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十一話 勉強

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「まずはカタカナから、ア、イ、ウ、エ、オ」
「アイウエオ」

 黒板と呼ばれるものに白い粉で文字が書かれていく。
 カタカナとひらがなを学び、これだけでも大きく進展した。
 昼には給食などという物が出される。

「皆で同じものを食べる……家族でもないし祭りでもないのに?」
「今では普通だな」
「へー、普通の給食って皆の分出るんだ」
「とは?」
「僕が出た学校、一人分を奪うって授業でさ」
「どんな学校やねん」
「忍者」
「忍者ってほんまにおるん!?」
「うーん、もう死んじゃったしいいかな……平成に悪い人たちの子供を地下に集めて生き残った子を組員にするっていう組織があってさ」

 わいわいと食べるのは中々に楽しいが、どうにも視線を感じる。

「ニエさん?」
「え」
「私の顔に何かついていたりしますか?」
「いやぁ……あはは」

 笑ってごまかされた。何かある、というか同じ奈良産まれ。

「失礼ながら、何をして地獄に――?」
「好きな人をおいかけてきた、とだけ」
「あ、うちも似たようなもんやで」
「……何を?」
「彼氏が浮気して、あげくうちかた金まで盗んで他の女にみついどった」

 どうやら彼氏とは婚約した男のことらしく、何人も嫁をつくったあげくに捨てた。
 ならば彼氏が地獄は分かるのだが、彼女も地獄にきた。
 彼氏を撲殺して自殺したら地獄で生活せねばならなくなったと。

「私も復讐で地獄に落ちたので――納得です」
「シノガタさん奈良で復讐って相当悲惨そうやな」
「家族を殺された復讐をしましたからね」
「それで地獄おちなあかんかったの!?」
「オウカ、悪くないもん……あああああっ!!」
「泣いてもーた!?」

 他より幼い女子(おなご)が泣いてしまった。
しかし犬神さんは構わず、静かに食べていた。

「犬神さんはどうじゃ?」
「……」
「何が原因とかまでは言わんでも、せめて学校にきた理由ぐらいは」
「必要ない」

 協調性のない男だ、確かに地獄に落ちそうではある。

しかし父も寡黙な人だったが不器用でも家族にしっかり食べさせてくれたし。母からは父は不器用なだけだと聞かされた。告白も顔を真っ赤にして綺麗な花を差し出されたと。
その話のたびに父は耳を赤くしていたなと。

「犬神さん、無理にとはいいませんが学校にきた理由、良ければ――」
「……お前に会いに」
「え?」

 明らかに私を指さしている、知り合いではない。いや、まて。私が知らない顔ということはまさか隣村の生き残りか。

 確かに関係ない女子供まで焼き殺した私だ、恨まれるのも分かる。

「先に言っておくがお前に怨みはない」
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