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20話 ただいま

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「ただいまー」
「おー、お帰り!」

集落へ戻ってくると子供たちが出迎えてくれた。
苦しそうにしていた少年も立ち直っているようで安心したのだが、それよりも気になるのが今、入江が使った言葉だった。

「ただいまです」
「ラウさんまで?」
「……恭平さんも言うほうがいいですよ」
「た、ただいま」
「おかえり」「おかえりなさい」「おかえり」

子供の出迎えって、いいな
心がどこか温かくなっていく
まだ世界の寒さと暖かさを感じるからか、身に沁みる

「えっと、智哉君だっけ?体はもう大丈夫?」
「僕ならもう平気だよ、それよりおじさんこそ大丈夫だった?」

20でオジサンって言われるのは少しモヤつくものの、小学生からみたら高校生以上ぜんぶオジサンかなと笑って流した

「うん、いろんな人が助けてくれたし……これ、どうしよう」

後ろを見ればバザーで貰った食料品やら何やら、薬から紙袋に鉛筆、変わりどころでは何が目的で入れられたのか分からない埴輪(ハニワ)まで
どうやって運んだのか地上に生きる人間なら疑問に思いそうだが答えは『4次元ポケット』に入れてきた、が正解だ。

「これを入れた人、僕にはこれがいると思ったのかな」
「土偶とか久しぶりに見た!まだあるのか」
「昔はあったんですか?」
「お前さんさては歴史のテストの点数よくなかったな?」
「平均点ちょっと下ぐらいです」
「なら教えてやる、昔は日本でも偉い奴の墓には土偶がいっぱいあった」
「聞いたことがあるような、無いような」
「昔って言ってもオジジより前の時代だからな!」
「大昔すぎるよ!あ、年上にこんな口聞いて……」
「いいって!オジジは常に心だけは若いつもりでいるからさ」
「私だって親しげに話してくれてかまいませんからね!」

珍しくラウの圧、完全に嫉妬であった

「あー若者からかうのは楽しいなー」
「ケラケラ笑ってないで、この荷物用に倉庫でも出しましょうよ」
「倉庫ならもともとあるし、そこに運んだらいいだろ」
「ありましたっけ?」
「オジジが2年前に出してるんだわ」
「……あの頃の事は、あまり覚えてないので」
「コイツ『愛が重い』って新しく集落にきたやつに振られてさー」
「やめてください、昔の事なんて聞きたくない人もいますよ」
「僕は愛が重いって悪いことじゃないと、思うけど」

効果音でいうなら『ぱああ』と、漫画のような笑顔のラウ

「その前に来た奴なら既に転生してる」
「どんな世界に?」
「この世界、日本」
「へ!?」

どんな世界でもいけると聞いているのに、同じ世界の日本に産まれたいと
男を愛せなかった未練でたどり着くような集落に来てその選択をとる
だが、この世界は不思議であふれている

「オジジも『何で?』って感じで当時は聞いたよ」
「理由はあるんだよね?」
「国が好きだった事と、もう一度ここにくる事かな?」
「転生したら二度とここにこれないって聞いたのに!?」
「『違う世界』なら無理、だってあの世のルールが違う」
「暮らしていた世界に戻る事はできるよ?ここの事はみんな忘れるけれど」

寂しそうに笑う彼らに、もうこの話は酷だと思い荷物運びを手伝ってもらうように呼びかけた


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