夢のあの人

にくだんご

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解決策

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次の日、朝早く東京へたった。澄村は確信していた。真寿の絶望的な状況を打開できると。

留置所に着くと、後ろの車からマスコミも出てきた。澄村はマスクに帽子を被り、真寿を連れて中へ入る。マスコミはわざと連れてきたのだ。
「面会をしたい。この子の父親と。できれば記者も何人か連れて行きたい。」
手続きを終え、3人の週刊誌記者が一緒に入ってきた。カメラも回っている。

真寿は不安だった。父に会う事も、それで出てくる人格も。昨日の夜、鏡に映った父を見てその後、夢を見た。目が覚めたら朝だった。腕や頬に傷があり、手当てされていた。彼が手当てしてくれたのだろう。
「ところで、あなたは誰なんですか?」
マスコミの1人が聞く。
「彼女の、古い友人です。」
「彼女を連れ出して昨日は何を?」
無視していた。こんな有名人が犯罪者の娘を匿っていると知られたら大事になる。どんなに危ない橋を渡らせているか、やっと気づいた。声で知られてしまったりしないか、ハラハラした。
私に二重人格を言い渡した医師も、そばにいた看護師もいた。看護師は心配そうに私の腕を抱えてくれていた。
「こちらです。」
案内していた警官が言う。
男が俯いて座っていた。ゆっくりと顔を上げる。父だった。それを認識した途端、また意識が飛んでしまった。


今度は暗闇だった。1人で、周りには果てしない闇しかなかった。怖い。助けて。澄村さん、どこ。またすがってしまっていた。1人で戦わなければ、私は、いつまでも逃げていてはダメなのに。現実で父を見るのも嫌だ。でも、ここで1人で居続けるのも怖い。タイムリープは終わってしまったのだ。時間が追いついてしまった。私は現実から逃げても、もう行ける場所はないのだ。
ふと光が見えた。立ち上がり、歩き出す。そこにはもう1人の私が居た。中学生の時の私が。
「どうして、あなたは、父を受け入れたの。」
「受け入れてない。私はずっと抵抗したよ。でももう大丈夫。澄村さんが、全部、なんとかしてくれた。」
「それじゃダメなの。私が戦わなきゃなの。」
「私もあなたなんだけど、そろそろ帰っていい?あなたの記憶に。」
「何言ってるの、あなたの記憶なんて欲しくない。父を受け入れた記憶なんて、絶対に見たくない。」
「受け入れてないってば。私はあなたなんだよ?受け入れるわけないでしょ。」
私が黙ると
「じゃあ見ればいいよ。そうしたらわかる。でも、この記憶と戦えないと、ほんとの真寿は、壊れちゃう。」
「なら、どうして私のところに戻るの。」
「あの人がいるから、あの人なら、私が居なくなっても真寿を支えられる。真寿のタイムリープが終わったみたいに、私もそろそろ期限切れらしいんだ。」
そう言って私は私を抱きしめ、私の中へ入ってきた。

目が覚めると、病室にいた。澄村さんが私の手を握り、眠っている。
それを見た瞬間、激しい頭痛が襲ってきた。
「うっ、、。」
「真寿?起きたのか!」
「澄、、村さん、、、。私。」
「もう大丈夫。終わったよ。」
「え?」
テレビがついた。そこには、面会所で叫ぶ私の姿があった。

「いやっ!やだあ!」
「落ち着きない!」
警官が止めに入る。
「やめてっ!触らないで!!お願い!」
父はそれを見て叫ぶ。
「おい!!!ふざけんな!何演技してんだこのクソアマがっ!!俺のち○こほしいって、しゃぶりついてただろうがぁっ!」
「やだっ!やだやだやだ!」
医者が話しかける、
「真寿さん、落ち着いて。」
「違う!真寿は逃げたの!私は違う!!お願い、離して!!」
「この子とは話したことがあります。中学生の時に真寿さんが作り出した、もう1人の彼女です。口調が真寿さんじゃない。」
「じゃあ、二重人格の方も、抵抗してたのか!?」
「父親の言っていたことは嘘だったのか、、!」

「昨日午前8時、突如真寿さんを連れ出した男性が父親との面会を申し立て、記者を連れて面会。そこで彼女は豹変しました。医師はし必死に抵抗する彼女を中学生の時作り出したもう1人の彼女と診断。父、〇〇さんの供述は間違っていた事が判明しました。」

涙が出た。私は、私を信じてよかったのだ。彼が信じてくれたから、それが証明された。
「澄、、村さんっ。」
涙が止まらない。彼がここにいると、初めて実感できた。彼は黙って私を抱きしめていた。

医師に夢のことを伝えると、二重人格は解消されたのだと診断された。しかし、じわじわと戻ってくるであろう襲われた記憶と、今度は戦わなくてはならない。そう告げられた。覚悟はしていた。覚悟が出来たから、彼女も私のところへ戻ってきたのかもしれない。



自分の家へはしばらく戻れないため、彼の家へと連れられた。玄関から既に広さが違う。玄関がうちのお風呂くらいある。
「真寿、疲れたろう。一緒にダラダラしよう?」
そう言うと彼はソファへ寝転がり、手を広げた。私は彼の腕の中に入った。優しいキスをされた。しかし、その先は何もなかった。行為自宅、記憶をこじ開けるきっかけになるかもしれない。しかし、いつかは向き合わなくてはならない。
「澄村さん、、。私、全部思い出したい。思い出して、次に進みたいです。」
「、、、真寿。でも、辛いよきっと。」
「だって澄村さんともっとしたいし、、。」
「うう、可愛い。」
そして舌が入ってきた。既に頭痛は始まっている。澄村さんなのに、どこか抵抗してしまっている。
「もっと、、、。激しくして下さい。」
「んっ。」
舌で口の中をかき混ぜられる。
「んっ。んんっ。」
「はあっ。真寿っ、、、。」
ズキンッ!
「うっ!くぅっ!」
ズキンッ!ズキンッ!
痛みで思わず頭を抱えた。父にされたキスが、鮮明に浮かぶ。
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