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第六章 アルナハブ編
狙撃手は見た
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宮中の一角から溢れた水は、王宮の下層部を占拠していたダレイ王子軍を押し流していった。
エディとマフディは、呆気にとられてその様子を眺めていた。
「……これは……なにかの事故か、それともニケ王妃の作戦か?」
「事故だとしたらタイミングが良すぎやしませんかね」
室内で休んでいた兵士たちも、衝撃に気付いてテラスに出てきた。その一人が、洪水から逃げ惑う人々を指して叫んだ。
「リンだ!」
「なんだって――?」
「あそこです!」
指し示されて、エディもリンの姿を見つける。
「――リン!リーン!!」
呼びながら、エディはアトゥイーの姿を探した。
乱戦の中にあって、リンはなぜか呆然と立ち尽くしている様子だった。そのリンの視線の先に、アトゥイーはいた。王宮の遥か下層、逃げ惑う戦闘民族たちに押し流されるようにして、城門から吐き出されていくところだった。
「……あの門から出られる!行くぞ!リンと合流する!」
エディはそう叫ぶなり、踵を返した。室内ではイシュラヴァール兵たちが既に準備を終えて待機していた。
「おう!!」
威勢のいい声を上げ、兵たちは武器を手に部屋を飛び出した。
廊下に控えていた例の女官に、エディは短い挨拶をする。
「城門までのルートが確保されたようですので、我々は一旦国へ戻ります。我らが国王の意志は先にお渡しした書簡のとおりでございますと、王妃様にお伝えください。くれぐれもご無事で、と」
「承知致しました。城門までは彼らが護衛致します。馬の用意も申し付けているので、ご心配なく」
女官の後ろには、二十名ほどの兵士が控えていた。
「助かります。では」
「あなたがたも、ご武運を」
斜面を駆け下りるように、エディたちは城門を目指した。アトゥイーとリンが開いたらしいルートは、既に王妃軍が王子軍から奪還を始めていた。
城門を出たところで、エディはリンと合流を果たした。
「リン――!無事だったんだね!ヨナとサハルは?アトゥイーも、さっきちらっと見えたけど」
エディは笑顔でリンに駆け寄ると、辺りを見回した。
「……ヨナとサハルは、地下の隠し通路で市街に出ているはずだ……彼が案内してくれる」
リンがイランを紹介する。
「ありがとうございます!」
エディがイランに頭を下げたので、イランはうろたえた。
「いやいや、礼は無事に会えてからにしましょうや、ね?」
イランの言葉に、エディは力強く頷く。
「で、アトゥイーは?先に行ってるのか?」
エディがリンを振り返った。リンは先程からずっと複雑な表情のまま、言いにくそうに口を開いた。
「アトゥイーは……連れ去られた」
「なん……だって……?」
エディの顔から笑顔が消えた。
「どこへ――?何故!?だってさっき、一緒にいたじゃないか!!」
エディがリンの肩を掴んで揺さぶる。
「なんで……なんでだよ!!!アトゥイーーーーーっ!!!」
エディとマフディは、呆気にとられてその様子を眺めていた。
「……これは……なにかの事故か、それともニケ王妃の作戦か?」
「事故だとしたらタイミングが良すぎやしませんかね」
室内で休んでいた兵士たちも、衝撃に気付いてテラスに出てきた。その一人が、洪水から逃げ惑う人々を指して叫んだ。
「リンだ!」
「なんだって――?」
「あそこです!」
指し示されて、エディもリンの姿を見つける。
「――リン!リーン!!」
呼びながら、エディはアトゥイーの姿を探した。
乱戦の中にあって、リンはなぜか呆然と立ち尽くしている様子だった。そのリンの視線の先に、アトゥイーはいた。王宮の遥か下層、逃げ惑う戦闘民族たちに押し流されるようにして、城門から吐き出されていくところだった。
「……あの門から出られる!行くぞ!リンと合流する!」
エディはそう叫ぶなり、踵を返した。室内ではイシュラヴァール兵たちが既に準備を終えて待機していた。
「おう!!」
威勢のいい声を上げ、兵たちは武器を手に部屋を飛び出した。
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「城門までのルートが確保されたようですので、我々は一旦国へ戻ります。我らが国王の意志は先にお渡しした書簡のとおりでございますと、王妃様にお伝えください。くれぐれもご無事で、と」
「承知致しました。城門までは彼らが護衛致します。馬の用意も申し付けているので、ご心配なく」
女官の後ろには、二十名ほどの兵士が控えていた。
「助かります。では」
「あなたがたも、ご武運を」
斜面を駆け下りるように、エディたちは城門を目指した。アトゥイーとリンが開いたらしいルートは、既に王妃軍が王子軍から奪還を始めていた。
城門を出たところで、エディはリンと合流を果たした。
「リン――!無事だったんだね!ヨナとサハルは?アトゥイーも、さっきちらっと見えたけど」
エディは笑顔でリンに駆け寄ると、辺りを見回した。
「……ヨナとサハルは、地下の隠し通路で市街に出ているはずだ……彼が案内してくれる」
リンがイランを紹介する。
「ありがとうございます!」
エディがイランに頭を下げたので、イランはうろたえた。
「いやいや、礼は無事に会えてからにしましょうや、ね?」
イランの言葉に、エディは力強く頷く。
「で、アトゥイーは?先に行ってるのか?」
エディがリンを振り返った。リンは先程からずっと複雑な表情のまま、言いにくそうに口を開いた。
「アトゥイーは……連れ去られた」
「なん……だって……?」
エディの顔から笑顔が消えた。
「どこへ――?何故!?だってさっき、一緒にいたじゃないか!!」
エディがリンの肩を掴んで揺さぶる。
「なんで……なんでだよ!!!アトゥイーーーーーっ!!!」
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