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番外編
【バレンタイン番外編】甘味の交換。
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二月十四日。この魔法のクニでも、バレンタインとおなじようなイベントがある。
その名も「甘味の日」。昔々に、カタカナ行事をきちんと覚えていないアマテラスが、暗竜様に『二月十四日は甘味の日じゃ! 親しいものと「ちょこ」などの甘味を交換する日なのじゃ!』と、教えたのだ。
時は流れ、恋愛行事だけでなく友好行事としても尚上げている甘味の日だ。
「なぁマール! 今日は甘味の日だから、チョコ作ったぜ~」
授業終わり、パデラは嬉々として相棒であるマールにそう話す。
そんな様子を、サフィラは興奮を抑えながら眺めていた。
甘味の日に浮けにチョコを作ってあげる攻めっ! あぁ、なんと尊い。そう心の中で呟きながら口を抑え、それを吐き出すのを抑えている。
そんな彼女の事などいざしらず、マールはパデラに尋ねる。
「チョコか。どんなのだ?」
「ガトーショコラ! ハート型にしてみたぜ~。勿論、俺の完全手作り!」
素晴らしい程に曇りのない笑顔で、答えを出す。その言葉はサフィラにとっては鈍器に殴られたかのような衝撃だ。
ガトーショコラの、ハート型? え、ハート型? ハート型なんですか!? サフィラがパデラを見ると、他意はなさそうだ。
「それは楽しみだな」
「食後のデザートだぜ。楽しみにしろ~」
るんるんと寮に戻ろうと足を進め始めたパデラ。マーシがその裾を握り、呼び止めた。
「あ、そのパデラ」
「んー?」
パデラが振り向くと、もじもじしているマールが、若干顔を赤らめて口を開いた。
「ぼ、僕も、作ってみたんだ。簡単な奴だけど、マ、じゃない。母さんに教えてもらって……」
「おっ、それは楽しみだ」
優しく微笑み、パデラがそう口にする。
そこでサフィラの脳内は爆発した。
料理が上手な攻めのために、あまり関わりたくなかった母親に声を掛け、チョコの作り方を教えてもらって、それを攻めに渡す。なんだその最高のBLイベントは。あぁ、暗竜様、ありがとうございます。お恵み下さりありがとうございます。サフィラが両手を合わせ感激しているのをマールは見てしまい、己の行動がどんな事だったのかを悟ったようだ。慌ててパデラの背中を押して出て行った。
そのすぐあと、サフィラの使い魔のエーベネが現れ、主に呆れたといいたげな目を向ける。
『貴女ね……』
「パデマル公式供給よ!!」
サフィラのその叫び。あぁ、これ。夜のBL妄想話が長くなるパターンだ。寝れない。そう察したエーベネは、深い深いため息を突いたのだった。
〇
夕飯を食べおわり、小さめのガトーショコラを二人で切り分けて食べることにした。
「なんか、ハートを切るってヤダなぁ」
パデラがハート型のガトーショコラを切り分けながらそう呟く。
「なんでハートにしたんだよ」
「型が売ってたからなぁ、どうせなら使おうかなーって。ほら、切れたぞ」
ハートの片割れのガトーショコラがのった皿を渡し、パデラは手を差し出す。
「ほら、お前のチョコ。食べさせてくれよ!」
そう、にこりと笑う。
マールは魔法でしまっていたチョコを取り出し、彼の手にのせる。
透明な袋の中には、小さなトッピングされたチョコがいくつか入っている。そのチョコは、ハート型だ。
「お前もハート型か! 可愛いところあるなぁ」
「違う! これは母さんが、異性に渡すと勘違いして……」
大分感情が出るようになった表情で、パデラから視線を外す
「ふーん。まぁ、そう言う事にしといてやるぜぇ」
によによしているパデラをマールは赤くなった顔で軽く睨んでから、ガトーショコラを口にした。程よい甘さのそれはとても美味しかった。
その名も「甘味の日」。昔々に、カタカナ行事をきちんと覚えていないアマテラスが、暗竜様に『二月十四日は甘味の日じゃ! 親しいものと「ちょこ」などの甘味を交換する日なのじゃ!』と、教えたのだ。
時は流れ、恋愛行事だけでなく友好行事としても尚上げている甘味の日だ。
「なぁマール! 今日は甘味の日だから、チョコ作ったぜ~」
授業終わり、パデラは嬉々として相棒であるマールにそう話す。
そんな様子を、サフィラは興奮を抑えながら眺めていた。
甘味の日に浮けにチョコを作ってあげる攻めっ! あぁ、なんと尊い。そう心の中で呟きながら口を抑え、それを吐き出すのを抑えている。
そんな彼女の事などいざしらず、マールはパデラに尋ねる。
「チョコか。どんなのだ?」
「ガトーショコラ! ハート型にしてみたぜ~。勿論、俺の完全手作り!」
素晴らしい程に曇りのない笑顔で、答えを出す。その言葉はサフィラにとっては鈍器に殴られたかのような衝撃だ。
ガトーショコラの、ハート型? え、ハート型? ハート型なんですか!? サフィラがパデラを見ると、他意はなさそうだ。
「それは楽しみだな」
「食後のデザートだぜ。楽しみにしろ~」
るんるんと寮に戻ろうと足を進め始めたパデラ。マーシがその裾を握り、呼び止めた。
「あ、そのパデラ」
「んー?」
パデラが振り向くと、もじもじしているマールが、若干顔を赤らめて口を開いた。
「ぼ、僕も、作ってみたんだ。簡単な奴だけど、マ、じゃない。母さんに教えてもらって……」
「おっ、それは楽しみだ」
優しく微笑み、パデラがそう口にする。
そこでサフィラの脳内は爆発した。
料理が上手な攻めのために、あまり関わりたくなかった母親に声を掛け、チョコの作り方を教えてもらって、それを攻めに渡す。なんだその最高のBLイベントは。あぁ、暗竜様、ありがとうございます。お恵み下さりありがとうございます。サフィラが両手を合わせ感激しているのをマールは見てしまい、己の行動がどんな事だったのかを悟ったようだ。慌ててパデラの背中を押して出て行った。
そのすぐあと、サフィラの使い魔のエーベネが現れ、主に呆れたといいたげな目を向ける。
『貴女ね……』
「パデマル公式供給よ!!」
サフィラのその叫び。あぁ、これ。夜のBL妄想話が長くなるパターンだ。寝れない。そう察したエーベネは、深い深いため息を突いたのだった。
〇
夕飯を食べおわり、小さめのガトーショコラを二人で切り分けて食べることにした。
「なんか、ハートを切るってヤダなぁ」
パデラがハート型のガトーショコラを切り分けながらそう呟く。
「なんでハートにしたんだよ」
「型が売ってたからなぁ、どうせなら使おうかなーって。ほら、切れたぞ」
ハートの片割れのガトーショコラがのった皿を渡し、パデラは手を差し出す。
「ほら、お前のチョコ。食べさせてくれよ!」
そう、にこりと笑う。
マールは魔法でしまっていたチョコを取り出し、彼の手にのせる。
透明な袋の中には、小さなトッピングされたチョコがいくつか入っている。そのチョコは、ハート型だ。
「お前もハート型か! 可愛いところあるなぁ」
「違う! これは母さんが、異性に渡すと勘違いして……」
大分感情が出るようになった表情で、パデラから視線を外す
「ふーん。まぁ、そう言う事にしといてやるぜぇ」
によによしているパデラをマールは赤くなった顔で軽く睨んでから、ガトーショコラを口にした。程よい甘さのそれはとても美味しかった。
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