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28話 広すぎて
しおりを挟む「……いやさ、地獄だなとは思ったよ」
エレベーターでちょっと他の階層にきただけなのだ。
服に水こぼして、着替えがある階層を教えてもらった。
ボタン押し間違えて違うところ来ちゃった。
しかもフロア間違ってるの気付いたのここにきてから3時間も経過したあと。
服がいっぱいあって好きなの選んできてもいいというから。
帰ろうとエレベーターに乗って気が付いた。
ここ指定された階層と違うし、なんかエレベーター反応しない。
「いや、まだ――」
緊急ボタンぐらいはあるかと適当にエレベーターのボタンを押しかけた。
私なんかが、私じゃなくてもいいじゃないか、【俺】の記憶が。
うまく言葉にできない感情でエレベーターから出た。
「おなか、すいてきたな……」
宇宙規模で見てこんな赤ん坊を嫁になんて正気じゃない。
でも、もし私が死ねば疾患してようが大丈夫だろう。
幸い服はある、首の吊り方なら――知ってる。
『逃げてるだけだろ』
前世の自分が語りかけてくる、また逃げるのかと。
ただ、ここまできてクロノくんに恋心を抱いてるから。
逃げる――んじゃない、私に縛られてほしくない
「あっ」
いや、そもそも地球人は百年しか生きない。
ヒコ先生が確か7千歳ぐらいだと、なら私の百年はすぐに終わるんだろうか。
でも、バツイチにさせるのは嫌だな。
「……先生と二人ならきっと探し出せるよね」
私は邪魔すぎる、逃げる、んじゃない。
竜太郎にうーちゃんを譲った時と同じように。
身を引くために、それだけ。
「☆カナちゃん!!★」
「え?」
どうして先生がここに。
「☆中々帰ってこないから心配したぞ☆」
「すいません……階層、押し間違えてしまって」
「☆パーティーフロアでお昼ご飯たべよっか★」
「先生あの、説教とか」
「☆しないよ☆」
濁った星が見えたけど、何だろう。
エレベーターで戻ってパーティーフロアで食事が出された。
コンビニで買ったような、おにぎりとか。
「ごめんカナちゃん、いいの用意できなくてさ」
「……充分ですよ」
「お洋服、いいのあった?」
「勝手に着替えちゃいましたけど――」
「可愛いよ、似合ってる」
お世辞でも好きな人に褒めてもらえると嬉しいものだな。
宇宙においでこの依存は疾患だ、赤ん坊に恋心を抱くなんて。
身を引けば済んだあの時とは違う? でも、私は――
「☆スタシスはもうカナちゃんに告白してるんだよな?☆」
「してるよ?」
「☆……受けてくれた?☆」
「うん」
「☆スタシスなら幸せにしてくれるからな★」
さっきまで迷子だったからか、眠い。
このままだと気を失いそうだ。
ホテルのようなベッドの部屋に戻ろうと立ち上がったところで意識がとぎれた。
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