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前世で武神と呼ばれた男、初めて町に行く
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俺達のいる村は山岳地帯にあるため、馬車は滅多に通らないが、『寵愛の儀』があるということで村の村長が馬車を呼び寄せていた。
しかし、
「馬車には乗らん」
「じゃあ、どうやって行くんじゃあ!」
俺が馬車に乗ることをキッパリと断るとハッカが叫び出した。
「でも、徒歩で行くには遠いわ」
ソリスは頬に指を当てて困った様子を見せていた。
「二人は馬車に乗っていいよ。俺は走っていく」
「教会がある町までは四〇キロあるような気が~」
「ソリス、馬車は便利だし、景色を楽しむのも良い。だが、よく考えて欲しい、四〇キロ走って心肺機能を鍛える機会を逃すことになる。これは、貴族が誕生日にケーキを食べないことと同じことだ」
「まぁ……それは大変! 私も走りますわ!」
「ソリス、オマエは考え直せ。おいヒューゴ、オレはオマエのためを思って言ってるんだ。オマエは山から下りたことないだろ、他の街に行くなんて初めてのはずだ。道に迷ったらどうする」
「方向音痴のハッカに言われたくないな」
「うぐっ……それは言われるとなんとも言えない……」
こう見えてハッカはとんでもない方向音痴だ。狩猟に行ったさい、必ず自宅に戻るのに数日はかかる。最長記録だと一年帰ってこなかった。そのときは俺が彼を見つけたが、野生と化したハッカは魔物を口に咥えて四足歩行で森を走り回っていた。衝撃的な光景だった。
そんなこんなんでソリスとハッカは馬車に乗り込み、俺は迷わないように馬車と並走して走った。
「――――お、お客さん、かれこれ三日間ずっと走ってるね」
馬の手綱を握っている御者が俺を横目に話しかけてきた。
「楽しくなってきたあ!」
「ひぇ……」
俺が破顔すると御者は顔を引き攣らせていた。
そして、馬車が村から出立して四日後、いよいよ教会がある町に着いた。
町は俺達と同じ一五歳の人間で溢れていた。近隣にある村や教会がない町から若者が集ったのだろう。
与えられる職業とスキルに関しては正直、鼻から期待してない。そんなものがなくても前世で培った経験と知識で様々な技を繰り出すことができる。この時代の人間はどうもスキルに依存して生活し過ぎているような気がする。
町の教会に入ると、大勢の若者達が祭壇を囲むように立っていた。祭壇の前には司祭と一人の若者がいた。
一人ずつ『寵愛の儀』を受けているということだろう。司祭がぶつぶつと呟くと若者は光の柱に包まれて文字が浮かんでくる。おそらく与えられる職業が書かれているのかもしれない。
「楽しみだよな、なっ、なっ!」
ハッカは妙にはしゃいでいた。
「村までの道は覚えたし、三ヶ月間走って帰ろうかな」
「なんだか眠くなってたわ……横になろうかしら」
「駄目だこいつら」
ハッカは意に介さない俺とソリスの態度に頭を抱えていた。
時間が経ち、いよいよ俺らが『寵愛の儀』を受ける時間がやってきた。
順番はハッカ、ソリス、俺の順だ。前世で邪神含めて神と呼ばれる存在を数体倒した俺が寵愛を受けれるのだろうかという疑問はあるけど、なんでもいいや。
しかし、
「馬車には乗らん」
「じゃあ、どうやって行くんじゃあ!」
俺が馬車に乗ることをキッパリと断るとハッカが叫び出した。
「でも、徒歩で行くには遠いわ」
ソリスは頬に指を当てて困った様子を見せていた。
「二人は馬車に乗っていいよ。俺は走っていく」
「教会がある町までは四〇キロあるような気が~」
「ソリス、馬車は便利だし、景色を楽しむのも良い。だが、よく考えて欲しい、四〇キロ走って心肺機能を鍛える機会を逃すことになる。これは、貴族が誕生日にケーキを食べないことと同じことだ」
「まぁ……それは大変! 私も走りますわ!」
「ソリス、オマエは考え直せ。おいヒューゴ、オレはオマエのためを思って言ってるんだ。オマエは山から下りたことないだろ、他の街に行くなんて初めてのはずだ。道に迷ったらどうする」
「方向音痴のハッカに言われたくないな」
「うぐっ……それは言われるとなんとも言えない……」
こう見えてハッカはとんでもない方向音痴だ。狩猟に行ったさい、必ず自宅に戻るのに数日はかかる。最長記録だと一年帰ってこなかった。そのときは俺が彼を見つけたが、野生と化したハッカは魔物を口に咥えて四足歩行で森を走り回っていた。衝撃的な光景だった。
そんなこんなんでソリスとハッカは馬車に乗り込み、俺は迷わないように馬車と並走して走った。
「――――お、お客さん、かれこれ三日間ずっと走ってるね」
馬の手綱を握っている御者が俺を横目に話しかけてきた。
「楽しくなってきたあ!」
「ひぇ……」
俺が破顔すると御者は顔を引き攣らせていた。
そして、馬車が村から出立して四日後、いよいよ教会がある町に着いた。
町は俺達と同じ一五歳の人間で溢れていた。近隣にある村や教会がない町から若者が集ったのだろう。
与えられる職業とスキルに関しては正直、鼻から期待してない。そんなものがなくても前世で培った経験と知識で様々な技を繰り出すことができる。この時代の人間はどうもスキルに依存して生活し過ぎているような気がする。
町の教会に入ると、大勢の若者達が祭壇を囲むように立っていた。祭壇の前には司祭と一人の若者がいた。
一人ずつ『寵愛の儀』を受けているということだろう。司祭がぶつぶつと呟くと若者は光の柱に包まれて文字が浮かんでくる。おそらく与えられる職業が書かれているのかもしれない。
「楽しみだよな、なっ、なっ!」
ハッカは妙にはしゃいでいた。
「村までの道は覚えたし、三ヶ月間走って帰ろうかな」
「なんだか眠くなってたわ……横になろうかしら」
「駄目だこいつら」
ハッカは意に介さない俺とソリスの態度に頭を抱えていた。
時間が経ち、いよいよ俺らが『寵愛の儀』を受ける時間がやってきた。
順番はハッカ、ソリス、俺の順だ。前世で邪神含めて神と呼ばれる存在を数体倒した俺が寵愛を受けれるのだろうかという疑問はあるけど、なんでもいいや。
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