21 / 41
前世で武神と呼ばれた男、辺境伯に知られる③
しおりを挟む
俺はバジリスクに近づく。
「危険です!」
先程、戦っていた少年は俺に注意を促している。
相対しているバジリスクの方は口を開けていた。
「ブレスか!」
声を上げると同時にバジリスクの口から炎が吐かれた。
しかし、俺は炎を気にせず、そのまま真っすぐ進む。
「ああ! そんなっ!」
少年は心配そうに叫んでいた。
一方、俺は『体内エネルギー』を纏うことで火傷をすることを防いでいた。とはいえ、熱さを感じないわけではない。
ただ、蒸し焼きにされるまえに相手を倒せばいいだけの話だ!
「掴まえた!」
「グガッ!?」
バジリスクの目前に到達した俺は両手で下顎と上顎を無理やり閉じ、
「暗殺体術『斬首』!」
そのまま、時計回りに腕を回して、バジリスクの頭部を捻り千切った。
「グギャアアアァァァァ……!」
バジリスクは断末魔を上げながら息絶えてしまった。
「これどうしよ」
手に持っているバジリスクの頭を床にそっと置いた。
「すごい……」
後ろを振り向くと少年は口を半開きにしたまま固まっていた。
また、騎士達は信じられないような目で俺を見ていた。
「バジリスクって素手で倒せるもんなのか!?」「そんなわけないだろ! 何者だよあの男……」「名の知れた冒険者か?」
彼らは俺の正体を推察していた。
俺は名の知れない村人です。
「ありがとう! 皆、君のおかげで助かったよ! 君、名前はなんていうんだい? 見たところ僕と変わらない歳に見えるけど」
少年は俺に興味津々だった。
「俺の名はヒューゴだ。歳は一五歳」
「同い歳だ。僕の名前はシアド・ラゴール」
シアド……ラゴール?
先日、サイクロプス・ジェネラルと戦ったときにシェナ・ラゴールという名の少女を救った。彼女と同じ名字だ。
「もしかして妹か姉がいる? あと、もしかしてラゴール辺境伯の……親族とか?」
「そうだよ。僕には双子の妹がいる。そして、僕の父親がそのラゴール辺境伯だ」
「へぇ……」
サイクロプス・ジェネラルをぶっ飛ばしたときに破壊した民家の修理費を請求されるかもしれない。つい、昨日のことなので彼は何も知らないかもしれないが。
「ところで、これからどこに向かうのですか? あとで妹と合流するのですか、方角からしてラゴールの町に向かっているのでは?」
「シアドよ」
「は、はい?」
俺はシアドの両肩に手を置く。
「急用があるんだ。一緒に同行したいのは山々だが、俺は人々を救うためにやらなければならないことがあるんだ」
「そうなんだ! ヒューゴ君……僕と同じ歳なのに民のことを考えてるなんて……きっと、僕には想像が付かないことを背負ってるんだ」
シアドはなんか目を輝かせていた。
「じゃ!」
俺はさっさと背を向けて走った。
「え? 待ってお礼をしてないよ!」
慌てるシアドの声が聞こえた。
「素晴しいお方だ。見返りを求めないとは!」
騎士達の声も聞こえた。
お礼……? そういえば、助けたお礼にお金を貰って、それを町の修理費に当てることもできたかもしれない。
しかし――
「彼こそが真の騎士だ」「平民なのにラゴール様のように弱きを助け強きを挫くとは!」
――騎士達から賞賛されてる感じなので今更、戻れない。
「くぅ!」
俺は唇を噛み締めて、ハッカとソリスの下へと戻り、ラゴールの町へと向かったのであった。
「危険です!」
先程、戦っていた少年は俺に注意を促している。
相対しているバジリスクの方は口を開けていた。
「ブレスか!」
声を上げると同時にバジリスクの口から炎が吐かれた。
しかし、俺は炎を気にせず、そのまま真っすぐ進む。
「ああ! そんなっ!」
少年は心配そうに叫んでいた。
一方、俺は『体内エネルギー』を纏うことで火傷をすることを防いでいた。とはいえ、熱さを感じないわけではない。
ただ、蒸し焼きにされるまえに相手を倒せばいいだけの話だ!
「掴まえた!」
「グガッ!?」
バジリスクの目前に到達した俺は両手で下顎と上顎を無理やり閉じ、
「暗殺体術『斬首』!」
そのまま、時計回りに腕を回して、バジリスクの頭部を捻り千切った。
「グギャアアアァァァァ……!」
バジリスクは断末魔を上げながら息絶えてしまった。
「これどうしよ」
手に持っているバジリスクの頭を床にそっと置いた。
「すごい……」
後ろを振り向くと少年は口を半開きにしたまま固まっていた。
また、騎士達は信じられないような目で俺を見ていた。
「バジリスクって素手で倒せるもんなのか!?」「そんなわけないだろ! 何者だよあの男……」「名の知れた冒険者か?」
彼らは俺の正体を推察していた。
俺は名の知れない村人です。
「ありがとう! 皆、君のおかげで助かったよ! 君、名前はなんていうんだい? 見たところ僕と変わらない歳に見えるけど」
少年は俺に興味津々だった。
「俺の名はヒューゴだ。歳は一五歳」
「同い歳だ。僕の名前はシアド・ラゴール」
シアド……ラゴール?
先日、サイクロプス・ジェネラルと戦ったときにシェナ・ラゴールという名の少女を救った。彼女と同じ名字だ。
「もしかして妹か姉がいる? あと、もしかしてラゴール辺境伯の……親族とか?」
「そうだよ。僕には双子の妹がいる。そして、僕の父親がそのラゴール辺境伯だ」
「へぇ……」
サイクロプス・ジェネラルをぶっ飛ばしたときに破壊した民家の修理費を請求されるかもしれない。つい、昨日のことなので彼は何も知らないかもしれないが。
「ところで、これからどこに向かうのですか? あとで妹と合流するのですか、方角からしてラゴールの町に向かっているのでは?」
「シアドよ」
「は、はい?」
俺はシアドの両肩に手を置く。
「急用があるんだ。一緒に同行したいのは山々だが、俺は人々を救うためにやらなければならないことがあるんだ」
「そうなんだ! ヒューゴ君……僕と同じ歳なのに民のことを考えてるなんて……きっと、僕には想像が付かないことを背負ってるんだ」
シアドはなんか目を輝かせていた。
「じゃ!」
俺はさっさと背を向けて走った。
「え? 待ってお礼をしてないよ!」
慌てるシアドの声が聞こえた。
「素晴しいお方だ。見返りを求めないとは!」
騎士達の声も聞こえた。
お礼……? そういえば、助けたお礼にお金を貰って、それを町の修理費に当てることもできたかもしれない。
しかし――
「彼こそが真の騎士だ」「平民なのにラゴール様のように弱きを助け強きを挫くとは!」
――騎士達から賞賛されてる感じなので今更、戻れない。
「くぅ!」
俺は唇を噛み締めて、ハッカとソリスの下へと戻り、ラゴールの町へと向かったのであった。
0
お気に入りに追加
20
あなたにおすすめの小説
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。

いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる