上 下
18 / 50

18話 供物バザー

しおりを挟む
「僕、まだ魔物に襲われるかもしれなくて―――」
「襲われる奴って後悔しまくって自分が嫌いな奴とかの特殊な事情抱えているわけだけど……まぁうん、若いし後悔もありそうだな?護衛してやるよ」
「怖ければ私が手をつなぎますよ?」
「えっ」
「お前、その『構いすぎ』で前も逃していたのに」
「性分なもので」
「でも、はぐれないように手をつないでくれると有難いです」

嬉しそうにラウは恭平の手を握った

「さぁ、行こうか」



隣町のようなイメージだったが、歩けば霧の中から現れた。
何をどうみても『バザー』としか思えない
地面にシートが敷かれ、食べ物や服など様々なものが並んでいて人がいる

「オジジちょっと代表のところ行ってくる」
「ああ、レイシェルさんの?」
「嫌な顔されるんだろーな、楽しみ」

ケラケラと笑いながら、着物の袖を揺らしてどこかへ消えた

「ラウさん、レイシェルさんってオジジさんとは親しいんですか?」
「古い縁があるようですがレイシェルさんって女性なので……」
「女性の人とも交流あるんだ!?」
「不思議なことにあの人たち出会えるのですよね」
「不思議?」
「片方が出会いたい意志が無いなら、永遠に会えないものなんですが……」

『そこの着物のおにいさん、何かいるものある?』

お爺さんというには少し失礼なくらいの年齢の男性が声をかけてきた
見たところ饅頭や衣類、そしてなぜか線香
「えっなんで線香?」
『おっと死にたての坊やか、これは宗教によるが死んだら線香って食い物だからな』
「食べるんですか!?」
『おーよ、タバコみたいなもん』
「彼はまだ空腹を感じるようですので、食料を分けてくれますか?」
『それ先に言えよ!!何かアレルギーとかある?』
「え、とくには……」

店主(?)は袋に慌てて饅頭やお菓子を詰めだした
そして隣の店にいって何やら大慌てで伝えている
死に立てで空腹を感じる、という事が大事らしく伝言ゲームである

「あの、そんなに珍しいのでしょうか?」
「死ぬ人は毎日いますけど空腹を感じる人ってめずらしいですね」
「僕はどうして感じるんです?」
「若い人で自殺以外の方だとそういう事多いみたいですよ」

話していると、大勢が押し寄せてきてラウの後ろに隠れた。

「おいおい、隠れなくってもいいだろ、あと何で俺じゃないんだ」
「ラウさん安心するから、つい」
「有難うございます」
ラウはヒカリにドヤ顔をしている

『ほら、急いでかきあつめた食料!あとタオルとか、いるだろ?』
『何かあれば頼っていいからね!?』
『どうせ余りものだ、沢山あるし俺たちは困ってない』

男も女もいて、老人から子供のような人までが沢山の袋を差し出して来た

「お礼言っとけ?」
「ありがとう、ございます」
「……店主さん」
『ん?』
「3・11への供物ってどこですかね?」
『はぁ!?』

口々に驚きの声をあげているが
何で皆驚いているのだろうか、と
彼は日付を言っただけなのに注目がひどく集まった
自分が死んだ日というだけなのにと不思議に思う

「線香を一本でもいいので、渡しておくべきかと」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

よしき君の発見

理科準備室
BL
平成の初めごろの小3の男の子のよしき君は和式でのうんちが苦手で、和式しかない小学校のトイレでのうんちで入学以来二回失敗しています。ある日大好きなおばあちゃんと一緒にデパートに行ったとき、そこの食堂で食事をしている最中にうんちがしたくなりました。仕方なくよしき君はデパートのトイレに行ったのですが、和式は開いていてももう一つの洋式のはいつまでも使用中のままでした・・・。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

俺にはラブラブな超絶イケメンのスパダリ彼氏がいるので、王道学園とやらに無理やり巻き込まないでくださいっ!!

しおりんごん
BL
俺の名前は 笹島 小太郎 高校2年生のちょっと激しめの甘党 顔は可もなく不可もなく、、、と思いたい 身長は170、、、行ってる、、、し ウルセェ!本人が言ってるんだからほんとなんだよ! そんな比較的どこにでもいそうな人柄の俺だが少し周りと違うことがあって、、、 それは、、、 俺には超絶ラブラブなイケメン彼氏がいるのだ!!! 容姿端麗、文武両道 金髪碧眼(ロシアの血が多く入ってるかららしい) 一つ下の学年で、通ってる高校は違うけど、一週間に一度は放課後デートを欠かさないそんなスパダリ完璧彼氏! 名前を堂坂レオンくん! 俺はレオンが大好きだし、レオンも俺が大好きで (自己肯定感が高すぎるって? 実は付き合いたての時に、なんで俺なんか、、、って1人で考えて喧嘩して 結局レオンからわからせという名のおしお、(re 、、、ま、まぁレオンからわかりやすすぎる愛情を一思いに受けてたらそりゃ自身も出るわなっていうこと!) ちょうどこの春レオンが高校に上がって、それでも変わりないラブラブな生活を送っていたんだけど なんとある日空から人が降って来て! ※ファンタジーでもなんでもなく、物理的に降って来たんだ 信じられるか?いや、信じろ 腐ってる姉さんたちが言うには、そいつはみんな大好き王道転校生! 、、、ってなんだ? 兎にも角にも、そいつが現れてから俺の高校がおかしくなってる? いやなんだよ平凡巻き込まれ役って! あーもう!そんな睨むな!牽制するな! 俺には超絶ラブラブな彼氏がいるからそっちのいざこざに巻き込まないでくださいっ!!! ※主人公は固定カプ、、、というか、初っ端から2人でイチャイチャしてるし、ずっと変わりません ※同姓同士の婚姻が認められている世界線での話です ※王道学園とはなんぞや?という人のために一応説明を載せていますが、私には文才が圧倒的に足りないのでわからないままでしたら、他の方の作品を参照していただきたいです🙇‍♀️ ※シリアスは皆無です 終始ドタバタイチャイチャラブコメディでおとどけします

猫が崇拝される人間の世界で猫獣人の俺って…

えの
BL
森の中に住む猫獣人ミルル。朝起きると知らない森の中に変わっていた。はて?でも気にしない!!のほほんと過ごしていると1人の少年に出会い…。中途半端かもしれませんが一応完結です。妊娠という言葉が出てきますが、妊娠はしません。

バッドエンドの異世界に悪役転生した僕は、全力でハッピーエンドを目指します!

BL
 16才の初川終(はつかわ しゅう)は先天性の心臓の病気だった。一縷の望みで、成功率が低い手術に挑む終だったが……。    僕は気付くと両親の泣いている風景を空から眺めていた。それから、遠くで光り輝くなにかにすごい力で引き寄せられて。    目覚めれば、そこは子どもの頃に毎日読んでいた大好きなファンタジー小説の世界だったんだ。でも、僕は呪いの悪役の10才の公爵三男エディに転生しちゃったみたい!  しかも、この世界ってバッドエンドじゃなかったっけ?  バッドエンドをハッピーエンドにする為に、僕は頑張る!  でも、本の世界と少しずつ変わってきた異世界は……ひみつが多くて?  嫌われ悪役の子どもが、愛されに変わる物語。ほのぼの日常が多いです。 ◎体格差、年の差カップル ※てんぱる様の表紙をお借りしました。

運命を変えるために良い子を目指したら、ハイスペ従者に溺愛されました

十夜 篁
BL
 初めて会った家族や使用人に『バケモノ』として扱われ、傷ついたユーリ(5歳)は、階段から落ちたことがきっかけで神様に出会った。 そして、神様から教えてもらった未来はとんでもないものだった…。 「えぇ!僕、16歳で死んじゃうの!? しかも、死ぬまでずっと1人ぼっちだなんて…」 ユーリは神様からもらったチートスキルを活かして未来を変えることを決意! 「いい子になってみんなに愛してもらえるように頑張ります!」  まずユーリは、1番近くにいてくれる従者のアルバートと仲良くなろうとするが…? 「ユーリ様を害する者は、すべて私が排除しましょう」 「うぇ!?は、排除はしなくていいよ!!」 健気に頑張るご主人様に、ハイスペ従者の溺愛が急成長中!? そんなユーリの周りにはいつの間にか人が集まり…。 《これは、1人ぼっちになった少年が、温かい居場所を見つけ、運命を変えるまでの物語》

平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。

しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。 基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。 一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。 それでも宜しければどうぞ。

Switch!〜僕とイケメンな地獄の裁判官様の溺愛異世界冒険記〜

天咲 琴葉
BL
幼い頃から精霊や神々の姿が見えていた悠理。 彼は美しい神社で、家族や仲間達に愛され、幸せに暮らしていた。 しかし、ある日、『燃える様な真紅の瞳』をした男と出逢ったことで、彼の運命は大きく変化していく。 幾重にも襲い掛かる運命の荒波の果て、悠理は一度解けてしまった絆を結び直せるのか――。 運命に翻弄されても尚、出逢い続ける――宿命と絆の和風ファンタジー。

処理中です...