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45話 胃の中
しおりを挟むクロノ・スタシスという名のタイム星人は今真っ白な世界にいた。
地面も空も白いそして硬くどこまでもつづいている。
ゴドに身体を喰われたのだ。
「やっぱり、勝てなかったか――」
「勝ち負けなんてアタシを相手に存在しないわ」
「だろうな」
それこそ生物が死ぬってことにあらがうほどに難しい。
俺たちは、俺キララを逃がすべきだったかもしれないな。
ここにいない理由は何だ?
「お喋りでもする?」
「キララは?」
「あんたの宇宙船を引き継いだわ、ほんと作り物のロボットなんか抱きしめて滑稽よ」
「……一人残して、ごめん」
裏切ったとか、どうでもいいよ。
全部許すから逃げてくれ。
いいじゃないか、地球の子を保護して穏やかな生活。
俺が壊したくせに何を願ってるんだ。
「そうそう、みんなには学校に戻ってもらったの!」
「……が、っこう?」
「【料理】は味付けしないとね」
「カナちゃんも食べる気なのか?」
「もちろんよ、でもカナちゃんはまだ料理が終わってないの」
学校は調理場ってことか。包丁もまな板も鍋も、あるわけじゃない。
むしろ猟奇的でも地球人の肉を喰うだけの相手ならどれほど有難かったか。
それで最後の、キララとも出会って……のんびり宇宙旅行とかいいな。
「カナちゃん、は」
「アタシとキスする?」
「キスぅ?」
「ちなみにカナちゃんの唇は奪っちゃったわ」
「……ゴドのアンタに性欲なんかあるのかよ」
「ないわけじゃあない、ちゃんと地球人男性の身体を再現したものよ?」
ボーイズラブ、そんなもんで収まるなら、いい。
胸倉つかんでキスして押し倒せばご満足ならやってやる。
気色が悪いがそもそも俺らタイム星人にとって唇を合わせる行為は恋人の意味合いをもたない。
俺らのキスは足にするものだから、口と口がぶつかったところで俺たちに快感はない。
同時に大した不快感もなく、やってみた。
「!?」
流れ込む秋田カナ記憶、学校が恐ろしい箇所に成り果ててなお通い。
夜には一番恐ろしい存在にしがみつく。
俺がここにいるせいだ。
「そうよ、あの子ったらあなたの鼓動がなきゃ寝れないの……本当に可愛いわ」
「何でキスなんかさせてんだよ」
行為なんかしなくても映像を頭に入れるぐらい楽勝だったろうに。
いや、胃の中――はもしかして制約がある?
こいつもまるで地球人のように疲れた体をやすめている。
「うふふ、ほんとアタシの体内っていい世界ねぇ……」
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