宇宙人との規格外恋愛をした~愛されてるのは彼だけです~

宝者来価

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19話 勇気 前編

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 ある日、雑誌に載っていた。
 俺がではなく俺の撮った写真が。
 正式に売ったものだ。俺は写真家だからな。

「誘ってくれてありがとな~楽しみ」
「小さな山でも危ないからな、しっかり準備してくれよ」

 幼馴染の大門竜太郎(だいもんりゅうたろう)は同い年。
 彼が山に登ると言い出したので歓迎して小さな山へ誘った。
 実は恋のライバルで俺は負けた。彼の手は結婚指輪がきらりと光る。

「しっかり準備した!! おやつも持ったから遭難もへっちゃら」
「遭難はするなよ?」

 翌日の朝に二人で出発した、小学生でも登るような山だが道なりは少し荒れている。
 道中で会話した、荒れてはいても余裕はある。
 もうじき生まれる子供の名前がまだ決められないとのことで――

「ほんとにきて良かったのか?」
「家で落ち着かずにウロウロされると邪魔だし不器用なアンタは留守でいいって」
「うーちゃんらしいな」

 うーちゃんというのは竜太郎の嫁で月光瓜女(げっこううりめ)のことだ。
 幼馴染で保育園・小学校・中学・高校までぜんぶ一緒の仲良し3人。
 彼女は俺じゃなくて竜太郎を選んだ、彼のほうに自分が必要だと思ったからと。

「まぁ余計な事するなってよく怒られてるしなぁ」
「……結婚しても変わらねぇなぁ」
「ごはんぐらい炊けると思ったんだが、洗剤で洗ったら怒られた」
「だろうな!?」

 彼には嫁が必要なの、とまさかの言葉で振られた。
 つくづく本当に嫁がいなかったらコイツは生活できねぇな。
 登山に短パンでくるな、危ないだろ。

「うーちゃんがおかし作ってくれたから、お前の分も」
「えっ」
「……食べてくれるか?」
「いつものことだけど、お前らもう夫婦なんだから俺までいいのに」

 昔は3人分を彼女が作ってくれるのは普通だった。
 でも今の俺は部外者、その寂しさから酒に逃げたりもした。
 もしかしたら俺を心配して山登りに誘ったのかもな……。

 余計なお世話は悪いことじゃない時もある。

「いいから喰えよ、うーちゃんがせっかく作ってくれたし」
「そうだな……食べるよ」

 登山でも食べやすいようにラップにくるんだカップケーキ。
 相変わらず料理うめーな畜生。
 これがじきに子供のもんになるのかぁ。

「もしよかったらなんだけど、子供の名づけ親になってくんない?」
「え」
「……俺らの子なんて絶対に可愛いからプリティってつけようと思ってるんだけど」

 悪気はない、本当にそう思っているうえにセンスが悪いだけで。
 可愛いから当然だと思っているだけで。
 うーちゃん苦労してるんだろうな、山に登らせたくなるぐらいに。

「そろそろ出発しようか」
「だな」
「今日は天気もいいし、頂上ならいい名前でそう」

 こうしてしばらく登って無事に山頂までたどり着くことができた。
 眼下に広がる街並みのなんと美しいことだろう。
 竜太郎もスマホのカメラで写真をとっている。

「……そこだと俺、映るんじゃ?」
「いいじゃんカメラマンの写真があっても」
「そうだな……」
「んーなんかスッキリしたし山頂の頂とかどうだろう」
「名づけ親を任せるんじゃなかったのかよ」

 あの時まで、俺は間違いなく幸せだった。
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