大悪神 ヒーローが悪落ちする話

第86話 あがき

「俺、何もしようとしてないんですけど」
「だから拘束させて貰ったんだ」
「メルドが司令官って何があったとか聞きたい事山のようにあるんですが、これだけ聞きます俺が信じられてないんですか？」
「勿論信じよう、信じた結果きみにして貰わないといけない事が出来た」
「何をです？」


「元の世界を、捨てる事だよ」
「え」

元の世界を捨てる？それって

「正しくはこっちの世界を守る者になってもらいたい、という事かもしれないねぇ」
「世界を守るのは」
「敵対しているとしたら？」
「え」
「君ちゃんの世界はこの世界が存在する事で『無い』ことになっている、これは俺ちゃんしか知らない」
「例えそうだとしても俺には何も出来ないっすよ？悪神でも無いし！」

そう、本当にたとえそうだとして何も出来ない
だからいう事を聞いてせめて弟が平穏であるように


「いいや出来るよ、ただ我が儘をいえばいい、こっちの世界がいいと」
「俺の言う事をメルドが聞くとも思えませんけど！？」

聞くなら皆は苦労していないし、この世界だって産まれてない

「それが本当だろうが嘘だろうが、君ちゃんにかける事以外に俺ちゃんたちは方法が無い」
「……それで？」
「こちらの世界を維持する為にうごくように、君ちゃんを洗脳する」

改造されたとして、ウガマとメルドが結局どうするかなんだよな
そもそもの話いままで洗脳とかされなかったんだが
出来もしない事をされそうになってる訳だ

「あのー申し訳ないんですが、俺はプロテクターってものがありまして」
「知っているよ、でも完全ではないんデショ？」
「……まぁいいですよ」
「おや、君ちゃんは嫌がるとばかり思ってたけどね」
「結局すべてはウガマが手のひらの上で遊ぶだけなんで……とにかくこの世界が終わらない時、家族に不都合が出る選択肢はとりたくありません」
「よく分かった」

何かの注射を打たれてる

「これは？」
「眠ってもらうだけだよ」
「……麻酔か何かのつもりです？」
「暴れられたらたまらないからねぇ」
「あ、そうだ聞きたい事が……これあくまで俺の世界での経験から聞くんですが、女性と付き合ってます？」
「おや？俺ちゃんに女がいたと？不思議だねぇ」

この様子、嘘をついている感じはしない

「じゃあ『りん』という人物に心あたり、ありませんか？」
「無いねぇ」
「……あったら、危なかったかもしれないな」
「え？」
「メルド、まぁこっちの周作さんはどうも『りん』さんを大切にしていたようなので」
「ほうほう？」