1 / 50
1話 僕はもう死んでいる
しおりを挟む
時代は平成の、中期とでもいうのだろうか
まだパソコンでネット配信を見るよりもTVが主流で
好きなドラマを録画して見るのに、カセットテープが必要なくなった頃だ
「お前、気持ち悪いな」
高校生になって男性アイドルを大好きだと話した、その返しがこれだ
幼馴染で親友だと思っていた彼が、他の有象無象に言われた罵倒よりも遙かに悲しかった
子供の頃はまだ良かった、男の戦士とかカッコいいって言えたから
父も母もテレビに映るオネェに気味が悪いと罵倒した
だから誰にも言えなくて胸の内に秘めた
あんな風になっちゃ駄目よ、母は正しいと思って僕に注意する
母を責める気は無い、僕が変なのだと思っていた
だが、その後は皆に合わせようとしてもノリについていけなかった
彼女はもう出来たのか、どんな女が、尻が胸がと性的な話題も
苦笑いするしか無くそれでも努力はしたつもりだった
「あいつホモなんだってよ」
大学生になっても、まだその声が聞こえた
何もかもが嫌になって大学をサボって海を見に行こうと思った
苦しい、息が出来ない、何かに手を伸ばしていた気がした。
―――――――――――――――――――――――――――――――
「……大丈夫ですか?」
気が付くとランタンを右手に持って、着物を来た妖しく美しい男性に声をかけられていた。
ようやく自分が地面に倒れていた事に気が付いて起き上がった
辺りを見渡せば溺れていた記憶はあるのに何故か森の中で自分は倒れていたのだ。
「えっと、僕なら大丈夫」
「どこか痛いとか、苦しかったりしますか?」
「特には……あれ!?」
持ち物が何もない、携帯電話も無い
「持ち物が見当たらないと?」
「そう、みたいです」
「ですがもっと大事な記憶を無くしてしまっているようですね」
「財布とか全部が見当たらないのに?」
「……自分が死んでしまった事、覚えていますか?」
言われて、気が付いたのはさきほどまで自分が溺れていた事
陸地にいるのがおかしい筈だと思うが、そもそも自分は最初から陸地にいたような気もしているしで訳が分からない
「えーと、溺れた記憶なら?もしかしてここ『天国』か『地獄』ですか?」
「まぁ簡単に言えば天国が近いですね、ほら」
ランタンの灯が声をかけた男の足元を照らしたが、両足の先が見えなくて
「うわ!?」
「すみません、恐かったですかね……」
「こっちこそ、その―――」
「私は高浜羅宇(たかはまらう)」
「ラウ?」
変わった名前という反応に、羅宇は時代劇などでしかみない煙管の煙草を取り出した。
真ん中の筒をトントンと指で叩く
「これの事ですよ」
「僕は山下恭平(やましたきょうへい)です、1991年生まれで20歳になったばかりで」
「え」
この反応には覚えがあった、というより自分の顔立ちが幼い
「僕、童顔だからよく間違われるけど20超えてるよ」
「今は20XX年です」
「はい?」
それは突然の未来宣言だった。
「……たまにいるんですよ、あの世に来るまでに現世でとても長い時を彷徨って過ごす人」
自分の事は、溺れた事は確かに覚えているので死んではいるのだろう
このさい死の事よりも現状が気に成った
天国に『森』『夜』『人』があるものだろうか、そして自分はこれからどうすれば?
「僕がしなければならない事って、何かありますか?」
ぼんやりとした記憶で覚えているのは死んだら閻魔様に捌かれるというイメージ
「うーん……とりあえず私の家に来てください」
まだパソコンでネット配信を見るよりもTVが主流で
好きなドラマを録画して見るのに、カセットテープが必要なくなった頃だ
「お前、気持ち悪いな」
高校生になって男性アイドルを大好きだと話した、その返しがこれだ
幼馴染で親友だと思っていた彼が、他の有象無象に言われた罵倒よりも遙かに悲しかった
子供の頃はまだ良かった、男の戦士とかカッコいいって言えたから
父も母もテレビに映るオネェに気味が悪いと罵倒した
だから誰にも言えなくて胸の内に秘めた
あんな風になっちゃ駄目よ、母は正しいと思って僕に注意する
母を責める気は無い、僕が変なのだと思っていた
だが、その後は皆に合わせようとしてもノリについていけなかった
彼女はもう出来たのか、どんな女が、尻が胸がと性的な話題も
苦笑いするしか無くそれでも努力はしたつもりだった
「あいつホモなんだってよ」
大学生になっても、まだその声が聞こえた
何もかもが嫌になって大学をサボって海を見に行こうと思った
苦しい、息が出来ない、何かに手を伸ばしていた気がした。
―――――――――――――――――――――――――――――――
「……大丈夫ですか?」
気が付くとランタンを右手に持って、着物を来た妖しく美しい男性に声をかけられていた。
ようやく自分が地面に倒れていた事に気が付いて起き上がった
辺りを見渡せば溺れていた記憶はあるのに何故か森の中で自分は倒れていたのだ。
「えっと、僕なら大丈夫」
「どこか痛いとか、苦しかったりしますか?」
「特には……あれ!?」
持ち物が何もない、携帯電話も無い
「持ち物が見当たらないと?」
「そう、みたいです」
「ですがもっと大事な記憶を無くしてしまっているようですね」
「財布とか全部が見当たらないのに?」
「……自分が死んでしまった事、覚えていますか?」
言われて、気が付いたのはさきほどまで自分が溺れていた事
陸地にいるのがおかしい筈だと思うが、そもそも自分は最初から陸地にいたような気もしているしで訳が分からない
「えーと、溺れた記憶なら?もしかしてここ『天国』か『地獄』ですか?」
「まぁ簡単に言えば天国が近いですね、ほら」
ランタンの灯が声をかけた男の足元を照らしたが、両足の先が見えなくて
「うわ!?」
「すみません、恐かったですかね……」
「こっちこそ、その―――」
「私は高浜羅宇(たかはまらう)」
「ラウ?」
変わった名前という反応に、羅宇は時代劇などでしかみない煙管の煙草を取り出した。
真ん中の筒をトントンと指で叩く
「これの事ですよ」
「僕は山下恭平(やましたきょうへい)です、1991年生まれで20歳になったばかりで」
「え」
この反応には覚えがあった、というより自分の顔立ちが幼い
「僕、童顔だからよく間違われるけど20超えてるよ」
「今は20XX年です」
「はい?」
それは突然の未来宣言だった。
「……たまにいるんですよ、あの世に来るまでに現世でとても長い時を彷徨って過ごす人」
自分の事は、溺れた事は確かに覚えているので死んではいるのだろう
このさい死の事よりも現状が気に成った
天国に『森』『夜』『人』があるものだろうか、そして自分はこれからどうすれば?
「僕がしなければならない事って、何かありますか?」
ぼんやりとした記憶で覚えているのは死んだら閻魔様に捌かれるというイメージ
「うーん……とりあえず私の家に来てください」
0
お気に入りに追加
52
あなたにおすすめの小説
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
平凡ハイスペックのマイペース少年!〜王道学園風〜
ミクリ21
BL
竜城 梓という平凡な見た目のハイスペック高校生の話です。
王道学園物が元ネタで、とにかくコメディに走る物語を心掛けています!
※作者の遊び心を詰め込んだ作品になります。
※現在連載中止中で、途中までしかないです。
BLゲームの脇役に転生した筈なのに
れい
BL
腐男子である牧野ひろはある日、コンビニに寄った際に不慮の事故で命を落としてしまう。
その朝、目を覚ますとなんと彼が生前ハマっていた学園物BLゲームの脇役に転生!?
脇役なのになんで攻略者達に口説かれてんの!?
なんで主人公攻略対象者じゃなくて俺を攻略してこうとすんの!?
彼の運命や如何に。
脇役くんの総受け作品になっております。
地雷の方は回れ右、お願い致します(* . .)’’
随時更新中。
病んでる僕は、
蒼紫
BL
『特に理由もなく、
この世界が嫌になった。
愛されたい
でも、縛られたくない
寂しいのも
めんどくさいのも
全部嫌なんだ。』
特に取り柄もなく、短気で、我儘で、それでいて臆病で繊細。
そんな少年が王道学園に転校してきた5月7日。
彼が転校してきて何もかもが、少しずつ変わっていく。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
最初のみ三人称 その後は基本一人称です。
お知らせをお読みください。
エブリスタでも投稿してましたがこちらをメインで活動しようと思います。
(エブリスタには改訂前のものしか載せてません)
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
【完結】僕の大事な魔王様
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
BL
母竜と眠っていた幼いドラゴンは、なぜか人間が住む都市へ召喚された。意味が分からず本能のままに隠れたが発見され、引きずり出されて兵士に殺されそうになる。
「お母さん、お父さん、助けて! 魔王様!!」
魔族の守護者であった魔王様がいない世界で、神様に縋る人間のように叫ぶ。必死の嘆願は幼ドラゴンの魔力を得て、遠くまで響いた。そう、隣接する別の世界から魔王を召喚するほどに……。
俺様魔王×いたいけな幼ドラゴン――成長するまで見守ると決めた魔王は、徐々に真剣な想いを抱くようになる。彼の想いは幼過ぎる竜に届くのか。ハッピーエンド確定
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/11……完結
2023/09/28……カクヨム、週間恋愛 57位
2023/09/23……エブリスタ、トレンドBL 5位
2023/09/23……小説家になろう、日間ファンタジー 39位
2023/09/21……連載開始
転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!
めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。
ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。
兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。
義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!?
このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。
※タイトル変更(2024/11/27)
それはきっと、気の迷い。
葉津緒
BL
王道転入生に親友扱いされている、気弱な平凡脇役くんが主人公。嫌われ後、総狙われ?
主人公→睦実(ムツミ)
王道転入生→珠紀(タマキ)
全寮制王道学園/美形×平凡/コメディ?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる