前世は武神、今世は無職と呼ばれた俺は冒険者人生を謳歌してみた

竜造寺ネイン

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前世で武神と呼ばれた男、初依頼を達成する①

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 俺が生成した刀の切っ先に形成したエネルギーの球体は常に渦巻いていて暴風を起こしていた。

「はっ!」

 そして、俺は気合と共にオーガの大軍に向けて刀を振り落とす。

 するとエネルギーの球体は地面を大きく抉りながら、オーガの大軍へと向かって行く。

「グギャアアアアア!」

 数体のオーガが球体に巻き込まれると体が霧散していく。

 俺が放ったエネルギーは単に螺旋回転してるわけではない。球体の中身は三〇層に分かれている。そして層ごとに回転する向きが違う。つまり、あれに巻き込まれた生物はあらゆる方向に回転するエネルギーによって体が散り散りになってしまうわけだ。

 今の俺は前世ほど多くの自然エネルギーを練れない。『第一刀剣奥義・おぼろ』は俺が限界まで練れるエネルギーを目一杯放ったわけだ。

 この技は緻密な自然エネルギーのコントロールが必要だ。何故なら、エネルギーを層ごとに回転させる方向を分けているからだ。

 エネルギーを許容できる量は前世ほど多くはないが技術が衰えるわけではない。だからこそ、俺は緻密なエネルギーコントロールが必要な『第一刀剣奥義・朧』を行使したわけだ。

「凄い……」

「一体何者なの?」

 背後にいるアルベルとエルミーは俺の技に感嘆しているようだった。

 俺が放ったエネルギーは未だにオーガ達を蹴散らしながら、前進していた。

 一〇体……二〇体……三〇体……四〇体……五〇体とオーガは確実に数を減らしていく。

「すごい……」

「一体何者なのよ」

 アルベルとエミリーは俺の技を見て感嘆していた。

「むっ……逃げていくぞ」」

 シノギが逃げていくオーガを見ていた。

 俺のエネルギーは真っすぐ進んでいたのでオーガ達は散らばれば逃げれると思ったのだろう。

「弾けろ」

 俺は右腕を突き出して拳をギュっと握る。

 すると、俺が放ったエネルギーは数十個に分かれて四方八方に逃げていったオーガ達に向かっていく。これも緻密なエネルギー操作ができるからこそできた芸当だ。

 そして――

「グギャ!」

 ――最後の一体となったオーガは俺のエネルギーに貫かれて絶命した。

「凄い、俺達は五〇体のオーガを倒すのに数十分かかったけど……君はたった一つの技で一〇〇体のオーガを蹴散らしたんだ」

 アルベルは遙か前方まで抉れた地面を見ながら思ったことを口にしていた。

 あ、やばい予想以上に自然エネルギーを操作するのに体力が持っていかれた気がする。

「……くっ!」

 俺はその場で片膝をついて、刀を地面に置く。

 自然エネルギーを操作する技術があっても、今の俺が未熟すぎるせいで大量の自然エネルギーを操作することに肉体が耐えられないようだ。自然エネルギーを操作するさいには体に負荷がかかる。この負荷を軽くするには体を鍛えるか、自然エネルギーを使い続けるしかない。

「大丈夫かい? エルミー! 彼を回復してやってくれ!」

「分かっているわ! 『風精ノ息吹シルフィブレス』!」

 エルミーが精霊術を行使すると、俺の体は心地よい風に包まれる。

 筋肉と関節の痛みが和らいでいくのを感じた。

「ありがとう」

「どういたしまして」

 立ち上がって礼を言うとエルリーは誇らしげだった。

 そのとき、

「あああああああああああああああああ!」

「「「!?」」」

 俺、アルベル、エルミーは思わず体を強張らせた。何故なら、シノギが中腰で地面を見て叫んでたからだ。

 というかこの人、こんなに大きな声出せたんだ。

「え、急にどうしたの……」

 エルミーはおそるおそるシノギに話かけていたが彼が叫んだ理由はすぐに分かった。

 シノギの視線の先には俺が彼から借りた刀があった。

 あろうことか、刀はボロボロに刃こぼれしたうえに亀裂が入りまくっていた。もう二度と使えなさそうだ。

「すまない……刀が俺の技に耐えきれるか考慮していなかった」

「……いや別にいいんだ」

 シノギは言葉とは裏腹に膝を抱えて座り出した。

「……意外とセンチメンタルな人だ」

 俺がぽつりと呟くとエルミーは耳打ちしてくる。

「剣聖シノギは重度の刀愛好家で刀が壊れると大事な友人を失ったように気落ちするらしいわ」

「ああ、なるほど……シノギさん、その刀の代わりになるかは分かりませんが俺、今回の報酬で刀を調達しましょうか」

「いや……いいんだ」

 シノギはそう言いながら急に地面に突っ伏し始めた。

 アルベルは「えぇ……」と困惑した様子を見せる。

 それよりだ、妙な気配がする。オーガのものじゃないな。
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