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4話 トアール惑星の王族
しおりを挟む俺は惑星トアールの5代目国王。ウエダ・トアール。
弟のシタダ・トアールもいて王位を争うのかと思っていたが。
頭が良い弟は身を引いて政治には関わらないと宣言。
「俺は兄ちゃんに譲るよ、兄ちゃんが治めるこの惑星でのーんびり釣りでもしてさ」
「……その、俺は」
実は父と母は双子である兄と弟を入れ替えた。
惑星トアールでは兄が王座を継ぐ風習があった。
本当は兄だったシタダの身体は弱く両親が順番を入れ替えた。
「今日は初めてのパーティーだから緊張してるのかな」
「お前の身体じゃ無理だもんな、俺、頑張って行ってくるわ……」
正直な話、シタダの身体が頑丈だったら今すぐ国王を変わって欲しい。
俺は責任ある国王とかいらないからと言って畑とか耕して生きていく。
本当にすげー嫌だが俺が逃げればシタダが国王になって危ない。
「気を付けてね」
こうしてパーティーに宇宙船でやってきた。
王族がこれでもかといる会場にいざ足を運ぶ。
ワインや見慣れない豪華な食事の臭いだけで吐きそう、おえ。
「君との婚約なんか冗談に決まっているだろう」
……俺は今、何を見せられてるんだ。
知らん人が婚約破棄を絶対に怒りにふれてはならないポセイロに言い放った。
そんな馬鹿なことあるか、あのポセイロンにだぞ。
そして戦争を宣言され、帰っていった。
「どちらについても構いませんわ」
決まってる、もしここでポセイロン側につかなければ惑星トアールは消し飛ぶ。
指が震える、ポセイロンの味方につく協定で端末から送信しなければ。
でも、少し間違えただけで全宇宙を敵にまわす。
俺の首なんかで済めば――惑星トアールは感情が激しくなると身体の動きが鈍る。
ポセイロンの姫様がゆっくり、こちらに歩いてくる。
「あら、投票がまだのようですが?」
「……も、申し訳ございません。指が凍り付いてしまったのでポセイロンの味方になると入力ができず!!」
「とても利口でいらっしゃるわね、正直に話してくれて嬉しいわ……代わりに土下座してくれればポセイロンの味方と認めましょう」
俺は全力で土下座した、もう国王本気でやめたい。
こうしてパーティーは幕を閉じて宇宙船に乗り込み国へ帰った。
迎えてくれた兄が心配そうに俺を見ている。
「真っ青じゃないか!!」
「その、パーティーでポセイロンに戦争を宣言したのがいて」
「……疲れすぎたのかい?」
「い、いや本当に、俺は確かに!!」
「そんなに嘘をいうほど国王が嫌なら、俺が変わりに国王するけど」
「嘘じゃなくて――信じてくれよ!!」
「……いや、確かに嘘ではないとすれば――幻覚剤を盛られたね」
メイドたちが急いで身体スキャンの準備をしている。
問題は見つからなかったがベッドに寝かされた。
確かにあの出来ごとが緊張のあまり俺が見た幻覚という可能性はしっくりきた。
「そ、そうだよな、ポセイロンに戦争なんて馬鹿な話ないな」
「にしても幻覚にしたって気が付くでしょうよ、あのポセイロンだよ?」
「ニュースでも見て落ち着くわ」
「そんな大きすぎるニュースなら報道されてない筈がないんだから――」
『緊急速報です、惑星ジョーラシアとドドロがポセイロンを相手に戦争を宣言し宇宙中が現在パニックになっています!!』
これも幻覚ってことでいいかと本当は兄のシタダに確認した。
「よく……ポセイロンと協定を結んだ!!」
「にいちゃああああああんっ!!」
やりとげた、もう二度とこんな重要な役目背負いたくないと泣きつく。
体中が冷え切った、カチンコチンに。
ようやく動けるようになって兄に王位をゆずることを決意。
「あんなのがいるんじゃ、お前に政治任せてられないな」
「頼むよ兄ちゃん……うぅっ」
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