前世は武神、今世は無職と呼ばれた俺は冒険者人生を謳歌してみた

竜造寺ネイン

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前世で武神と呼ばれた男、冒険者ギルドを作る②

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 ラゴール家当主――エドゥアルドは姿勢正しく、俺達の前にあるソファーに座った。

「っと……そうだ」

 エドゥアルドは足を組んで両手を組む。

「私の話の前にお前達の要件を聞かせてくれ」

 領主の言葉を聞いて、俺はハッカに目配せをする。その後、ハッカは持ってきたギルド設立許可証をテーブルの上に置いて差し出す。

「オレ達はこの紙に領主様のサインが欲しくてきました」

「ギルド設立の紙か……ふむ、場所はソガの村。確か没落貴族が集う集落だったな」

 さすが領主なだけあって辺鄙な場所にある村を把握している。

 次いで彼は口を開く。

「なぜギルドを設立しようと思った? ハッキリ言ってしまうが、交通の便が悪い場所にギルドを建てる必要はない」

 ここは下手に取り繕うより、正直に言った方がいい。

「今はまだ町に出る理由がないので村を拠点に活動をしたいと思いました。また、ルゴ家直々から依頼を受ける予定なのでそこで名声を上げる目論見です」

「なにっ……!」

 エドゥアルドは何故か驚嘆していた。そのあとブツブツ独り言を言っていたので『体内エネルギー』で聴覚を強化する。

(まさかもうルゴ家に彼が目を付けられていたとは……恐らく彼の強さに気付いたから繋がりを持とうとしているに違いない)

 何か盛大な勘違いをしてらっしゃる。まあいいか。

 そのあと、エドゥアルドは気を取り直したようにこちら向く。

「おっとすまない、ちなみにルゴ家の依頼について良ければ聞かせてくれないか? 口止めさせられてたら言わなくていい」

 領主はルゴ家の依頼について何も知らないらしい。別に口止めされてないので喋ろっと。

 俺はルゴ家が管轄する森の中にある洞窟でオーガと呼ばれる魔物が群れをなして共存しているのにも関わらず、こちらから近づかない限り人に関与しないという不気味なことが起きていることを話した。もちろん、調査隊として派遣した冒険者が全滅したことについても話した。

「……妙だな……オーガとは幾度も相まみえたことはあるが、群れを成すとは聞いたことはない」

 エドゥアルドは眉根を寄せていた。

「あ、あの、思ってたことがあるんですけれども」

 ソリスは小さく手を挙げる。

「どうした物申してみせよ」

「はい……憶測なんですけど、サイクロプス・ジェネラルや薄暗い場所にいるはずのバジリスクが草原に出現したことと無関係ではないと思います。近隣で強い魔物や行動がおかしい魔物が短期間の間に同時に出現するのは不自然かと」

「確かに先の二件も不自然だ。関連性を疑うのも無理はない……うーむ」

 ソリスとエドゥアルドは考え込んでしまった。

「案外、大昔に討伐された魔王が復活したとかですかね。それで魔物が活性化しちゃってみたいな……」

 ハッカの言葉にソリスとエドゥアルドは体を強張らせてしまう。

「あ、いやいや冗談です。すみません」

 空気が重くなったのでハッカは慌てて頭を下げる。

 魔王か。そんなやつも前世で会ったな。

「魔王なら俺が大昔に倒したよ」

「いやいや、オレ達が生まれる遙か昔の話だから」

「いや本当だって、瞬間移動したり、亜空間から魔法を放ったり戦った奴の中で五本の指に入る強さだったな~」

「なに言ってんだこいつ」

 ハッカは白い目で俺を見た。

 俺は別に前世のことを隠してないので普通に過去のことを話している。なお、誰も真に受けない模様。

「ゴホン……いいかね」

 エドゥアルドが咳払いして、それとなく俺達に静かにするように注意する。

「ギルドの許可証にサインしよう。交通の便が悪いとは言ったものの名声を上げるという志は立派なものだ。しかしだ。冒険者ギルドは一年ごとに成果をこの地域にある冒険者ギルドの本部に報告しなければならない。成果が不十分と判断されればギルドは取り壊しとなる。それを肝に命じてくれ」

「「「はいっ」」」

 俺達が返事をするとエドゥアルドは快くサインしてくれる。

「さて、次は私の話を聞いてくれ。ヒューゴ・ブラックウッド、君にお願いごとがある」

 最初は俺達に話があるのかと思ったが、途中から俺を気にしているような素振りだったから俺だけに用事なのかなとは思っていた。

 うーん、一体なんだろう。
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