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15話 クリスマスが思っていたのと違う

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『本日はクリスマスですので天使の方々が各階段にケーキを配ります』
 
朝の放送で天使が連絡事項を伝える
階段での仕事にも慣れてきたが最近は寒い
手がかじかむぐらいに冷えている
 
「よぉっす」
「平助さんおはようございます」
「天使はまだ来てないな」
「受付の天使さん私のせいで神様を怒らせたかもしれないのですが」
「何があったんだよ?」
 
神様に出会うまでと
エンマ様との奇妙な状態について相談
悪魔とか天使とか関係なくよく会話する友達として
 
「と、いう訳です」
「天使が脅しなんて前代未聞だぞエンマちゃんもそりゃ怒るわ」
「所で今日は随分と早く登って来ましたね?」
「クリスマスのかざりつけとかあるだろ?」
「地獄でツリー飾る事になるとは思いませんでした」
 
そこまで大きなものではないが玩具屋サイズのプラスチックモミの木
宗教の関係もあるが飾り付けのやり方がよく分からない
頂点に星を刺しているがこれではツリーとは言い難い
 
「私ってこういうセンスが絶望的に無くて」
「とりあえず入っているもんを全部飾っておけば大丈夫だ」
「ならふわふわしたものをこのへんにくっつけて」
「全部!?」
「ダメでしたか?」
「つ、ツリーの飾りつけは俺ちゃんがやるわ」
「お任せします」
 
こうして何とか学生のクリスマス会くらいのクオリティにはなった
知らない天使がケーキを持ってきた
神様というより閻魔大王の裁きを受けた天使は地獄職を禁止されたそうだ
ちょっとかわいそうだが『天使はいかなる理由があろうとも仕事を人質にしてはならない』
ルールを破った訳なのでモヤモヤはするが気分を切り替える事にした
 
「俺ちゃん本当はもっと上の階でいい悪魔なんだよね」
「何故ここに残って?」
「ほかの連中がみーんな上階に行けたら俺ちゃんもあがるけどね」
 
天使が置いていったケーキを登ってきた悪魔たちに配る
数がもし足りないようであればバックヤードに予備との事で
平助と共にバックヤードへ確認に行った
 
天使たちはサンタの帽子かぶってはしゃいでいる
 
 
「昨日に色々あったとは思えないですね」
「天使って神様絶対主義者だから神様が判断したことで悲しむようなことないんだよな」
「ちょっと不気味かもしれませんね」
「個数制限がある訳じゃあないから運ぶか」
「そうですね」
「バックヤードのもん俺ちゃん触れないから手伝えなくてごめんな?」
「気にしていませんから大丈夫ですよ」
 
ケーキの量が膨大すぎて驚いた
海外ドラマなどで外国人がやるパーティーに出て来るクソデカケーキ
現実で出会う日が来るとは思わなかったが
あまり重さがないため軽々と運ぶ事が出来た
 
 
「ケーキ追加しますね」
「レディちゃんはどういうケーキ好き?」
「私はお酒さえはいって無ければわりと何でも」
「お酒飲めないの?」
「いえ絶望的に酒癖が悪くて二度と口にしたくないだけです」
「……待て、ちょ」
 
『では行きますよー』
 
天使が放送した瞬間空から雨が降り注いだ
ずぶぬれであるし酒くさい
突然すぎて何が何やら分からず
 
「クリスマスの地獄には酒の雨をふらせる風習があって」
「先に言って欲しかったですね」
「でも酒がかかった程度だし別に」
 

 
 
気が付いたら家にいた
 
「レディさん起きた!!」
「酔っぱらって階段ふみ外して地獄の最下層まで落ちたってマジ?」
 
頭が痛いし記憶が無い
あの世で自分が二日酔いになるとは思わなかった
体中が痛い気がする
 
「私は酒?らしきものが空からふってきた記憶しかなくて」
「地獄ではクリスマスの『まき酒』って当たり前の風習だからねぇ」
「痛ッ!?」
「無理するなよお前は全身がくっそボロボロで帰って来たんだから!!」
 
腕には包帯が巻かれていて
片目も何かおかしいと思えば眼帯を付けられていた
あの世で大怪我なんてめったな事ではない筈だが
 
「地獄で作った傷は治りが遅いからね」
「悪魔たちが明日は登らないから遠慮なく休めってさ」
「気を遣わせてしまったようですね」
「入院するか聞かれたんだけど」
「自分で動けそうだし家がいいと思って」
「そうですね、この家は気に入っていますから」
 
自分が目を覚ましたと数々の報告と共に
徐々に来るお見舞い客たち
平助さんが果物の盛り合わせを持ってシェアハウスに
 
「はっくしょん!!」
「あ、わり慌てて……」
「いいのいいのお見舞いだろ?はっくしゅん!!」
 
三日筋肉は一旦この部屋から出るそうだ
 
「酒は抜けてるか!?」
「みたいです」
「絶対に今後は酒を飲まない方が良いぞ」
「私は記憶が無くて何も覚えて無いのですが」
「地獄の最下層でラップバトルしてた」
 
酒癖が悪い事は分かっていたが
自分がラップバトルをしていたと聞いたのは始めての経験だ
悪魔たちもクリスマスに上から落ちて来た人間とラップバトルは流石に予想外だったろう
 
「ラップバトル?綺麗にラップが切り取れるか勝負でもするの?」
「閻魔ちゃん相変わらず下界の事には弱いねぇ」
「それより誰も教えなかったなーって」
「何をですか?」
「24日までに靴下を用意しておけって」
「嘘だろ下げずに寝ちゃったのか!?」
「子供じゃあるまいしやりませんよ」
「サンタさん入れる靴下が無くて困惑しちゃってたから」
 
神様いてクリスマスもあれば確かにサンタぐらいいるかもしれない
これは聞いておけば良かった
行事については今度からしっかりと確認を取ろう
 
「せめてものプレゼントとして正月用の切り餅12個入りおいてった」
「サンタさんって玩具の他にもくれるのですね」
「そもそも元はお金だよ?」
「そういう設定なのですか?」
「元ネタの事実なんだよねコレ」
 
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