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第七章 愛執編
疾走☆
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どれだけ長い時間、この日を待っただろう。
何度も何度も諦めかけて、それでも忘れられなかった。
もし、生きてもういちど逢えたら、二度と離さない――。
ユーリとファーリアを乗せた黒馬が、荒涼とした風景の中を疾走していく。
砂漠といっても、このあたりには金色に連なる砂丘はない。どこまでも赤茶けた大地が続き、ところどころに巨大な奇岩が点在している。ユーリたちが本拠地とする南部の砂漠に比べて、水場も多く、丈の短い草が生えている場所もある。
風のように駆ける馬の上で、ユーリはファーリアに口づけた。頬に、まぶたに、額に、唇に、何度も何度も。
ファーリアはユーリの腕に抱かれながら、接吻の雨を浴びていた。肌にユーリの唇が触れるのが心地良くて、せがむようにファーリアのほうからも口づける。
やがて柔らかな草の生えた水場に着き、二人は馬を降りた。
言葉を交わすことすら惜しむように唇を重ねる。そのまま草の上に転がった。午後の太陽が、重なり合う二人の濃い影を作っている。
二人を降ろして背が軽くなった馬は、勢いよく水を飲んでいる。長距離の疾走で疲れていたのだろう。
そうしている間も、ユーリは口づけをやめない。口づけるたびに、腕の中のファーリアが見せる表情が可愛らしく、その唇の柔らかさが心地良い。
数え切れないほど唇を触れ合わせた後、ようやくユーリは舌先を尖らせ、少しだけファーリアの桜色の唇を割った。行儀よく並んだ小さな歯列が愛おしい。
「……あ」
更に奥へと差し入れると、ファーリアが小さく声を漏らした。続いて吐き出された熱い吐息を飲み込むように、ユーリはファーリアの口を塞いだ。
「――っ……」
ゆっくりと慎重に、ユーリはファーリアの中を探った。
会えなかった月日、何度も想った。もし逢えたら、ファーリアの喜ぶことだけをしてやりたい。ファーリアが心地良いように、少しも嫌なことがないように、大切に大切に愛してやりたい。
ファーリアの反応を全神経で感じながら、ユーリは徐々に奥へと舌を入れた。やがてファーリアが舌を絡めてきた。
そのまま何分も濃厚な口づけは続いた。ファーリアの腕がユーリの首に絡みつき、ユーリの腕がファーリアの腰に巻き付く。重なり合う呼吸が、だんだん速くなる。
躰の奥から湧き上がってくるものに耐えきれずに、ファーリアが僅かに腰をくねらせた。
それでようやくユーリが唇を離すと、ファーリアの瞳は艷やかに潤んでいた。
言葉なんて必要なかった。
ただ互いを欲するままに、夢中で口づけ合い、からだを絡ませ合う。服を脱ぎ捨て、肌をすり合わせて、互いの体温を交換する。口づけの合間の荒い呼吸が、青い空へと吸い込まれていく。
まるで草原の野生動物が昼下がりに交わるように、二人は繋がった。
砂うさぎが穴を掘り、リスが花の種を齧る。美しい角を持つオリックスの群れが、遠く砂煙を上げて駆けていく。赤い砂を運んで風が吹き抜け、水面にさざ波が立つ。馬はのんびりと草を喰んでいる。
地上の生き物たちのすべての営みの片隅で、ユーリはファーリアの中に入り、ファーリアはユーリを受け入れた。それはとても自然で、そして必然なことのように遂行された。太陽が西に沈み、月が昇り、星が巡る、まるで何万年も前から決まっていたことのように、二人はお互いの中に少しの違和感もなく溶け合った。
「……ああ…………」
ファーリアの口から、甘い声が漏れた。
「ハァッ………」
ユーリも熱い吐息を漏らす。二人は全く同時に昇りつめて、果てた。
「……逢いたかった……」
それだけ言って、ユーリはファーリアをきつく抱き締めた。
今、腕の中にファーリアがいることが信じられない。
何度も何度も夢に見た。ああ、ようやく逢えた――と、抱きしめて、口づけて。
目覚めると、そこには誰もいなくて。
広げた両腕の間を、寒い風が吹き抜けていった。後悔ばかりが押し寄せて、声もなく胸を掻きむしった。
そんな夜と朝を何度繰り返しただろう。
「逢いたかった」
ユーリはもう一度言った。そしてまだ余韻に漂っているファーリアの唇に、軽く口づけをした。
何度も何度も諦めかけて、それでも忘れられなかった。
もし、生きてもういちど逢えたら、二度と離さない――。
ユーリとファーリアを乗せた黒馬が、荒涼とした風景の中を疾走していく。
砂漠といっても、このあたりには金色に連なる砂丘はない。どこまでも赤茶けた大地が続き、ところどころに巨大な奇岩が点在している。ユーリたちが本拠地とする南部の砂漠に比べて、水場も多く、丈の短い草が生えている場所もある。
風のように駆ける馬の上で、ユーリはファーリアに口づけた。頬に、まぶたに、額に、唇に、何度も何度も。
ファーリアはユーリの腕に抱かれながら、接吻の雨を浴びていた。肌にユーリの唇が触れるのが心地良くて、せがむようにファーリアのほうからも口づける。
やがて柔らかな草の生えた水場に着き、二人は馬を降りた。
言葉を交わすことすら惜しむように唇を重ねる。そのまま草の上に転がった。午後の太陽が、重なり合う二人の濃い影を作っている。
二人を降ろして背が軽くなった馬は、勢いよく水を飲んでいる。長距離の疾走で疲れていたのだろう。
そうしている間も、ユーリは口づけをやめない。口づけるたびに、腕の中のファーリアが見せる表情が可愛らしく、その唇の柔らかさが心地良い。
数え切れないほど唇を触れ合わせた後、ようやくユーリは舌先を尖らせ、少しだけファーリアの桜色の唇を割った。行儀よく並んだ小さな歯列が愛おしい。
「……あ」
更に奥へと差し入れると、ファーリアが小さく声を漏らした。続いて吐き出された熱い吐息を飲み込むように、ユーリはファーリアの口を塞いだ。
「――っ……」
ゆっくりと慎重に、ユーリはファーリアの中を探った。
会えなかった月日、何度も想った。もし逢えたら、ファーリアの喜ぶことだけをしてやりたい。ファーリアが心地良いように、少しも嫌なことがないように、大切に大切に愛してやりたい。
ファーリアの反応を全神経で感じながら、ユーリは徐々に奥へと舌を入れた。やがてファーリアが舌を絡めてきた。
そのまま何分も濃厚な口づけは続いた。ファーリアの腕がユーリの首に絡みつき、ユーリの腕がファーリアの腰に巻き付く。重なり合う呼吸が、だんだん速くなる。
躰の奥から湧き上がってくるものに耐えきれずに、ファーリアが僅かに腰をくねらせた。
それでようやくユーリが唇を離すと、ファーリアの瞳は艷やかに潤んでいた。
言葉なんて必要なかった。
ただ互いを欲するままに、夢中で口づけ合い、からだを絡ませ合う。服を脱ぎ捨て、肌をすり合わせて、互いの体温を交換する。口づけの合間の荒い呼吸が、青い空へと吸い込まれていく。
まるで草原の野生動物が昼下がりに交わるように、二人は繋がった。
砂うさぎが穴を掘り、リスが花の種を齧る。美しい角を持つオリックスの群れが、遠く砂煙を上げて駆けていく。赤い砂を運んで風が吹き抜け、水面にさざ波が立つ。馬はのんびりと草を喰んでいる。
地上の生き物たちのすべての営みの片隅で、ユーリはファーリアの中に入り、ファーリアはユーリを受け入れた。それはとても自然で、そして必然なことのように遂行された。太陽が西に沈み、月が昇り、星が巡る、まるで何万年も前から決まっていたことのように、二人はお互いの中に少しの違和感もなく溶け合った。
「……ああ…………」
ファーリアの口から、甘い声が漏れた。
「ハァッ………」
ユーリも熱い吐息を漏らす。二人は全く同時に昇りつめて、果てた。
「……逢いたかった……」
それだけ言って、ユーリはファーリアをきつく抱き締めた。
今、腕の中にファーリアがいることが信じられない。
何度も何度も夢に見た。ああ、ようやく逢えた――と、抱きしめて、口づけて。
目覚めると、そこには誰もいなくて。
広げた両腕の間を、寒い風が吹き抜けていった。後悔ばかりが押し寄せて、声もなく胸を掻きむしった。
そんな夜と朝を何度繰り返しただろう。
「逢いたかった」
ユーリはもう一度言った。そしてまだ余韻に漂っているファーリアの唇に、軽く口づけをした。
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