半監禁結婚

にくだんご

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間違えたなんて思いたくない。でもこれはきっと私の駄目なところの結果なんだ。

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ひとしきり泣くと、彼が朝食を食べずに家を出た事を思い出した。閉じ込められても、私は彼の体調を気にしている。彼は今年で54歳である。結婚2年目、私は私の好きな事やしたい事がだんだん分からなくなっていた。
そんな事実に、満更では無いのかもしれないと思い始めてしまった。このまま彼と添い遂げて、彼の幸せを維持する事が、役目なのかもしれない。私には何も無いけれど、彼の歌や存在を力に頑張れる人がいるのだ。沢山の人に沢山の物を与えている彼に、尽くす存在だって必要な筈だ。

分からなくなる。自分の為に何かを選択する事が、誰の為にもならないのだ。教師になりたい。でも、そうしたら児江さんは不幸になる。私が教師を諦めて不幸になる人はいない。心に靄がかかっていく。

気がつくと家事をしていた。何も考えずに流れていく時間。終えるといつものように夕方になる。今日は彼が遅いので簡単に夜食を作る。それを冷蔵庫に入れ、夜支度をする。そして眠りについた。考えれば考えるほど、児江さんといる時しか、自分の価値が無い気がして、嫌になっていた。

物音で目が覚めると彼が隣に座り、頭を撫でていた。
「おかえりなさい、、、。」
「遅くなってごめんね?」
時刻は朝5時だった。
「んーん。お疲れ様です。お夜食が冷蔵庫にありますよ?」
「もう食べたよ。ありがとう。」
ゆっくりと起き上がった。
「少し寝ますか?」
「いや。お風呂に入ろうか。」
足枷で、私は風呂に入れなかったことを忘れていた。
「おいで。」
ふわっと体が持ち上がり、風呂場に連れて行かれる。かちゃかちゃと足首から枷が外れ、そのまま服を脱がされた。
「一緒にはいるんですか?」
「嫌?」
「初めてなので、、。」
「よし脱げたね。浸かってて。」
少し浸かっていると彼も入ってきた。髪が下りている。体を流し、お風呂に浸かると私を抱き寄せた。
「華はずっと綺麗だね。」
彼はうなじにキスをしてそう言う。線の細い体だが、抱きしめられると安心する。
「児江さんといると、弱くなっていく気がします。こんなに大事にされて、私1人じゃ生きていけなくなってしまう。」
「はは。じゃあ、頑張って長生きするよ。」
振り向いて目を見つめる。
「閉じ込めてでも、私が欲しいですか?」
体を向ける。自分からキスをして、首筋を舐めおろし、鎖骨までいく。上目遣いで見ると、彼の顔が赤くなっていた。
「それ、めっちゃグッとくるね。」
「え?」
濡れた手で頭を撫でながら愛おしそうに言う。
「欲しいよ、そりゃ。手にしても足りないくらい欲しい。」
そう言ってキスをする。舌が滑り込んでくる。しかしいつものように激しくはなく、すぐにやめてしまった。
「華からして。」
「え?」
「さっきの表情、興奮した。」
どれのことを言っているかいまいち分からなかった。ゆっくりと体を寄せ、キスをした。
「華。」
「はあい?」
抱き寄せられ、頭に顎を乗せられた。
「華が綺麗すぎて、ずっと抱けなかったんだ。」
あまり意味が掴めなかった。処女だからと言うことだろうか。
「あの日、あの人、何だっけかな。」
「どの人ですか?」
「あー何だっけ。名前覚えてないんだけど、週刊誌の熱愛出たやつ。」
「あ、北海道の。」
「そう。あの一件で、華のこと傷つけて、ほんとに辛かった。ただ、この話をしたく無くて言わなかったんだけど。」
一息ついて彼が言う。
「俺、してないから。あの人と。」
「え?」
今になってこの人が不倫の言い訳をしだすとは思わなかった。ただ、椿も未遂な気がすると言っていただけ本当な気がしてしまう。
「都合良く連絡してきたあの女性と会ったけど、流石にそんな無作為に出来る物でも無くて。置いてすぐホテルを出たよ。ほんとは華と、凄くしたいんだ。でも、華を俺で汚したく無い。そう思うとどうしても反応しなくて。」
「どうして、今それを?」
言い訳では無く、今これを言いたいと思う理由が何処かにあったのだろうか。
「華の子供が欲しい。」
顔が見れず、表情がわからなかった。子供が出来れば、繋ぎ止められるからだろうか、仕事を諦められるからだろうか。
「ほんとに言ってますか?こんな歪んだ愛で、子供が育てられると思いますか?」
自分の声が強張っているのがわかった。綺麗だから抱けない。抱けないから他の人と会った。それを2年後になって未遂でしたと言う。しかも人を閉じ込めておいて子供が欲しいなんて、家畜のようだと思った。
「私だって、1人の女なんです。」
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