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前世で武神と呼ばれた男、宿場町で人助けする①
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ラゴールの町に向かう馬車に乗ってから八時間が経過した。
日が暮れてきたのでラゴールの町までの中継地点となっている宿場町に泊まることになった。
宿場町は領主がいる町が近いおかげか、堅牢な城郭に囲まれており、今朝までいた町と比べても遜色ない規模だ。
しかし、町の様子はおかしかった。
町に入ろうとすると住人が数人、門から飛び出していた。さらに門に近づいた俺達に衛兵が手のひらを向けて、行く手を塞いだ。
「今は町に入らない方がいい!」
俺はハッカ、ソリスらと顔を合わせたあと、衛兵に問いかける。
「何かあったんですか? 只事じゃなさそうですけど」
「町の中に魔物が出現した。たまたま、城郭を工事していた部分に急襲されたんだ。今は戦える者達が魔物に対応している」
衛兵の言葉にハッカとソリスは息を呑んでいた。
「魔物の数は何体ですか?」
「一体だけだが……とんでもなく強い……」
「なんだって、こうしちゃおれん!」
戦いたくなった俺は衛兵の横を通り過ぎようとしたが、
「待て待て!」
ハッカが腕を掴んで行動を静止してきた。
「止めるなハッカ! 目の前にステーキが転がってるとしよう、拾い食いしたくなるだろ? それと同じだ。俺が魔物を追うのはステーキの拾い食いに等しい」
「衛生的に食べたくないが……でもまぁ……地面がついてない部分だけ切り取って食べようとするかもしれない」
「ハッカ君、食い意地張ってるね……」
「いや、ものの例えだって! 今のはヒューゴの例えが悪い」
ソリスが目を細めると、ハッカは慌てて弁明していた。
よし、今だ!
「行ってきま!」
「あ、ヒューゴ!」「ヒュー君!」
「ちょ、ちょっと君! 待つんだ……って、速っ!? もう姿が見えなくなったぞ!」
皆の声を背中越しに聞きながら、俺は駆け出した。
俺が走ったあとは強い風が舞い上がり、人々が目を丸くしていた。
「よっと!」
それから、俺は跳躍し、屋根の上に乗った。
避難している人々は街の北西から来ている。ちなみに俺が通った門は街の真南に位置する。
街の北西を注視しながら、大気中の『自然エネルギー』を伝って戦っている様子を感じとる。
ふむふむ……魔物は筋骨隆々で一つ目だ。身長は三メートル程ある。しかも、刀身が一メートル程ある剣を振り回していた。
その魔物に対応していた衛兵らしき人々は魔物の振るう剣によって簡単に外壁へと吹っ飛ばされていた。しかし、同い年ぐらいの一人の少女が魔物の剣を槍で受け止めていた。
少女の振るう槍の軌跡で分かる。隙のない洗練された動きだ。幼少の頃から鍛練を積んできたのが分かる。とはいえ、魔物が怒涛の勢いで剣を振るい続けており、少女は防御するので手一杯だ。いつ致命傷を受けてもおかしくない状況だ。
俺は屋根から屋根へと一っ飛びで移動し、戦いの場へと赴いた。
目的地についた俺は屋根から地面へと降り立つ。眼前には外壁に打ち付けられて苦しみ悶えている兵士達がいる。
そして、
「くぅ……」
たった今、槍の柄を魔物の剣によって真っ二つにされた少女が悔し気な声を出していた。
金属製の胸当てと藁の腰巻きを身に付けている一つ目の魔物は赤褐色だった。
一方、少女は燦々とした青い瞳と腰まで届くストレートな銀髪を有していた。スカート型の赤い軍服を着ており、胸元や袖から白いブラウスを着ていることが分かった。整った顔立ちをしており、はっと目を引くような美人でありながらも少女らしい可憐さも兼ね備えている。
「グオォォォ!」
魔物は雄叫びを上げ、振り上げた剣を少女に向かって振り下ろすが、
「どうも」
「「!?」」
俺が人差し指と中指で剣を挟んで止めると魔物と少女は息を呑んでいた。
日が暮れてきたのでラゴールの町までの中継地点となっている宿場町に泊まることになった。
宿場町は領主がいる町が近いおかげか、堅牢な城郭に囲まれており、今朝までいた町と比べても遜色ない規模だ。
しかし、町の様子はおかしかった。
町に入ろうとすると住人が数人、門から飛び出していた。さらに門に近づいた俺達に衛兵が手のひらを向けて、行く手を塞いだ。
「今は町に入らない方がいい!」
俺はハッカ、ソリスらと顔を合わせたあと、衛兵に問いかける。
「何かあったんですか? 只事じゃなさそうですけど」
「町の中に魔物が出現した。たまたま、城郭を工事していた部分に急襲されたんだ。今は戦える者達が魔物に対応している」
衛兵の言葉にハッカとソリスは息を呑んでいた。
「魔物の数は何体ですか?」
「一体だけだが……とんでもなく強い……」
「なんだって、こうしちゃおれん!」
戦いたくなった俺は衛兵の横を通り過ぎようとしたが、
「待て待て!」
ハッカが腕を掴んで行動を静止してきた。
「止めるなハッカ! 目の前にステーキが転がってるとしよう、拾い食いしたくなるだろ? それと同じだ。俺が魔物を追うのはステーキの拾い食いに等しい」
「衛生的に食べたくないが……でもまぁ……地面がついてない部分だけ切り取って食べようとするかもしれない」
「ハッカ君、食い意地張ってるね……」
「いや、ものの例えだって! 今のはヒューゴの例えが悪い」
ソリスが目を細めると、ハッカは慌てて弁明していた。
よし、今だ!
「行ってきま!」
「あ、ヒューゴ!」「ヒュー君!」
「ちょ、ちょっと君! 待つんだ……って、速っ!? もう姿が見えなくなったぞ!」
皆の声を背中越しに聞きながら、俺は駆け出した。
俺が走ったあとは強い風が舞い上がり、人々が目を丸くしていた。
「よっと!」
それから、俺は跳躍し、屋根の上に乗った。
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少女の振るう槍の軌跡で分かる。隙のない洗練された動きだ。幼少の頃から鍛練を積んできたのが分かる。とはいえ、魔物が怒涛の勢いで剣を振るい続けており、少女は防御するので手一杯だ。いつ致命傷を受けてもおかしくない状況だ。
俺は屋根から屋根へと一っ飛びで移動し、戦いの場へと赴いた。
目的地についた俺は屋根から地面へと降り立つ。眼前には外壁に打ち付けられて苦しみ悶えている兵士達がいる。
そして、
「くぅ……」
たった今、槍の柄を魔物の剣によって真っ二つにされた少女が悔し気な声を出していた。
金属製の胸当てと藁の腰巻きを身に付けている一つ目の魔物は赤褐色だった。
一方、少女は燦々とした青い瞳と腰まで届くストレートな銀髪を有していた。スカート型の赤い軍服を着ており、胸元や袖から白いブラウスを着ていることが分かった。整った顔立ちをしており、はっと目を引くような美人でありながらも少女らしい可憐さも兼ね備えている。
「グオォォォ!」
魔物は雄叫びを上げ、振り上げた剣を少女に向かって振り下ろすが、
「どうも」
「「!?」」
俺が人差し指と中指で剣を挟んで止めると魔物と少女は息を呑んでいた。
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