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第五章 恋情編
オリーブの葉陰で☆
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塔から出ると、真昼の太陽が眩しい。壁一枚隔てた中の陰惨さが嘘のようだ。
丁度、午後の訓練にでも向かうのか、アトゥイーが後宮から出てきたところだった。
マルスはその腕を掴んで引き止める。
「マルス様!」
驚いたアトゥイーは、それでも少し嬉しそうな顔をした。マルスは何も言わずにアトゥイーを塔の陰に引っ張り込んだ。
強い日差しがくっきりと影を作っている。塔と外塀の間の暗がりで、マルスはアトゥイーに口づけした。
オリーブの葉陰が、表を行き交う人々から二人を隠している。
「……あの、陛下、どうか……されました?」
マルスは答えないままにアトゥイーを掻き抱いた。
凶暴な感情がどす黒く沸き起こってくるのを感じる。分厚い壁の向こうでは、姫の泣き叫ぶ声が響いていることだろう。それはもちろん、外までは聞こえてはこない。
マルスは再びアトゥイーの唇に喰らいついた。舌を差し入れ、奥まで貪る。苛立ちにまかせて、乱暴に服の中に手を差し入れて胸を揉みしだく。
「……や……っ、マルスさま、こんな場所で……っ」
アトゥイーは面食らって、強引に絡みついてくる腕から逃れようとした。マルスの動きが止まった。
「……すまん。忘れてくれ」
アトゥイーの肩に顔をうずめたまま、マルスは言った。
「……マルスさま?」
息が荒い。こんなマルスは見たことがない。アトゥイーはそっと、その銀の髪を梳いた。
「マルスさま……」
俯いた頭を優しく撫でる。ふと、アトゥイーはマルスの硬くそそり勃った場所に触れた。
薄暗い塔の陰、オリーブの茂みに遮られて風も届かない。
アトゥイーはその細い指を細やかに蠢かして愛撫を始めた。
「……っく」
切れるような眉を艶っぽく歪め、マルスが熱い吐息を吐く。その顔をもっと見ていたくて、アトゥイーは衣の中にするりと手を差し入れて指を絡ませる。
「……っ……」
なぜそんなことをしようという気になったのか、後から考えてもどうしてもわからない。
アトゥイーは、塔の外壁に寄り掛かったマルスの前に跪き、長衣の間に顔をうずめてそれを口に含んだ。マルスがアトゥイーの頭に片手を添える。その意図を素直に汲み取って、アトゥイーはゆっくりと顔を前後させる。
「……っ、ハァッ……」
マルスの息遣いが、すぐ耳元にあるように聞こえてくる。
その一方で、十歩も離れていないところから、王宮の中を忙しく行き来する人々の声がする。それはくっきりと空間を区切った塔の影によって分断された別の世界のようだった。
舌をからめて、啜り上げる。毎夜アトゥイーを貫いているそれは、口の中に収まりきらないほど巨きく膨らんでいる。アトゥイーはそれを喉の奥深くまで飲み込んだ。異物を押し戻そうとする蠕動と貪欲に脈打つ陰茎とがせめぎ合う。
マルスはたまらず両手でアトゥイーの頭を掴んだ。咽頭を擦り上げられ、気道を塞がれて、苦しさのあまりアトゥイーの目尻に涙が滲む。
「……ぐぷっ……」
数回、思い切り深く喉奥を突き上げられたかと思うと、熱い奔流が注ぎ込まれた。それは舌よりもずっと奥だったので、味を感じる間もなくまっすぐに体内へと落ちていった。
「――愛している……ファーリア」
丁度、午後の訓練にでも向かうのか、アトゥイーが後宮から出てきたところだった。
マルスはその腕を掴んで引き止める。
「マルス様!」
驚いたアトゥイーは、それでも少し嬉しそうな顔をした。マルスは何も言わずにアトゥイーを塔の陰に引っ張り込んだ。
強い日差しがくっきりと影を作っている。塔と外塀の間の暗がりで、マルスはアトゥイーに口づけした。
オリーブの葉陰が、表を行き交う人々から二人を隠している。
「……あの、陛下、どうか……されました?」
マルスは答えないままにアトゥイーを掻き抱いた。
凶暴な感情がどす黒く沸き起こってくるのを感じる。分厚い壁の向こうでは、姫の泣き叫ぶ声が響いていることだろう。それはもちろん、外までは聞こえてはこない。
マルスは再びアトゥイーの唇に喰らいついた。舌を差し入れ、奥まで貪る。苛立ちにまかせて、乱暴に服の中に手を差し入れて胸を揉みしだく。
「……や……っ、マルスさま、こんな場所で……っ」
アトゥイーは面食らって、強引に絡みついてくる腕から逃れようとした。マルスの動きが止まった。
「……すまん。忘れてくれ」
アトゥイーの肩に顔をうずめたまま、マルスは言った。
「……マルスさま?」
息が荒い。こんなマルスは見たことがない。アトゥイーはそっと、その銀の髪を梳いた。
「マルスさま……」
俯いた頭を優しく撫でる。ふと、アトゥイーはマルスの硬くそそり勃った場所に触れた。
薄暗い塔の陰、オリーブの茂みに遮られて風も届かない。
アトゥイーはその細い指を細やかに蠢かして愛撫を始めた。
「……っく」
切れるような眉を艶っぽく歪め、マルスが熱い吐息を吐く。その顔をもっと見ていたくて、アトゥイーは衣の中にするりと手を差し入れて指を絡ませる。
「……っ……」
なぜそんなことをしようという気になったのか、後から考えてもどうしてもわからない。
アトゥイーは、塔の外壁に寄り掛かったマルスの前に跪き、長衣の間に顔をうずめてそれを口に含んだ。マルスがアトゥイーの頭に片手を添える。その意図を素直に汲み取って、アトゥイーはゆっくりと顔を前後させる。
「……っ、ハァッ……」
マルスの息遣いが、すぐ耳元にあるように聞こえてくる。
その一方で、十歩も離れていないところから、王宮の中を忙しく行き来する人々の声がする。それはくっきりと空間を区切った塔の影によって分断された別の世界のようだった。
舌をからめて、啜り上げる。毎夜アトゥイーを貫いているそれは、口の中に収まりきらないほど巨きく膨らんでいる。アトゥイーはそれを喉の奥深くまで飲み込んだ。異物を押し戻そうとする蠕動と貪欲に脈打つ陰茎とがせめぎ合う。
マルスはたまらず両手でアトゥイーの頭を掴んだ。咽頭を擦り上げられ、気道を塞がれて、苦しさのあまりアトゥイーの目尻に涙が滲む。
「……ぐぷっ……」
数回、思い切り深く喉奥を突き上げられたかと思うと、熱い奔流が注ぎ込まれた。それは舌よりもずっと奥だったので、味を感じる間もなくまっすぐに体内へと落ちていった。
「――愛している……ファーリア」
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