暗竜伝説魔法論

紅創花優雷

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番外編

サフィラ「攻めとの身長差を気にする受けは最高ですね!」

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 マールは非常に不満に思っていた。何が不満だったか、そうパデラの身長だ。
 入学したての頃はパデラの方が少し上かなー? くらいの身長差だった。触ろうと思えばパデラの頭に触れられるくらいだ。しかし、あれから五か月程経った。パデラの身長は伸び、マールより八センチくらい大きいという差がついてしまった。これはパデラの成長が早いとか凄いとかではなく、マールの身長が低い。それで尚更不満だった。
 加えて声だ。パデラは最近喉が痛いとか言うから「バカのくせに風邪か?」と笑ってやったが、どうやら風邪ではなく変声期のようだ。本人は気付いていないが、パデラの声がちょっとだけだが低くなってきている。
 授業の実戦中、マールは確実に大きくなってきているパデラをじっと見つめていた。
「なぁ、マール。どうした?」
 視線に気づいたパデラが魔力を引っ込め、マールの所に駆け寄る。
「なんで僕の身長は伸びないんだろうか」
 反射で悩みを話してしまった。それが運の尽きと言うか、間違いだった。そのせいで、知りたくなかったことを知ってしまった。
「んー、魔力の使い過ぎじゃね? ほら言うじゃん。成長期前から魔力を使い過ぎると、体が「成長しなくとも魔力があるから大丈夫」って判断して、成長の妨げになるって」
「なにそれ、初めて聞いたんだけど」
 魔力が成長の妨げになるなんて初耳だ。
「マジで? 俺十歳になった時に父さんから聞いたけど。だから身長が欲しいならほどほどにしとけって。お前、何するにも魔力使うじゃんか」
 十歳になったときに教えてもらう事らしい。
 しかし、マールは十歳になる頃に心情氷結を起こし三年の間も山に籠った。知っているわけがない。そして、魔力の使い過ぎには心当たりしかない。山に籠ってからもそうだが、その前も今も。半分魔力で生きているようなモノだ。
「……もっと早く教えろバカ!」
「マール頭いいから知ってるっておもったからぁー!」
「嘘つけ! 絶対嘘だろそれ!」
 その物言いは絶対マールが知らない事を分かっていて黙っていた。こいつ、マウント取りたいからって手が卑怯だ。と言うか、元々お前の方が出来る事多いじゃんか。
「さぁどうでしょー!」
「うっざ!」
 こいつ、ちょっと身長高いからって調子乗りやがって。ちょっと大人っぽくなったからって、ちょっと男らしくなったからって! 調子のりやがって! とマールは心の中で沸々としているのに気付いているのかいないのか、パデラはニヨニヨにながらマールの頭をぽんぽんとしてやる。
 そんな様子をサフィラは、一見教師として見守っているように感じるが、実際はBL的な妄想をして盛り上がり、頬を緩ませるのを我慢していた。
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