
「あるよ」
雑煮は食べるという事でエンマ様に作ってもらう事に
ド天然な彼なのでかなり心配ではあるものの
そこは年配者の『雑煮』を信じる事にした
「出来たあ」
「美味しそうですね」
「一個だけ聞いていい?」
「もっちろん何でも聞いてよ」
「何で餅の袋がひらいてねぇの?」
「あ」
入れ忘れただけという事らしく
電子レンジでチンして追加
のんびり雑煮を食べる
「レディさんは怪我とかもう大丈夫?」
「もうそこまで痛くないですよ」
「冬の間は大人しくしとけほらみかん剥いてやるから」
「怪我して帰って来たせいで過保護の度合いが凄いですね」
あの世では天獄と地獄で『おせち』が違うと聞き
地獄へ買いに行こうかとしたが怪我人なので止められた
エンマ様が電話して
「地獄でおせち買ってシェアハウス届けて今すぐ」
20分後
家に赤鬼がおせちを届けに来た
全速力で買ってきてくれたのだろう
「何だかすみません」
「拙者はエンマ様の為に買って来たのだ」
「ありがとね、お雑煮食べてく?」
「なんと慈悲深いのだ!!」
「この正月におせち買ってこいってパシリさせられてんのに」
「エンマ様が命令するならば何だってするさ」
でも雑煮は受け取って食べる
昔々は人に出されたものは絶対に手をつけるべしという風習があったらしい
そこから派生して『据え膳くわぬは男の恥』な訳だが
「それ美味い?」
「餅が硬いぞ」
「作ったのエンマ様だぞ」
「大変美味しゅうござる!!」
そういえば正月と言えば凧揚げやカルタなど
天国や地獄でも何かしら遊びの風習があるかもと聞いてみた
凧揚げはする時もあるらしいが
「その怪我で凧揚げは止めとけ」
「もうほとんど痛くないですが」
「包帯がとれてから言ってよね」
「流石に初詣は―――」
「はつもうで?ああ確かに無いよな流石に」
「んー」
エンマ様が何か考えている
仏教でもお坊様が肉・酒・嫁をどうするかバラバラらしい
宗教の関係ではつもうではまずいなどだろうか?
「無理にさそっている訳ではなくてですね」
「そうじゃなくて正月には教会に行く行事があって」
「神様なんてものが本当にいるんだから寺より教会か確かにな」
「お願い事を紙に書いて祈る」
「どうなる?」
「当たった人は願いが叶うけれど欲望まるだしで書くとろくなことがないんだよね」
「なら教会にだけ一緒に行きませんか?」
「面白そうって顔に書いてある」
「赤鬼さんも来ますか?」
「誰が行くか」
「え、来ないの?」
「勿論どこまでもお供するでござるよ!!」
こうして着込んで外へ
天国も雪が降るし寒いので赤鬼の他は羽で移動する事に
赤鬼は妖怪であり羽を生やせないので
「この背中につけたホバースーツで移動します」
「速そうですね」
「最高時速はマッハ5で飛ぶでござる」
「大事故になりそうですね」
「流石に飛行速度ぐらいは守る」
どうやら空は50キロ以上で飛べないらしい
免許があてば60以上出してもいいがかなり上空で
とても寒いらしく皆で低い所を30キロぐらいでのろのろと飛んだ。
「あそこだよ」
「屋根には十字架の飾りなのですね」
「昔は色々とあったんだけど十字架ついていれば教会って分かるでしょ?」
「確かに」
こうして中に入って専用の紙が配られ
長机でおねがいごとを書く
例えば世界平和などは抽象的で叶えてもらえないらしい
他にも大きすぎる願いはNGだと
「書けました」
「あとは手を叩いていのるんだよ、こうして」
パンパン
その瞬間にエンマ様の周辺が暗くなった
本人はやっちまったぜという顔をしている
「どうされました?」
「いやお願い事する訳じゃないから!!」
「エンマ誰も何も言ってねぇぞ」
赤鬼が割って入る
「手を2回叩くのは神との通信を意味するからな」
「通信?」
「普段どんなに電話しても出てくれない相手が皆にまざって電話してきたから神様がよろこんで受話器を取った状態だ」
「成程」
エンマ様は困った後に
「じゃあ彼が書いた紙でも叶えて下さい」
「私が指さされていますよね
「そうだな」
紙が空中に浮いて消えた
正しくは一瞬で燃えてなくなったのだが
火事にならなくて良かったと思う
「ちなみにレディは何を書いたんだ?」
「怪我が治りますようにか?」
「ホッカイロです」
「何て?」
「仕事に持っていくホッカイロ10個入りパックを」
「寒いから分からんでもないけど神様に願う事か?」
天空からホッカイロが落ちて来た
思ったよりも威力があって
頭に直撃した
「レディッ!!」
「渡す場所ぐらい考えてよ神様!!」
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