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8話 明治の彼
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「そういえば、もう一つ聞きたいことが」
「何を聞いても何度聞いても怒りませんので、遠慮なくどうぞ」
「昨晩に入江さんからお菓子頂いたのですが、名称きいたら引かれてしまって」
「確かにあの方はかなり軟派でふざけたりすぐ手をだすような人ではありますが名称を聞くだけでひくような人では無いはずなんですが……何が?」
「ひ、と」
「ひ?……あっ!もしかして白い色のおかしですか?」
「はい、白くて少し甘かったです」
「成程そういう事ですか、ひかれてはいませんよ」
「え?」
「あの方がよく食べているお菓子で、ひ……という名称なのです」
ラウは懐から紙取り出して、筆で『ひ』と書いた
「よかった、ひかれた訳じゃ、なかった!」
「牛乳を鍋で煮詰めた物に蜜を垂らして食べるもので、貴族として生きていた頃に口にしたそうです」
「貴族!?」
「はい、平安時代の」
「そこからずっとここにとどまっていると?」
「私は明治時代を生きましたので、そこまで昔の事となるとイメージできないのですよね」
明治も平成育ちの恭平から見れば十二分に昔であった。
彼の祖母ですら昭和生まれであり、その上である曾おばあちゃんの代でも大正なのだ。
「明治って、どんなでした?」
「そうですねー……文明開化、西洋の文化が日本に入ってきたりして案外悪くなかったのかもしれません」
「案外?」
「明治時代は海外との戦争がありましたから」
「ラウさんも生きていた頃は兵隊を経験しましたか?」
「はい、何が起きたか詳しくは覚えてないのですが」
ラウは透明になっている自分の足先を指さした
足首から先が無いのはここにきて『彼だけ』なのである
お化けの一般像ではあるが、一人だけなのが不思議だった
「それは、何が?」
「足が腐る病気です、ほとんど歩けなくなっても声をあげて敵に向かいました」
「どうして、そこまで」
「上官に惚れていたのです」
「えっ!?」
「世界的にみれば案外『ある』話なのですよ、軍人が極限の状態に置かれると吊り橋効果のように仲間に惚れてしまう現象が」
ゆらり、倒れるような動きでラウの顔は恭平に近づいた
動作に顔の良さもあって動いていない心臓が音を立てる
「な、ん」
「私の愛は、命より重いのです」
「死んでいるのに、ですか?」
「むしろ愛していたから早死にしたのでしょうね」
「変な話ですが、葬式とか行きました?」
「いいえ……愛せなかった許嫁には申し訳ないと思っていましたから」
「許嫁!?」
「私の家は地主だったので、それなりに家柄もよかったのです」
「何を聞いても何度聞いても怒りませんので、遠慮なくどうぞ」
「昨晩に入江さんからお菓子頂いたのですが、名称きいたら引かれてしまって」
「確かにあの方はかなり軟派でふざけたりすぐ手をだすような人ではありますが名称を聞くだけでひくような人では無いはずなんですが……何が?」
「ひ、と」
「ひ?……あっ!もしかして白い色のおかしですか?」
「はい、白くて少し甘かったです」
「成程そういう事ですか、ひかれてはいませんよ」
「え?」
「あの方がよく食べているお菓子で、ひ……という名称なのです」
ラウは懐から紙取り出して、筆で『ひ』と書いた
「よかった、ひかれた訳じゃ、なかった!」
「牛乳を鍋で煮詰めた物に蜜を垂らして食べるもので、貴族として生きていた頃に口にしたそうです」
「貴族!?」
「はい、平安時代の」
「そこからずっとここにとどまっていると?」
「私は明治時代を生きましたので、そこまで昔の事となるとイメージできないのですよね」
明治も平成育ちの恭平から見れば十二分に昔であった。
彼の祖母ですら昭和生まれであり、その上である曾おばあちゃんの代でも大正なのだ。
「明治って、どんなでした?」
「そうですねー……文明開化、西洋の文化が日本に入ってきたりして案外悪くなかったのかもしれません」
「案外?」
「明治時代は海外との戦争がありましたから」
「ラウさんも生きていた頃は兵隊を経験しましたか?」
「はい、何が起きたか詳しくは覚えてないのですが」
ラウは透明になっている自分の足先を指さした
足首から先が無いのはここにきて『彼だけ』なのである
お化けの一般像ではあるが、一人だけなのが不思議だった
「それは、何が?」
「足が腐る病気です、ほとんど歩けなくなっても声をあげて敵に向かいました」
「どうして、そこまで」
「上官に惚れていたのです」
「えっ!?」
「世界的にみれば案外『ある』話なのですよ、軍人が極限の状態に置かれると吊り橋効果のように仲間に惚れてしまう現象が」
ゆらり、倒れるような動きでラウの顔は恭平に近づいた
動作に顔の良さもあって動いていない心臓が音を立てる
「な、ん」
「私の愛は、命より重いのです」
「死んでいるのに、ですか?」
「むしろ愛していたから早死にしたのでしょうね」
「変な話ですが、葬式とか行きました?」
「いいえ……愛せなかった許嫁には申し訳ないと思っていましたから」
「許嫁!?」
「私の家は地主だったので、それなりに家柄もよかったのです」
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