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20話 勇気 後編
しおりを挟む俺たちは子供に【頂助】と名付けることにきめて山を降りてゆく。
「……え?」
「どうしたんだ?」
「あの、あそこ――誰かいるよな?」
「んー?」
「水いりますかー?」
確かに黒い何かがいた、かがんでいるのか。
とめるより早く竜太郎は声をかけに行ってしまった。
人だと思ったものの正体は熊だった。
「逃げろ!!」
「うわぁッ――!!」
熊からは逃げ出せたが急な坂の崖に向かって走り出した竜太郎。
転落しそうになった彼の手を掴んだ。
でも、すべり落ちた。
直前に彼が持っていたペットボトルの水滴が滑らせたのかもしれない。
崖下に落ちた彼は動かなかった。
救急隊員にきてもらったのだが、もう既に彼は他界していた。
「こんなの、何て説明したら――」
俺は最低なことに【ごめん】の一言だけうーちゃんに送って逃げた。
写真家だった俺は全国を放浪して、やがて彼女を見にきた。
いなかった、この世に。
旦那がいなくなったショックで流産し、そのショックで彼女も崖から身を投げた。
もし俺に彼女と向き合う気概があったなら、どんな結末になったのだろうか。
「俺も、いくか」
こうして俺も山で首を吊った。
―――――――――
おぎゃあおぎゃあ。
俺は人生をなぜか女でまた最スタートした。
いや異世界転生かと最初は頭をよぎったさ。
で、やっぱり異世界転生だった。
日本ではあるわけ、でも俺が前にいた世界と明らかに異なる世界。
宇宙人なんか前の世界にいねぇよ。
両親は【私】を殴ったりするのが当然の生活だったが。
前世の罰なのだろうと受け続けた。
保護してもらう方法は前世があったから知ってはいた。
「……前世であんなことしたから」
そんな【私】にヒコ・キララ先生は手を差し伸べてくれた。
両親から離れさせてくれたし勉強も教えてくれた。
前世でほとんど知っていた私だが宇宙人のことだけは分からない。
「☆宇宙人のことがそんなに好きなのか☆」
「はい、大好きです!!」
「☆俺も宇宙人で良かったよ☆」
他にも保護された子が二人、こんな【私】、いや前世のことだろう。
ヒコ先生が軍から持ち出した武器のヒミツを話してくれた。
なら私もと話した、ヒコ先生はあることだと信じ相談に乗ってくれた。
「俺は、本当に最低で――」
「☆最低っていうなら俺もだよ、親友を裏切っちまった☆」
「先生も?」
「☆俺は正義の味方になりたかったのに、本当に何も知らない子供だって射殺してきた☆」
先生は優しすぎる、そういう汚れ仕事は向かなかったのだろう。
もし俺が同じ立場の親友なら、軍をぬけることを引き止めない。
何なら手伝ってやる、一緒にやめて逃亡生活だとしてもヒコ先生となら楽しそうだ。
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