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前世で武神と呼ばれた男、宿場町で人助けする②
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俺は二本指で一つ目巨人の魔物が振るう剣を止めた。
魔物は必死に剣を指から離そうとしていたがビクともしない。魔物の力が弱いわけではない。むしろ、この魔物の力は人と比べると尋常じゃないほどに強い。
「貴方……一体、何者なんですの!?」
「え、俺?」
俺は剣から指を離し、後頭部を掻いて少女と向き合う。剣を指から離そうと目一杯力を入れていた魔物は思わず唸り声を上げて、尻餅をついて、ドスンッと鈍い音を立てた。
「俺の名前はヒューゴだ。そっちは?」
「私はシェナ・ラゴール……って、前!」
彼女は急に叫んだ。
というかラゴールって領主の名字じゃなかったっけ? 親戚かな?
俺は思案しながら、背後を振り返らず、魔物が大振りしてきた腕を片手で止める。その瞬間、攻撃を受けた衝撃で周囲の地面がひび割れる。中々の攻撃力だ。
「嘘っ、サイクロプス・ジェネラルの攻撃を見ずに受け止めるなんて」
少女は目を見開く。
この魔物は、サイクロプス・ジェネラルという名前らしい……名前長っ。
◆
私の目の前にいきなり現れた男はヒューゴと名乗った。見た目は至って普通の少年だ。この辺りで見かけたことのない顔。質素な格好をしていて、どこかの農村出身だと思われた。
おそらく、私と同じで『寵愛の儀』を受けに教会に赴いた人間の一人に違いありませんわ。
そんな少年が、サイクロプス・ジェネラルという強力無比な魔物を圧倒していた。指で剣を受け止め、片手で振るわれた腕を簡単に止めていた。
私の父親はこの地域を領地とする貴族。貴族の息女として、様々な教養、作法を身に付けていた。その中で武芸に特に力を入れてる。ここは国の辺境の地であり、戦争時になれば最前線になる。そのため、騎士の養成に力を入れている地域でもある。私も人の上に立つ者として様々な師範から武芸を習っているのです。
そのかいもあったかは分からないのですが希少な戦闘系の職業を授かった。
けれども、サイクロプス・ジェネラルには歯が立たなかった。
一つ目の巨人――サイクロプスは熟練の冒険者や騎士ですら手こずる相手だけど、倒せない相手じゃない。
その上位種がボブサイクロプス。サイクロプス一〇〇〇体に一体生まれてくる突然変異。サイクロプス自体、希少な魔物なのでボブサイクロプスが出現してくることは滅多にないのです。
さらにその上位種がサイクロプス・ジェネラル。サイクロプス一万体に一体生まれてくる突然変異。一〇〇年に一度生まれてくるか分からない魔物なんです。
そんな魔物が突然、現れ、町の人々に襲いかかった。私や衛兵は全く歯が立たなかったけれども――
「――ほいほいほいほい!」
ヒューゴとかいう男は軽快な声を出しながらサイクロプス・ジェネラルが振るってくる両拳を片手のみで叩いていた。
「はっ!」
男は掛け声と共に跳躍し、サイクロプス・ジェネラルの首に回し蹴りを食らわせた。
「グガァ!?」
サイクロプス・ジェネラルは痛みに耐えるような声を出して地面に転がり、民家の壁と激突した。
「グゥゥ……」
その後、魔物はゆっくりと立ち上がって男を睨む。
「おお! おお! まだ生きてるのか……強い。なるほどね、攻撃力以上にタフさが売りな魔物か! やばいな。ちょっと本気を出していいかもしれない。筋肉が躍動してきましたあ!」
一方、男は興奮気味に喋って、拍手をしていたので私は「なんなの……この人」と呟いてしまったが、
「さて……行くぞ」
男は真剣な顔をし、猫の手をした右手を引いた。その雰囲気に呑まれて、私は口を真一文字に閉じた。魔物も危険を感じたのか体を強張らせている。
魔物は必死に剣を指から離そうとしていたがビクともしない。魔物の力が弱いわけではない。むしろ、この魔物の力は人と比べると尋常じゃないほどに強い。
「貴方……一体、何者なんですの!?」
「え、俺?」
俺は剣から指を離し、後頭部を掻いて少女と向き合う。剣を指から離そうと目一杯力を入れていた魔物は思わず唸り声を上げて、尻餅をついて、ドスンッと鈍い音を立てた。
「俺の名前はヒューゴだ。そっちは?」
「私はシェナ・ラゴール……って、前!」
彼女は急に叫んだ。
というかラゴールって領主の名字じゃなかったっけ? 親戚かな?
俺は思案しながら、背後を振り返らず、魔物が大振りしてきた腕を片手で止める。その瞬間、攻撃を受けた衝撃で周囲の地面がひび割れる。中々の攻撃力だ。
「嘘っ、サイクロプス・ジェネラルの攻撃を見ずに受け止めるなんて」
少女は目を見開く。
この魔物は、サイクロプス・ジェネラルという名前らしい……名前長っ。
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私の目の前にいきなり現れた男はヒューゴと名乗った。見た目は至って普通の少年だ。この辺りで見かけたことのない顔。質素な格好をしていて、どこかの農村出身だと思われた。
おそらく、私と同じで『寵愛の儀』を受けに教会に赴いた人間の一人に違いありませんわ。
そんな少年が、サイクロプス・ジェネラルという強力無比な魔物を圧倒していた。指で剣を受け止め、片手で振るわれた腕を簡単に止めていた。
私の父親はこの地域を領地とする貴族。貴族の息女として、様々な教養、作法を身に付けていた。その中で武芸に特に力を入れてる。ここは国の辺境の地であり、戦争時になれば最前線になる。そのため、騎士の養成に力を入れている地域でもある。私も人の上に立つ者として様々な師範から武芸を習っているのです。
そのかいもあったかは分からないのですが希少な戦闘系の職業を授かった。
けれども、サイクロプス・ジェネラルには歯が立たなかった。
一つ目の巨人――サイクロプスは熟練の冒険者や騎士ですら手こずる相手だけど、倒せない相手じゃない。
その上位種がボブサイクロプス。サイクロプス一〇〇〇体に一体生まれてくる突然変異。サイクロプス自体、希少な魔物なのでボブサイクロプスが出現してくることは滅多にないのです。
さらにその上位種がサイクロプス・ジェネラル。サイクロプス一万体に一体生まれてくる突然変異。一〇〇年に一度生まれてくるか分からない魔物なんです。
そんな魔物が突然、現れ、町の人々に襲いかかった。私や衛兵は全く歯が立たなかったけれども――
「――ほいほいほいほい!」
ヒューゴとかいう男は軽快な声を出しながらサイクロプス・ジェネラルが振るってくる両拳を片手のみで叩いていた。
「はっ!」
男は掛け声と共に跳躍し、サイクロプス・ジェネラルの首に回し蹴りを食らわせた。
「グガァ!?」
サイクロプス・ジェネラルは痛みに耐えるような声を出して地面に転がり、民家の壁と激突した。
「グゥゥ……」
その後、魔物はゆっくりと立ち上がって男を睨む。
「おお! おお! まだ生きてるのか……強い。なるほどね、攻撃力以上にタフさが売りな魔物か! やばいな。ちょっと本気を出していいかもしれない。筋肉が躍動してきましたあ!」
一方、男は興奮気味に喋って、拍手をしていたので私は「なんなの……この人」と呟いてしまったが、
「さて……行くぞ」
男は真剣な顔をし、猫の手をした右手を引いた。その雰囲気に呑まれて、私は口を真一文字に閉じた。魔物も危険を感じたのか体を強張らせている。
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