上 下
24 / 41

前世で武神と呼ばれた男、冒険者ギルドを作る②

しおりを挟む
 ラゴール家当主――エドゥアルドは姿勢正しく、俺達の前にあるソファーに座った。

「っと……そうだ」

 エドゥアルドは足を組んで両手を組む。

「私の話の前にお前達の要件を聞かせてくれ」

 領主の言葉を聞いて、俺はハッカに目配せをする。その後、ハッカは持ってきたギルド設立許可証をテーブルの上に置いて差し出す。

「オレ達はこの紙に領主様のサインが欲しくてきました」

「ギルド設立の紙か……ふむ、場所はソガの村。確か没落貴族が集う集落だったな」

 さすが領主なだけあって辺鄙な場所にある村を把握している。

 次いで彼は口を開く。

「なぜギルドを設立しようと思った? ハッキリ言ってしまうが、交通の便が悪い場所にギルドを建てる必要はない」

 ここは下手に取り繕うより、正直に言った方がいい。

「今はまだ町に出る理由がないので村を拠点に活動をしたいと思いました。また、ルゴ家直々から依頼を受ける予定なのでそこで名声を上げる目論見です」

「なにっ……!」

 エドゥアルドは何故か驚嘆していた。そのあとブツブツ独り言を言っていたので『体内エネルギー』で聴覚を強化する。

(まさかもうルゴ家に彼が目を付けられていたとは……恐らく彼の強さに気付いたから繋がりを持とうとしているに違いない)

 何か盛大な勘違いをしてらっしゃる。まあいいか。

 そのあと、エドゥアルドは気を取り直したようにこちら向く。

「おっとすまない、ちなみにルゴ家の依頼について良ければ聞かせてくれないか? 口止めさせられてたら言わなくていい」

 領主はルゴ家の依頼について何も知らないらしい。別に口止めされてないので喋ろっと。

 俺はルゴ家が管轄する森の中にある洞窟でオーガと呼ばれる魔物が群れをなして共存しているのにも関わらず、こちらから近づかない限り人に関与しないという不気味なことが起きていることを話した。もちろん、調査隊として派遣した冒険者が全滅したことについても話した。

「……妙だな……オーガとは幾度も相まみえたことはあるが、群れを成すとは聞いたことはない」

 エドゥアルドは眉根を寄せていた。

「あ、あの、思ってたことがあるんですけれども」

 ソリスは小さく手を挙げる。

「どうした物申してみせよ」

「はい……憶測なんですけど、サイクロプス・ジェネラルや薄暗い場所にいるはずのバジリスクが草原に出現したことと無関係ではないと思います。近隣で強い魔物や行動がおかしい魔物が短期間の間に同時に出現するのは不自然かと」

「確かに先の二件も不自然だ。関連性を疑うのも無理はない……うーむ」

 ソリスとエドゥアルドは考え込んでしまった。

「案外、大昔に討伐された魔王が復活したとかですかね。それで魔物が活性化しちゃってみたいな……」

 ハッカの言葉にソリスとエドゥアルドは体を強張らせてしまう。

「あ、いやいや冗談です。すみません」

 空気が重くなったのでハッカは慌てて頭を下げる。

 魔王か。そんなやつも前世で会ったな。

「魔王なら俺が大昔に倒したよ」

「いやいや、オレ達が生まれる遙か昔の話だから」

「いや本当だって、瞬間移動したり、亜空間から魔法を放ったり戦った奴の中で五本の指に入る強さだったな~」

「なに言ってんだこいつ」

 ハッカは白い目で俺を見た。

 俺は別に前世のことを隠してないので普通に過去のことを話している。なお、誰も真に受けない模様。

「ゴホン……いいかね」

 エドゥアルドが咳払いして、それとなく俺達に静かにするように注意する。

「ギルドの許可証にサインしよう。交通の便が悪いとは言ったものの名声を上げるという志は立派なものだ。しかしだ。冒険者ギルドは一年ごとに成果をこの地域にある冒険者ギルドの本部に報告しなければならない。成果が不十分と判断されればギルドは取り壊しとなる。それを肝に命じてくれ」

「「「はいっ」」」

 俺達が返事をするとエドゥアルドは快くサインしてくれる。

「さて、次は私の話を聞いてくれ。ヒューゴ・ブラックウッド、君にお願いごとがある」

 最初は俺達に話があるのかと思ったが、途中から俺を気にしているような素振りだったから俺だけに用事なのかなとは思っていた。

 うーん、一体なんだろう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ポリゴンスキルは超絶チートでした~発現したスキルをクズと言われて、路地裏に捨てられた俺は、ポリゴンスキルでざまぁする事にした~

喰寝丸太
ファンタジー
ポリゴンスキルに目覚めた貴族庶子6歳のディザは使い方が分からずに、役に立たないと捨てられた。 路地裏で暮らしていて、靴底を食っている時に前世の記憶が蘇る。 俺はパチンコの大当たりアニメーションをプログラムしていたはずだ。 くそう、浮浪児スタートとはナイトメアハードも良い所だ。 だがしかし、俺にはスキルがあった。 ポリゴンスキルか勝手知ったる能力だな。 まずは石の板だ。 こんなの簡単に作れる。 よし、売ってしまえ。 俺のスキルはレベルアップして、アニメーション、ショップ、作成依頼と次々に開放されて行く。 俺はこれを駆使して成り上がってやるぞ。 路地裏から成りあがった俺は冒険者になり、商人になり、貴族になる。 そして王に。 超絶チートになるのは13話辺りからです。

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

魔女の弟子ー童貞を捨てた三歳児、異世界と日本を行ったり来たりー

あに
ファンタジー
|風間小太郎《カザマコタロウ》は彼女にフラれた。公園でヤケ酒をし、美魔女と出会い一夜を共にする。 起きると三歳児になってしまってさぁ大変。しかも日本ではなく異世界?!

異世界の約束:追放者の再興〜外れギフト【光】を授り侯爵家を追い出されたけど本当はチート持ちなので幸せに生きて見返してやります!〜

KeyBow
ファンタジー
 主人公の井野口 孝志は交通事故により死亡し、異世界へ転生した。  そこは剣と魔法の王道的なファンタジー世界。  転生した先は侯爵家の子息。  妾の子として家督相続とは無縁のはずだったが、兄の全てが事故により死亡し嫡男に。  女神により魔王討伐を受ける者は記憶を持ったまま転生させる事が出来ると言われ、主人公はゲームで遊んだ世界に転生した。  ゲームと言ってもその世界を模したゲームで、手を打たなければこうなる【if】の世界だった。  理不尽な死を迎えるモブ以下のヒロインを救いたく、転生した先で14歳の時にギフトを得られる信託の儀の後に追放されるが、その時に備えストーリーを変えてしまう。  メイヤと言うゲームでは犯され、絶望から自殺した少女をそのルートから外す事を幼少期より決めていた。  しかしそう簡単な話ではない。  女神の意図とは違う生き様と、ゲームで救えなかった少女を救う。  2人で逃げて何処かで畑でも耕しながら生きようとしていたが、計画が狂い何故か闘技場でハッスルする未来が待ち受けているとは物語がスタートした時はまだ知らない・・・  多くの者と出会い、誤解されたり頼られたり、理不尽な目に遭ったりと、平穏な生活を求める主人公の思いとは裏腹に波乱万丈な未来が待ち受けている。  しかし、主人公補正からかメインストリートから逃げられない予感。  信託の儀の後に侯爵家から追放されるところから物語はスタートする。  いつしか追放した侯爵家にザマアをし、経済的にも見返し謝罪させる事を当面の目標とする事へと、物語の早々に変化していく。  孤児達と出会い自活と脱却を手伝ったりお人好しだ。  また、貴族ではあるが、多くの貴族が好んでするが自分は奴隷を性的に抱かないとのポリシーが行動に規制を掛ける。  果たして幸せを掴む事が出来るのか?魔王討伐から逃げられるのか?・・・

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

転生少女は欲深い

白波ハクア
ファンタジー
 南條鏡は死んだ。母親には捨てられ、父親からは虐待を受け、誰の助けも受けられずに呆気なく死んだ。  ──欲しかった。幸せな家庭、元気な体、お金、食料、力、何もかもが欲しかった。  鏡は死ぬ直前にそれを望み、脳内に謎の声が響いた。 【異界渡りを開始します】  何の因果か二度目の人生を手に入れた鏡は、意外とすぐに順応してしまう。  次こそは己の幸せを掴むため、己のスキルを駆使して剣と魔法の異世界を放浪する。そんな少女の物語。

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

処理中です...