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OFF 〜desperation
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嫌なものを見てしまった。
家に帰っても待っている人はいないし、ヒマで、退屈で、何か楽しいことはないかしらと思うけれど特に何も起きず、ドラッグストアで化粧品なんかを眺めながら友達に片っ端から連絡してみたけれど、みんな忙しいみたいで2人に断られて3人目から返事が来なかった時点でもう遊ぶ気も失せて、何も買いたい物がなかったことに気付いて手ぶらでドラッグストアを出たら、ちょうど街では夜が始まったところだった。
最近、土曜日は大抵撮影が入っていた。
一週間の仕事疲れと、土曜の撮影のダメージで、日曜は死んだように眠る。そういうサイクルで過ごしていたのだけど。
久しぶりに撮影のない週末。
飽きるほど寝て起きたらもう夕方近くて、なんとなく外に出たら、見てしまったのだ。
あたしを紙くずのように使い捨てした男が、ちっちゃい丸っこい女と楽しそうに歩いているところを。
それであたしはもう何をする気も起きなくなって、ついでに家にも帰りたくなくなって、あてもなく渋谷の街をうろうろしていたのだ。
ドラッグストアを出て、ふと目についたお店にふらりと入る。カウンターとテーブル席ふたつの小さなお店は、居心地の良さそうな暖かい照明で出迎えてくれた。おひとりさまですか、と聞く店員の話し方も笑顔もごく自然で、はい、と応えたらカウンターに通してくれた。
朝から何も食べていない。まぁ、起きたのがさっきだから当たり前だけど。
カウンターの上にはたくさんのワイングラスがぶら下がって、キラキラと光を放っている。
肉が食べたくて、ビーフシチューとワインを頼んだ。
なんだか最近、すっきりしない。
こないだの撮影で、何を心配したのか、佐伯はあれから仕事を振ってこない。当然、佐伯からの連絡もない。
何も言われないと、かえって何か問題があったのかとモヤモヤ考えてしまう。
挙げ句に今日は、ふられた男も見てしまったし。
(あの彼女と、続いてるんだ……)
冴えない顔と体型の、育ちが良さそうなだけの、冴えない娘だと思ってたけれど。
(笑ってた顔は、可愛かったなぁ……)
彼もこころなしか、あたしと一緒にいるときより楽しそうに見えた。
AVの撮影がない日はヒマでやることがなくて、くさくさした気分をこうしてお酒でごまかしてるあたしより、ずっと素敵な彼女なのかもしれない。
あたしはワインをあおった。
「強いんですね」
唐突に、隣りに座っていた男に声をかけられた。
「……いいえ、それほどでも」
とりあえず返事をする。
「一人でワイン一気飲みなんて、なんかいいことでもあったんですか?」
なんだろう。ナンパかな。
スーツ姿の、同い年か、少し若いくらいの男だ。土曜日にお仕事か。お疲れさまです。って、あたしもたまに土曜に働いてますがね。なんて、心の中でつぶやく。
「どっちかというと、逆です」
あたしは今日起きたよくないことを思い出して、グラスに残ったワインを飲み干した。
「おかわり、ください。何かおすすめを」
かしこまりました、と言って、店員はにっこりと笑った。
何杯飲んだんだろう。
なんだかどんどん苦い思い出がよみがえって、それをワインで押し流していたら、いつの間にかすごくたくさん飲んでしまったような気がする。
時計はもう23時になろうとしている。
「あたし、そろそろ帰らないと」
さっきからスマホをいじっているナンパ男に挨拶して、会計を済ませる。
「あ、僕もそろそろ。お会計お願いします」
ナンパ男はあたしの後をついて店を出た。
外に出たところで、ナンパ男が腕を絡ませてきた。
「お姉さん、もう一軒行きません?明日、お休みでしょ?」
「お休みですけど、電車が」
それにもう結構酔っている。
「実はね、僕の友達が近くで飲んでて、合流するんですよ。面白いやつなんで、お姉さんも一緒に」
「あ、お友達、いるなら、どうぞ。あたしは、駅に……」
酔ってちょっと呂律が怪しい。こんなに酔ったのは久しぶりだ。
「じゃ送っていきますよ」
ナンパ男がやんわりと腕を引くので、あたしは一緒に歩き出した。
ふと気付くと、駅ではない方向に迷い込んでいる。駅は坂の下なのに、坂を登っているなんておかしい。
「あれ……こっち、違うんじゃ」
「合ってますよ。あ、おーい!」
ナンパ男が手を振った先に、もうひとり若い男が立っていた。こちらは私服だ。パーカーを羽織り、キャップを被っている。
「あれ、僕の友達」
あたしの腕を掴む手が、強くなっている。
「……あの、あたし」
友達という男はこちらを見つけて、嗤いながら坂を降りてくる。
二人に両脇を掴まれて、あたしはすぐそばのホテルに連れ込まれた。
「……何、するん、ですか……あたし、電車……電車が」
頭がぐらぐらする。なんであたし、こんなところにいるんだろう。
「……お水……」
「ハイ、どーぞォー」
キャップ男が冷蔵庫の水を差し出してくれた。
あたしはそれを半分ほど飲んで、力尽きて床に座り込んでしまった。眠い。
ひとりがあたしの両腕を持ち、もうひとりが両脚を持って、あたしは荷物のようにベッドへと運ばれた。二人がかりで乱暴に服を脱がされる。
「やだ……」
口では抵抗するが、身体がいうことをきかない。なされるがままに素っ裸にされたあたしの上で、二人はじゃんけんしている。
「っしゃ!」
じゃんけんに勝ったほうだろう、起き上がれないあたしを仰向けにして脚を広げ、正常位でペニスを挿れようとしてきた。
「クソっ、濡れてねーし」
「ツバつけろツバ」
負けたほうが横から助言する。
一度ペニスを外して、手に唾を付けてあたしのあそこになすりつけ、また強引に押し付けてくる。
「痛……っ」
濡れていない膣に無理矢理侵入される痛みに、あたしはようやく少しだけ覚醒した。
「やめて!いや!」
両手で相手を押しのけて抵抗する。
「うるせえ、バカ」
キャップ男はあたしの顔をグーで殴った。
「きゃあっ!」
容赦ない痛みに、あたしはすぐに戦意喪失した。どっちにしろ、両手首をがっちりと握られ、全体重をかけて身体を抑え込まれているので、いくらもがいても逃れられない。
苦痛を少しでも和らげようと、痛みから逃れるように腰をずらしていたら、少しずつペニスが中に入っていった。
全部挿入しきると、男は腰を前後に動かした。濡れないまま挿れられた腟口が痛い。押し広げられた股関節が痛い。殴られた頬も、じんじんする。
いろんな痛みに耐えながら、目を硬く閉じて陵辱が過ぎ去るのを待った。
やがて、「う、いく」と言って、男があたしの中に射精した。コンドームなんてつけてくれているわけがない。
火照った膣からどろりと熱い液が流れ出すのを感じる。
「うう……」
内臓ごと吐きそうなほどの嫌悪感。
うつ伏せでショックをやり過ごしていると、今度はそのままお尻を高く持ち上げられた。精液でドロドロのアソコに、二人目のペニスがぬるりと挿入った。
「いやあぁぁ……」
咄嗟に逃げようとしたけど腰をがっしり掴まれていて逃げられない。二人目はそのままズブズブとせわしなくピストンする。
「うっ……うう……」
全然気持ちよくないので、喘ぎ声も出ない。あたしはひたすら終わるのを願って、シーツに噛み付いていた。
「咥えろ」
さっきのキャップ男があたしの顔の前に座り、ペニスを口に突っ込んでくる。
「ウッ」
くさい。
汗と、さっきあたしの中で放出した精液と、あたしの中のすっぱい汁とにまみれて、強烈な臭いを放っている。
咄嗟に顔を背けたら、またバチンと頬を張られた。そして再びあたしの口にペニスを突っ込む。
「ングッ」
あたしは仕方なくそいつのペニスを口に含んだ。
「おいおい、そんなんじゃいけねーんだよォ。ほら、もっとしっかり舐めてー!?」
髪の毛を掴んで、ぐいぐいと喉の奥に押し込まれる。
「うりゃ、うりゃ、うりゃ!」
「んーっ、んんーっ」
顎が痛い。朦朧としてきて、目を開けてすらいられない。
二人は何がそんなにおかしいのか、ゲラゲラと笑いながらあたしを犯し続けた。
あたしは遠ざかる意識の中で、精液が口に溢れたのを感じた。
*****
「……ひでぇな」
ラブホテルのドアを開けると、思わず佐伯は言った。
「警察、呼びますか?」
ドアの外から、支配人が尋ねる。
「いや、ちょっと本人と話してから……ここ、監視カメラは?」
「フロントとエレベーター内です」
「じゃ、何かあったら連絡します」
佐伯はドアを閉めると、室内をざっとスマホで撮った。
*****
「おい、おい、わかるか?」
誰かがおでこを優しくさすっている。
あたしはうっすらと目を開けた。
「あ……ん……佐伯……さん……?」
佐伯はほっとしたように息を吐いた。
「佐伯さん……?どうしてここに」
「どうしてって、お前が電話してきたんだろ。お前、ホテルの名前しか言わねーから、危うく警察呼ばれるところだったぞ」
「あ……」
思い出した。そうだ、あの男二人は気絶したあたしを置いて出てっちゃったんだ。あの男二人に、あたしは――。
「うっ」
あたしはトイレに駆け込んだ。
「おえっ……」
佐伯があたしの背中をさすってくれる。
昨日食べたものはもう消化されて、飲まされた精液はどこかに吸収されて、吐き出せたのは胃液の混じった水だけだった。それでもいつまでもあの臭いが喉の奥にこびりついている気がして、あたしはしばらく何も出ないのに吐き続けた。
「……ごめんなさい、あたし、お金足りなくなっちゃって、ホテル代」
「ああ、それはもう払った。出よう」
佐伯についてホテルを出て、タクシーに乗る。
数分後、タクシーはシティホテルの車寄せに停まった。
広々としたホテルの窓からは、朝の陽光が差し込んでいた。眼下には新宿御苑が広がっている。
「何があったんだ?って、無理して言わなくてもいいけど」
ツインのベッドにあたしと向かい合わせに腰掛けて、佐伯が訊いた。
「……ちょっと、酷い目に遭っちゃった……」
あたしはそれだけ言って、佐伯から目をそらした。なんかまともに佐伯の顔が見れない。
「……あはは。なんか飲みすぎちゃって、自業自得かな」
笑ってごまかそうとしたけど、うまく笑えない。
佐伯はため息をついた。
「まあ、何があったか想像はつくけどな」
警察に届けるか、と佐伯に聞かれたけど、あたしは首を振った。
なんだかもうどうでもよくなってしまっていた。
「じゃあシャワー浴びてこい。一人で大丈夫か?」
「うん」
いい匂いのする石鹸で全身を洗い流して、ふかふかのタオルに包まれる。
気持ちいい。
お風呂からあがると、佐伯があたしの頬を見て言った。
「しかし、ひでぇな。これ、もらってきたから冷やしとけ」
保冷剤をタオルでくるんだものを渡される。殴られたところが痣になっていた。
「それが治まるまでは撮れないな」
「……ごめんなさい……」
佐伯はまたため息をついた。
「お前な、ちょっとは自覚しろよ。無防備すぎるんだよ」
「いいんだ、あたしなんか……どうなっても……」
眠気が襲ってくる。もう限界。
真っ白なシーツが、さらさらと冷たくて気持ちいい。
あたしはすうっと眠りに落ちていった。
佐伯の手が、あたしの頭を優しく撫でていた。
家に帰っても待っている人はいないし、ヒマで、退屈で、何か楽しいことはないかしらと思うけれど特に何も起きず、ドラッグストアで化粧品なんかを眺めながら友達に片っ端から連絡してみたけれど、みんな忙しいみたいで2人に断られて3人目から返事が来なかった時点でもう遊ぶ気も失せて、何も買いたい物がなかったことに気付いて手ぶらでドラッグストアを出たら、ちょうど街では夜が始まったところだった。
最近、土曜日は大抵撮影が入っていた。
一週間の仕事疲れと、土曜の撮影のダメージで、日曜は死んだように眠る。そういうサイクルで過ごしていたのだけど。
久しぶりに撮影のない週末。
飽きるほど寝て起きたらもう夕方近くて、なんとなく外に出たら、見てしまったのだ。
あたしを紙くずのように使い捨てした男が、ちっちゃい丸っこい女と楽しそうに歩いているところを。
それであたしはもう何をする気も起きなくなって、ついでに家にも帰りたくなくなって、あてもなく渋谷の街をうろうろしていたのだ。
ドラッグストアを出て、ふと目についたお店にふらりと入る。カウンターとテーブル席ふたつの小さなお店は、居心地の良さそうな暖かい照明で出迎えてくれた。おひとりさまですか、と聞く店員の話し方も笑顔もごく自然で、はい、と応えたらカウンターに通してくれた。
朝から何も食べていない。まぁ、起きたのがさっきだから当たり前だけど。
カウンターの上にはたくさんのワイングラスがぶら下がって、キラキラと光を放っている。
肉が食べたくて、ビーフシチューとワインを頼んだ。
なんだか最近、すっきりしない。
こないだの撮影で、何を心配したのか、佐伯はあれから仕事を振ってこない。当然、佐伯からの連絡もない。
何も言われないと、かえって何か問題があったのかとモヤモヤ考えてしまう。
挙げ句に今日は、ふられた男も見てしまったし。
(あの彼女と、続いてるんだ……)
冴えない顔と体型の、育ちが良さそうなだけの、冴えない娘だと思ってたけれど。
(笑ってた顔は、可愛かったなぁ……)
彼もこころなしか、あたしと一緒にいるときより楽しそうに見えた。
AVの撮影がない日はヒマでやることがなくて、くさくさした気分をこうしてお酒でごまかしてるあたしより、ずっと素敵な彼女なのかもしれない。
あたしはワインをあおった。
「強いんですね」
唐突に、隣りに座っていた男に声をかけられた。
「……いいえ、それほどでも」
とりあえず返事をする。
「一人でワイン一気飲みなんて、なんかいいことでもあったんですか?」
なんだろう。ナンパかな。
スーツ姿の、同い年か、少し若いくらいの男だ。土曜日にお仕事か。お疲れさまです。って、あたしもたまに土曜に働いてますがね。なんて、心の中でつぶやく。
「どっちかというと、逆です」
あたしは今日起きたよくないことを思い出して、グラスに残ったワインを飲み干した。
「おかわり、ください。何かおすすめを」
かしこまりました、と言って、店員はにっこりと笑った。
何杯飲んだんだろう。
なんだかどんどん苦い思い出がよみがえって、それをワインで押し流していたら、いつの間にかすごくたくさん飲んでしまったような気がする。
時計はもう23時になろうとしている。
「あたし、そろそろ帰らないと」
さっきからスマホをいじっているナンパ男に挨拶して、会計を済ませる。
「あ、僕もそろそろ。お会計お願いします」
ナンパ男はあたしの後をついて店を出た。
外に出たところで、ナンパ男が腕を絡ませてきた。
「お姉さん、もう一軒行きません?明日、お休みでしょ?」
「お休みですけど、電車が」
それにもう結構酔っている。
「実はね、僕の友達が近くで飲んでて、合流するんですよ。面白いやつなんで、お姉さんも一緒に」
「あ、お友達、いるなら、どうぞ。あたしは、駅に……」
酔ってちょっと呂律が怪しい。こんなに酔ったのは久しぶりだ。
「じゃ送っていきますよ」
ナンパ男がやんわりと腕を引くので、あたしは一緒に歩き出した。
ふと気付くと、駅ではない方向に迷い込んでいる。駅は坂の下なのに、坂を登っているなんておかしい。
「あれ……こっち、違うんじゃ」
「合ってますよ。あ、おーい!」
ナンパ男が手を振った先に、もうひとり若い男が立っていた。こちらは私服だ。パーカーを羽織り、キャップを被っている。
「あれ、僕の友達」
あたしの腕を掴む手が、強くなっている。
「……あの、あたし」
友達という男はこちらを見つけて、嗤いながら坂を降りてくる。
二人に両脇を掴まれて、あたしはすぐそばのホテルに連れ込まれた。
「……何、するん、ですか……あたし、電車……電車が」
頭がぐらぐらする。なんであたし、こんなところにいるんだろう。
「……お水……」
「ハイ、どーぞォー」
キャップ男が冷蔵庫の水を差し出してくれた。
あたしはそれを半分ほど飲んで、力尽きて床に座り込んでしまった。眠い。
ひとりがあたしの両腕を持ち、もうひとりが両脚を持って、あたしは荷物のようにベッドへと運ばれた。二人がかりで乱暴に服を脱がされる。
「やだ……」
口では抵抗するが、身体がいうことをきかない。なされるがままに素っ裸にされたあたしの上で、二人はじゃんけんしている。
「っしゃ!」
じゃんけんに勝ったほうだろう、起き上がれないあたしを仰向けにして脚を広げ、正常位でペニスを挿れようとしてきた。
「クソっ、濡れてねーし」
「ツバつけろツバ」
負けたほうが横から助言する。
一度ペニスを外して、手に唾を付けてあたしのあそこになすりつけ、また強引に押し付けてくる。
「痛……っ」
濡れていない膣に無理矢理侵入される痛みに、あたしはようやく少しだけ覚醒した。
「やめて!いや!」
両手で相手を押しのけて抵抗する。
「うるせえ、バカ」
キャップ男はあたしの顔をグーで殴った。
「きゃあっ!」
容赦ない痛みに、あたしはすぐに戦意喪失した。どっちにしろ、両手首をがっちりと握られ、全体重をかけて身体を抑え込まれているので、いくらもがいても逃れられない。
苦痛を少しでも和らげようと、痛みから逃れるように腰をずらしていたら、少しずつペニスが中に入っていった。
全部挿入しきると、男は腰を前後に動かした。濡れないまま挿れられた腟口が痛い。押し広げられた股関節が痛い。殴られた頬も、じんじんする。
いろんな痛みに耐えながら、目を硬く閉じて陵辱が過ぎ去るのを待った。
やがて、「う、いく」と言って、男があたしの中に射精した。コンドームなんてつけてくれているわけがない。
火照った膣からどろりと熱い液が流れ出すのを感じる。
「うう……」
内臓ごと吐きそうなほどの嫌悪感。
うつ伏せでショックをやり過ごしていると、今度はそのままお尻を高く持ち上げられた。精液でドロドロのアソコに、二人目のペニスがぬるりと挿入った。
「いやあぁぁ……」
咄嗟に逃げようとしたけど腰をがっしり掴まれていて逃げられない。二人目はそのままズブズブとせわしなくピストンする。
「うっ……うう……」
全然気持ちよくないので、喘ぎ声も出ない。あたしはひたすら終わるのを願って、シーツに噛み付いていた。
「咥えろ」
さっきのキャップ男があたしの顔の前に座り、ペニスを口に突っ込んでくる。
「ウッ」
くさい。
汗と、さっきあたしの中で放出した精液と、あたしの中のすっぱい汁とにまみれて、強烈な臭いを放っている。
咄嗟に顔を背けたら、またバチンと頬を張られた。そして再びあたしの口にペニスを突っ込む。
「ングッ」
あたしは仕方なくそいつのペニスを口に含んだ。
「おいおい、そんなんじゃいけねーんだよォ。ほら、もっとしっかり舐めてー!?」
髪の毛を掴んで、ぐいぐいと喉の奥に押し込まれる。
「うりゃ、うりゃ、うりゃ!」
「んーっ、んんーっ」
顎が痛い。朦朧としてきて、目を開けてすらいられない。
二人は何がそんなにおかしいのか、ゲラゲラと笑いながらあたしを犯し続けた。
あたしは遠ざかる意識の中で、精液が口に溢れたのを感じた。
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「……ひでぇな」
ラブホテルのドアを開けると、思わず佐伯は言った。
「警察、呼びますか?」
ドアの外から、支配人が尋ねる。
「いや、ちょっと本人と話してから……ここ、監視カメラは?」
「フロントとエレベーター内です」
「じゃ、何かあったら連絡します」
佐伯はドアを閉めると、室内をざっとスマホで撮った。
*****
「おい、おい、わかるか?」
誰かがおでこを優しくさすっている。
あたしはうっすらと目を開けた。
「あ……ん……佐伯……さん……?」
佐伯はほっとしたように息を吐いた。
「佐伯さん……?どうしてここに」
「どうしてって、お前が電話してきたんだろ。お前、ホテルの名前しか言わねーから、危うく警察呼ばれるところだったぞ」
「あ……」
思い出した。そうだ、あの男二人は気絶したあたしを置いて出てっちゃったんだ。あの男二人に、あたしは――。
「うっ」
あたしはトイレに駆け込んだ。
「おえっ……」
佐伯があたしの背中をさすってくれる。
昨日食べたものはもう消化されて、飲まされた精液はどこかに吸収されて、吐き出せたのは胃液の混じった水だけだった。それでもいつまでもあの臭いが喉の奥にこびりついている気がして、あたしはしばらく何も出ないのに吐き続けた。
「……ごめんなさい、あたし、お金足りなくなっちゃって、ホテル代」
「ああ、それはもう払った。出よう」
佐伯についてホテルを出て、タクシーに乗る。
数分後、タクシーはシティホテルの車寄せに停まった。
広々としたホテルの窓からは、朝の陽光が差し込んでいた。眼下には新宿御苑が広がっている。
「何があったんだ?って、無理して言わなくてもいいけど」
ツインのベッドにあたしと向かい合わせに腰掛けて、佐伯が訊いた。
「……ちょっと、酷い目に遭っちゃった……」
あたしはそれだけ言って、佐伯から目をそらした。なんかまともに佐伯の顔が見れない。
「……あはは。なんか飲みすぎちゃって、自業自得かな」
笑ってごまかそうとしたけど、うまく笑えない。
佐伯はため息をついた。
「まあ、何があったか想像はつくけどな」
警察に届けるか、と佐伯に聞かれたけど、あたしは首を振った。
なんだかもうどうでもよくなってしまっていた。
「じゃあシャワー浴びてこい。一人で大丈夫か?」
「うん」
いい匂いのする石鹸で全身を洗い流して、ふかふかのタオルに包まれる。
気持ちいい。
お風呂からあがると、佐伯があたしの頬を見て言った。
「しかし、ひでぇな。これ、もらってきたから冷やしとけ」
保冷剤をタオルでくるんだものを渡される。殴られたところが痣になっていた。
「それが治まるまでは撮れないな」
「……ごめんなさい……」
佐伯はまたため息をついた。
「お前な、ちょっとは自覚しろよ。無防備すぎるんだよ」
「いいんだ、あたしなんか……どうなっても……」
眠気が襲ってくる。もう限界。
真っ白なシーツが、さらさらと冷たくて気持ちいい。
あたしはすうっと眠りに落ちていった。
佐伯の手が、あたしの頭を優しく撫でていた。
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