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6話 集落の人々

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恭平は子供みたいにお菓子をもらって泣き止むという経験をしていた。


「おーい」

外から声がしたので顔を拭いてテントの外へ出ると、この集落の人々だという男たちに囲まれていた
中には昨日酷い奴だなんて言って来た子供もいて
その子を含め何故か子供が三人もいた

「昨日の夜は悪かったな」
「えっと」

何て言えばいいのかと言いよどむ

「オイラの名前か?弥七(やしち)ってんだ」
「俺様は倉之助(くらのすけ)」

二人は小学生の低学年くらいの身長で着物な事から産まれは古い事が推測出来た
だが木の陰に隠れていたのは服装が現代のもので
脅えながらも出てきてくれた

「僕、工藤智哉(くどうともや)」

目線を子供の高さに合わせると

「山下恭平、20歳の時に死んだ」
「長生きだね」
「……そうでも、ないよ」


「拙者は森田菊里(もりたきくり)、すまないが惚れてはくれるなよ」
「え?」
「現世にとどまってしまった愛する男がいる」

男を愛していると、堂々といえる彼が眩しく映る
そして改めて拙者という一人称に違和感
サムライでもあるまいしと思ったがよくみれば刀を下げている


「腰のそれは」
「もし気分を害したらすまない、だがこれが無ければ拙者は落ち着かぬ故許して欲しい」
「切れるんですか?」
「無論、だが『転前』……転生をする前であるこの世界では切りたいという『心』ですべて名刀」

錆びだらけの小刀を懐から取りだして、地面に転がっていた石を切って見せた
真っ二つになった石はカツンカツンと音を立てて地面に落ちた。

「すごい」
「拙者が覚えられたようにそなたも、この世界の事はすぐ覚えられるであろう」
「なんか映画の中みたい……」

最後に、二人が

「いいですかな?わたくしは大滝善空(おおたきぜんくう)ともうします」
「俺は大滝龍(おおたきりゅう)」
「この集落では唯一、持ち家があります」
「あの高い所にある家だ、気軽に来てくれて構わない」

二人は現代の社会人、といっても通じるスーツを着ていた
しかしなんだかどこかセピア色に見え
全体の雰囲気から平成に死んでは無いだろうな、と直感で分かった

「あのぅ、生きていた次期とか聞いたら失礼だったりします?」

大滝達は顔を見合わせるとすぐに

「昭和の後期だよ」
「それと最初に申しておきますが、わたくし男の方は抱けません」
「俺につきあってここにいなくてもいいぞ本当」
「わたくしは自分の意志で『ここにいたい』からここにいるだけです」
「もはや嫌がらせじみてきた」

「お二人は、どういったご関係で?」

てっきり、付き合っているのかと思うほどに仲がよく見えたのだ
しかしどうも様子が違うと思い切って聞いた

「兄弟ですよ」
「ヤクザの組長が愛人に作らせた子供って奴だ、俺はこいつの母親に殺されてな」
「遺産が兄にいかないようにとの事でしたがわたくしそのあと銃でうたれて死にました」
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