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第四章 遠征編
アルヴィラ砦の叛徒
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「国王が出陣する!?」
城門の前の広場に、ジェイクの声が響いた。
砂漠街道28ポイント、通称アルヴィラ砦の周囲には、常時、市が立っていた。行き交う旅人で賑わう、七つの道が交差する砂漠の要衝。襲撃から丸一日、砦は戦闘民族の猛攻の前に、ほとんど落ちかけていた。
「望むところじゃないか。色々と手間が省ける」
ユーリは抜き身の剣を右手に提げたまま、左手でぐびりと酒を煽った。逃げる行商人たちが放り出していったものを拾ったのだろうか、その手には酒瓶が握られている。以前はほとんど下戸だったのが、今ではかなりの酒量を飲めるようになっていた。
「馬鹿を言うな。ここは拠点のひとつに過ぎん。拠点を更に増やし仲間を集めて、蜂起はそれからだ!」
ジェイクはユーリの手から酒瓶を取り上げ、勢いに任せて地面に叩きつけた。
「あー、もったいない……」
「お前な、状況わかってるか?国王は軍二千を率いてこっちに向かっている。それに対して、俺たちは二百とちょっとだ。勝てるわけないだろう!」
「その国王を倒せば、早くも目的達成だ。話が早くていいじゃないか」
「お前、性格が変わったな……」
ユーリはあの日から、気付けばいつでも酒を飲んでいるので、言っていることのどこまでが本心なのかわからない。だが確実に、投げやりで破滅的な言動が増えた。それが酔っているせいなのか、それとも別の原因があるのか、一番付き合いの深いジェイクですら測りかねていた。
「アルサーシャにいる仲間は動かせない……ここの近くに散らばっている戦闘民族をかき集めて、千二、三百がいいところか……問題は国王軍が来る前に間に合うか」
「ここでごちゃごちゃ言ったところで味方の数が増えるわけじゃなし、要は目の前の敵を倒せば良いのだろう?将軍だろうが国王だろうが変わらん」
ユーリはそう言い捨てて、剣を手に敵味方が交戦する中へと飛び込んでいった。
「ジェイク」
呼びかけられて振り向くと、ダーナが立っていた。ダーナたち踊り子一座は、あちこちの市場で情報を集めてはジェイクたち反乱軍と連絡を取っていた。
「……ユーリ、なんか変わったね」
「まだ奴と話せないのか?」
ダーナは力なく笑って首を振った。
「話どころか、目も合わせちゃくれないわ。あの子、あれから見つかってないんでしょう?」
「ああ、一度は王都で見つけかけたんだが、だめだったらしい。俺も詳しいことは聞けてないんだ」
「あの様子を見れば、わかるわ。ユーリ、まるで死にたがっているみたい」
「まさか」
ジェイクは無理に笑おうとした。
「あの娘だって死んだと決まったわけじゃないんだ。あいつはちょっと怒っているだけだよ。好きな女を守れなかった自分に腹を立ててるのさ」
「じゃあやっぱり、あたしは許しちゃもらえないな」
ダーナはまた寂しく笑った。
「それはそうと、ここはもうすぐ戦場になるぞ。早く仲間と逃げたほうがいい」
「うん。あたしらも市場がこんな状況じゃ商売にならないしね。明日の朝にでも出発する」
ダーナは争乱で荒れ果てた市場を見回して言った。
「砂漠はどこも乱れてきてるし、一旦王都へでも行くわ。何か連絡することある?」
「助かるよ。王都へ行くなら、これを肉屋のザラに渡してくれ」
ジェイクは懐から紙を出して何事か走り書いた。
「わかった。任しといて」
ダーナは紙を丁寧にしまうと、仲間のいるテントへと戻っていった。
その日、夜になる前に、アルヴィラ砦は反乱軍の手に落ちた。
城門の前の広場に、ジェイクの声が響いた。
砂漠街道28ポイント、通称アルヴィラ砦の周囲には、常時、市が立っていた。行き交う旅人で賑わう、七つの道が交差する砂漠の要衝。襲撃から丸一日、砦は戦闘民族の猛攻の前に、ほとんど落ちかけていた。
「望むところじゃないか。色々と手間が省ける」
ユーリは抜き身の剣を右手に提げたまま、左手でぐびりと酒を煽った。逃げる行商人たちが放り出していったものを拾ったのだろうか、その手には酒瓶が握られている。以前はほとんど下戸だったのが、今ではかなりの酒量を飲めるようになっていた。
「馬鹿を言うな。ここは拠点のひとつに過ぎん。拠点を更に増やし仲間を集めて、蜂起はそれからだ!」
ジェイクはユーリの手から酒瓶を取り上げ、勢いに任せて地面に叩きつけた。
「あー、もったいない……」
「お前な、状況わかってるか?国王は軍二千を率いてこっちに向かっている。それに対して、俺たちは二百とちょっとだ。勝てるわけないだろう!」
「その国王を倒せば、早くも目的達成だ。話が早くていいじゃないか」
「お前、性格が変わったな……」
ユーリはあの日から、気付けばいつでも酒を飲んでいるので、言っていることのどこまでが本心なのかわからない。だが確実に、投げやりで破滅的な言動が増えた。それが酔っているせいなのか、それとも別の原因があるのか、一番付き合いの深いジェイクですら測りかねていた。
「アルサーシャにいる仲間は動かせない……ここの近くに散らばっている戦闘民族をかき集めて、千二、三百がいいところか……問題は国王軍が来る前に間に合うか」
「ここでごちゃごちゃ言ったところで味方の数が増えるわけじゃなし、要は目の前の敵を倒せば良いのだろう?将軍だろうが国王だろうが変わらん」
ユーリはそう言い捨てて、剣を手に敵味方が交戦する中へと飛び込んでいった。
「ジェイク」
呼びかけられて振り向くと、ダーナが立っていた。ダーナたち踊り子一座は、あちこちの市場で情報を集めてはジェイクたち反乱軍と連絡を取っていた。
「……ユーリ、なんか変わったね」
「まだ奴と話せないのか?」
ダーナは力なく笑って首を振った。
「話どころか、目も合わせちゃくれないわ。あの子、あれから見つかってないんでしょう?」
「ああ、一度は王都で見つけかけたんだが、だめだったらしい。俺も詳しいことは聞けてないんだ」
「あの様子を見れば、わかるわ。ユーリ、まるで死にたがっているみたい」
「まさか」
ジェイクは無理に笑おうとした。
「あの娘だって死んだと決まったわけじゃないんだ。あいつはちょっと怒っているだけだよ。好きな女を守れなかった自分に腹を立ててるのさ」
「じゃあやっぱり、あたしは許しちゃもらえないな」
ダーナはまた寂しく笑った。
「それはそうと、ここはもうすぐ戦場になるぞ。早く仲間と逃げたほうがいい」
「うん。あたしらも市場がこんな状況じゃ商売にならないしね。明日の朝にでも出発する」
ダーナは争乱で荒れ果てた市場を見回して言った。
「砂漠はどこも乱れてきてるし、一旦王都へでも行くわ。何か連絡することある?」
「助かるよ。王都へ行くなら、これを肉屋のザラに渡してくれ」
ジェイクは懐から紙を出して何事か走り書いた。
「わかった。任しといて」
ダーナは紙を丁寧にしまうと、仲間のいるテントへと戻っていった。
その日、夜になる前に、アルヴィラ砦は反乱軍の手に落ちた。
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