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1話 天国が思っていたのと違う

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『ご愁傷様です』
 
普通に病気で死に医者の言葉を聞いたあと天使が来た
仏教徒という訳ではないが『いるんだ』と実物を見ればだれもが思う
宗教画のようにキラキラ降臨してきて白い羽とローブに金髪
 
むかつくぐらいイケメンで説得力のある天使だ。
 
「今から天国へ連れて行きます」
「え~と」
「レディ・ゴー様ですね」
「作家名で呼ばれるのですか!?」
「基本的には人生で最も呼ばれた数が多い名前で手続きするので」
 
ならば確かにそうなのだが未だにこの作家名は後悔している
俺は男だが女性向け恋愛なんか書いたせいで間違われた事は山のごとし
とはいえ日本人の多くは『決まりです』と言われたら納得する
 
 
「手続きはどのようなものでしょうか?」
「怖がらなくて大丈夫ですよ、とりあえず天国の門へ」
「本当にあるのですね」
「日本支部用の物が」
「国によって違うのですか!?」
 
ここで見る方が早いと後ろについて行くと
病院にいた筈がいつの間にか広い空間へ飛ばされていた
ゲームのワープでももうちょっと3、2、1ってカウントがある
 
「いきなり連れて来てすみません」
「ここは何処でしょう?」
「天国門の日本支部と呼ばれる場所でおおまかな受付をします」
 
 
真っ白い世界で人々はそれぞれの服装をし
門がいくつかあって紙に何か書かれたものを持ってくぐっていく
紙の方は記入する為の広い机と椅子が用意された場所
 
「大まかに転生、異世界転生、天国、地獄の4択です」
「地獄は嫌ですよ!?」
「基本的に天国に行ってから異世界転生する方が最近は多いですね」
「昔は違ったのですね?」
「あまり異世界転生っていいイメージが無かったので」
 
自分の中では『俺が強い』系の小説がイメージ強く
 
 
 
「昔は井戸に落ちると異世界へ迷い込んで――みたいな怪談がありました」
 
確かに今でこそ小説では定番だが生まれ変わって別世界って怖い話でもある
周りもサラサラと簡単には記入していない様子
ふと聞いてみる事にした。
 
「決められない人はどうなりますか?」
「迷って決められないだけなら天国で能力が無い方は別のカ所です」
「読み書き出来ない赤ちゃんとか来ることもありますよね?」
「そこの振り分けは最初の時点で天使が判断します」
 
確かに赤ん坊なら見れば分かる
『読めない』『書けない』の判断はやらせればいいし
周りを見渡せば確かに大人ばかりで主に年寄りが多かった
 
「コーヒーとかほしい」
 
最近は病気で飲めてなかったのでチラッと聞いてみる
 
「ここは飲食禁止なのでちょっと」
「もう死んだのに駄目なのでしょうか!?」
「飲みたければ休息コーナーに行ってください」
「場所の問題だったのですか!?」
 
休憩コーナーとやらに行ってみる
お金が無いのに珈琲が飲めるかと不安だったが
無料と書かれたドリングバーがあった
 
「珈琲が飲めそうです!!」
「良かったですね」
「そういえば他の方には天使さんが付いてませんね?」
「案内する事が終われば自分は仕事をひきあげます残業禁止でして」
「仕事みたいですね」
「天国にもお金の概念はあるので」
「意外でした」
「時給がいいんですよ、あっそろそろ時間ですから分からない事あれば別の天使に」
 
そういって空を飛んで何処かへ行った
まるで空港やデパートの休憩所かのごとくソファーと自販機
久々の珈琲を貰ってゆっくり飲み
 
「やっぱり良い」
 
独り言をつぶやきながら聞き耳を立てる
どうも鉄板のネタは迷って決められない事らしく
あちらこちらから聞こえてくる
 
「すみません、相席いいですか?」
「どうぞ」
「若い人あんまりいなくて――なんか他の場所だと居心地悪いんすよ」
「すっげー分かる」
「大学生くらい?」
「いや社会人でXX歳」
「そうなのですね(かなり童顔だが失礼かもしれないので言わない)」
「よく間違われるんすよ」
「死んでも顔が変わらないとは」
「あー死にたての新鮮な奴か」
 
そんな魚の鮮度みたいに言わないでほしい
 
「自分の事はレディと読んでください」
「え?」
「ペンネームですよ」
「……もしかして作家のレディ・ゴーさん?」
「そう!!」
 
読者さんかな?
 
「なら俺もペンネームで三日筋肉っていうんだけど知ってる?」
「えぇ!?あの異種格闘の漫画家さん!?」
 
愛・戦(アイセン)といえばかなり有名な漫画で
超人たちが繰り広げるバトルは独特でファンも多い
自分もサインがほしいぐらいには
 
「何かの縁だし天国を一緒に見学する?」
「見学できるのですか!?」
「天国って家をレンタル出来るからさ」
「賃貸!?」
 
金が無いのにとポケットをさぐる
やはり何も出てこない
値段を尋ねると
 
「家は無料だと思ってて大丈夫」
「そうなの?」
「死にたてほやほやだと『死にたて権』が使えるから」
「ナニソレ」
 
家があると言われる場所は天国にある
そこで二人して天国と書かれた紙を持って門を潜った
まるで温泉があるような観光地のごとく
 
『おいでませ天国へ』と上空に旗がかかげられていた
 
しかも人が異様に多い
 
「滅茶苦茶に賑わっていますね天国」
「すいませーん不動産屋いますかー?」
 
天国に不動産?
 
『はいはーい何?』
「死にたて用の家を見学したいのですが」
『お二人で暮らすの?』
「あ、いえ彼とは――」
『丁度シェアハウスでいい所あいてるんだけど見学しない?』
 
こうして見に行けば家が立ち並ぶ場所で
隣にコンビニがあって似たような家が並ぶ
天国というより住宅街と言われた方が納得が出来そうだ
 
『死にたて様のようですので本日はこちらにお泊り下さい』
「お金ないのですがいいのですか?」
『全然タダで大丈夫ですよ』
「何か裏がありそうな気がしています」
「最初の2年は死んだ事を受け入れずに暴れて地獄行きになる人がいるので好待遇です」
 
大人しく二人で一旦この家をレンタルする事にした
部屋は個室が3部屋もあって充分
今日の所はおとなしく寝ようと
 
「天国って寝るのですね!?」
「それな」
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