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お仕事開始
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私は一目散に、魔塔からアルテ聖教会のレーナお姉様の部屋に戻った。
その部屋にレーナお姉様が待ち構えていた。
「で、どうだったの? アメリア」
「どうって、最悪だよ」
「やっぱりクビにされたのね」
「クビには、されなかったよ」
「まぁ。すごいじゃない、アメリア。びっくりだわ」
「何度も出ていけって言われたけどね。ご機嫌取ったら、なんとか働けることになったよ」
「だったら、何が最悪なの?」
私はレーナお姉様に、テオバルト様に紅茶を捨てられた件を話した。
「アメリアは、雑だものね」
「丁寧に淹れたつもりだけど」
「教会に図書館も併設してあるから、そこで紅茶の淹れ方の本でも借りてきなさい。よく勉強することね」
「うん。そうするよ。あっ、あと洋服貸してくれない? こんなヒラヒラした服じゃダメだってさ」
「確かにその恰好は……、仕事中には邪魔よね」
「どこが? 普通にかわいい服だと思うけど」
「リボンとか、フリルとか沢山ついていて、常に揺れている感じが邪魔よね。それに、テオバルトには刺激が強すぎるんじゃないかしら。その女性特有のラインを強調する感じがね」
「ふーん。そっか。働くってなんか色々大変だね。あとね、実はね、テオバルト様にレーナお姉様がイザベラ様のこと知りたがっているって言っちゃった」
「そんなことだろうと思ったわ。テオバルトもバカじゃないから、それくらい察したでしょうしね」
「でも、妹の情報を漏らしていいって言ってたけど、変だよね」
「まあ、あの家族は変なのよ」
「ふーーん」
翌日、私は姉から借りた白いブラウスと紺のロングスカート着て魔塔に出向いた。
ボタン付きのブラウスなんて、田舎には無いが、服装の最先端を行く都では流行っている。
そんな流行りもののブラウスだけど、ヒラヒラしていないし、カッチリしているからテオバルト様も文句は言わないはず。
それに昨日、紅茶の淹れ方を勉強したから、少しはテオバルト様に認めて貰えるかもしれない。
私は始業時間より、かなり早くテオバルト様の部屋に入り、レーナお姉様から拝借したランプを灯した。
元からあるロウソクだけだと、どうしても薄暗いから。
私はそのランプの明かりを頼りに、本を多少整理し、自分の机を確保した。
私の机は、テオバルト様の机の斜め横に位置し、配置的にも助手ぽい。
仕上げに、可愛らしい小さなコップに水を汲み、花を活け、机に飾った。
ちなみにその花もレーナお姉様宛に贈られた花束から、数輪拝借させてもらったものだ。
そうこうしている間に、テオバルト様がいきなり部屋中央に現れた。
転移という魔法だろう。
なんて便利な魔法だ、うらやましい。
「おはようございます。テオバルト様」
私は満面の笑顔で、元気よくテオバルト様に挨拶した。
どうも前世でチアダンスをしていたせいか、挨拶とかが必要以上に元気いっぱいになってしまう。
「はぁ。朝から煩いな」
テオバルト様は不機嫌そう。
それとも、いつも不機嫌なのだろうか。
「すみません。もっと落着いて話すように心がけます。それで私の机をここに用意させて頂きましたが、いいですか?」
テオバルト様はチラッと私の机と、机に飾られた花を見た。
花を見たテオバルト様は、一瞬目を細めた。
「構わない」
「あの、それでは、早速お茶を淹れますね。本で勉強したので昨日より美味しいと思います」
私はテオバルト様の返事を待たずに、隣の部屋の台所に行った。
昨日淹れた時にはしなかったポットとカップを温め、蒸らした。
出来上がった紅茶は、甘い匂いが漂い、美しい褐色の色をしている。
「どうぞ。テオバルト様」
「別に今飲みたい気分じゃないけどな」
そう言いつつ、テオバルト様は紅茶を一口、口に運ぶ。
どうやら今回は捨てられないようだ。
良かった。
「それで、どんなお仕事をお手伝いすればいいですか?」
「その辺に散らかっている本を全て本棚に入れてもらおうか」
その辺にある本は、1000冊以上ありそう……。
これは、大仕事になりそうだ。
私は、作業に取り掛かるために、髪を束ね一つにまとめた。
その束ねている間、妙にテオバルト様の視線が突き刺さる。
もしかして、ポニーテールがいけないのだろうか。
ポニーテールって体が動くたびに、ゆらゆら揺れるから、視界に入ると邪魔に感じるのかもしれない。
それとも私のうなじにくぎ付けだったりして……、いや、さすがに自意識過剰か。
まあでも、テオバルト様の視線は気にせずに、作業してしまおう。
そして夢中になって作業していたら、気づいた時には、もうお昼前だった。
「テオバルト様、もうこんな時間なんですねー」
「昼休みは適当に取って構わない」
「はい。わかりました。テオバルト様はお昼ごはんどうしますか? 食堂から何か持ってきましょうか?」
「いや、適当に取るから気にしなくていい」
「はい。わかりました」
私は一旦自分の机に戻り、昼食が入っているバッグを引き出しから取り出した。
昼食は裏庭で頂くつもりだ。
こんな地下のジメジメしたところでは、気分転換なんてできない。
それに節約するために私の昼食はパン一つだから、こんなわびしすぎる昼食をテオバルト様に見られたくない。
実はこのパン一つも、レーナお姉様の朝食からくすねてきたもの。
ああ、早くお金が欲しい。
裏庭に行くと噴水があり、その噴水の水が光に反射してキラキラ輝いている。
ベンチも何個もあり、ガゼボまである。
けれど、そんな素敵な裏庭なのに、私以外は誰一人していない。
魔塔の人は、みんな引きこもりなのだろうか。
誰かいたら友達になりたかったのに。
昼休憩が終わり、地下の部屋に戻ると、テオバルト様は真剣に何かを書いている。
私は邪魔しないように、そっと自分の机に座り、カバンを再度引き出しに入れた。
午後の仕事に取り掛かる前に、私は、座ったまま軽くストレッチをすることにした。
重い本を沢山持ったせいで、肩がガチガチだったから。
頭を回し、腕の筋を伸ばし、最後に体の後ろで手を組み、肩甲骨を寄せ、胸を張った。
その瞬間、ブチッという嫌な音がした。
同時に、勢いよく私のブラウスからボタンが飛んだ。
そのボタンはビューンっと、一直線に、テオバルト様の額に直撃した。
「ひぃっ、すっ、すっ、すみませんっっ」
テオバルト様は驚愕の表情をし、私の胸をガン見した。
「痛かったですか? 大丈夫ですか? このブラウス、姉から借りたからサイズが合っていなかったみたいです。本当にごめんなさい」
私は立ち上がり、ボタンを拾うため、テオバルト様に近づいた。
「前をしめろっ」
テオバルト様は声を上げ、怒鳴りつけた。
「すみませんっ。すぐしめます」
私は片手で開いているブラウスをギュッと掴み、はだけていた胸を仕舞い込んだ。
もう一方の手で、テオバルト様の机の上に落ちていたボタンを拾い上げる。
愛想笑いしつつ……。
「上着か何か持ってきているのか?」
テオバルト様は視線を胸からずらし、頭を抱え俯いてしまった。
「今日は暖かかったので、何も持ってきていません。でも、大丈夫です。この部屋暗いですし、後ろを向いて作業すれば問題ないですよね」
「ふざけるなっ!」
テオバルト様は、そう怒鳴ると立ち上がり、突如消えてしまった。
私のこと、見たくないほど怒ってしまったのだろうか……。
でも、ボタンが一つだけ取れただけだし、そこまで胸が露出したわけでもないのに……。
それにしても、これからどうするべきか。
着替えに戻るべきか、それともこのまま定時まで仕事をするべきか、悩む。
そう悩んでいるとき、ふと、テオバルト様の机に置かれた紅茶のカップが目に入った。
あれ、全然飲んでいない。
テオバルト様は一口飲んだだけで、あとは飲んでいないんだ。
なぜだろう。
もしかして、激マズかったのだろうか。
これは味見してみる必要がある。
私は、キョロキョロと辺りを見回し、テオバルト様がいないことを再度確認した。
そして、テオバルト様が口を付けたカップを手に取り、一口飲んでみた。
その瞬間、あろうことか、テオバルト様が目の前に現れた。
「ブハッ、うっ、くっっ、げほっ、げほっ」
びっくりして、私はむせてしまった。
けど、私以上にテオバルト様の方がびっくりしている。
「何してるっ」
「ああ、げほっ、そのっ、味見をしようとっ」
「味見なら、俺のカップではなく、自分のカップでしろ」
「すみませんっ。つい……」
「ついじゃない。いい加減にしろっ」
テオバルト様は顔を真っ赤にして怒っている。
別に間接キスをしようとしたわけじゃないのに。
あ、でもこれってちゃんと否定して誤解を解いておいたほうがいいのかな。
いや、変なこと言うと、もっと怒りそうだ。
「本当に、すみません」
「っ、それと、前をしめろっ。何度も言わすな」
テオバルト様はそう言うと、手に持っていた物を私に投げつけた。
それは、シャツのようだ。
「これは? テオバルト様のシャツですか?」
「そうだ。それを着てもう帰れ」
「でも、就業時間までまだありますし……、せっかくテオバルト様がシャツを持ってきて頂いたので、これ着てお仕事再開します」
「いいから、帰れっ。命令だ」
「わっ、わかりました。帰ります。このシャツ、洗ってお返ししますね」
「いい、返さなくていい」
「えっ、でもすごく高そうなシャツですけど」
「それでもかまわない。それともう二度と前開きの服を着てくるな」
「それですと私、ヒラヒラした服装しか持っていませんが、いいでしょうか?」
「服買うお金もないのか。仕方がないな、あまり変な服は着てくるなよ」
「はい。わかりました」
ほんと、テオバルト様ってうるさい男だなっ。
顔はイケメンなのに、性格がこれじゃあ、絶対にモテない。
その部屋にレーナお姉様が待ち構えていた。
「で、どうだったの? アメリア」
「どうって、最悪だよ」
「やっぱりクビにされたのね」
「クビには、されなかったよ」
「まぁ。すごいじゃない、アメリア。びっくりだわ」
「何度も出ていけって言われたけどね。ご機嫌取ったら、なんとか働けることになったよ」
「だったら、何が最悪なの?」
私はレーナお姉様に、テオバルト様に紅茶を捨てられた件を話した。
「アメリアは、雑だものね」
「丁寧に淹れたつもりだけど」
「教会に図書館も併設してあるから、そこで紅茶の淹れ方の本でも借りてきなさい。よく勉強することね」
「うん。そうするよ。あっ、あと洋服貸してくれない? こんなヒラヒラした服じゃダメだってさ」
「確かにその恰好は……、仕事中には邪魔よね」
「どこが? 普通にかわいい服だと思うけど」
「リボンとか、フリルとか沢山ついていて、常に揺れている感じが邪魔よね。それに、テオバルトには刺激が強すぎるんじゃないかしら。その女性特有のラインを強調する感じがね」
「ふーん。そっか。働くってなんか色々大変だね。あとね、実はね、テオバルト様にレーナお姉様がイザベラ様のこと知りたがっているって言っちゃった」
「そんなことだろうと思ったわ。テオバルトもバカじゃないから、それくらい察したでしょうしね」
「でも、妹の情報を漏らしていいって言ってたけど、変だよね」
「まあ、あの家族は変なのよ」
「ふーーん」
翌日、私は姉から借りた白いブラウスと紺のロングスカート着て魔塔に出向いた。
ボタン付きのブラウスなんて、田舎には無いが、服装の最先端を行く都では流行っている。
そんな流行りもののブラウスだけど、ヒラヒラしていないし、カッチリしているからテオバルト様も文句は言わないはず。
それに昨日、紅茶の淹れ方を勉強したから、少しはテオバルト様に認めて貰えるかもしれない。
私は始業時間より、かなり早くテオバルト様の部屋に入り、レーナお姉様から拝借したランプを灯した。
元からあるロウソクだけだと、どうしても薄暗いから。
私はそのランプの明かりを頼りに、本を多少整理し、自分の机を確保した。
私の机は、テオバルト様の机の斜め横に位置し、配置的にも助手ぽい。
仕上げに、可愛らしい小さなコップに水を汲み、花を活け、机に飾った。
ちなみにその花もレーナお姉様宛に贈られた花束から、数輪拝借させてもらったものだ。
そうこうしている間に、テオバルト様がいきなり部屋中央に現れた。
転移という魔法だろう。
なんて便利な魔法だ、うらやましい。
「おはようございます。テオバルト様」
私は満面の笑顔で、元気よくテオバルト様に挨拶した。
どうも前世でチアダンスをしていたせいか、挨拶とかが必要以上に元気いっぱいになってしまう。
「はぁ。朝から煩いな」
テオバルト様は不機嫌そう。
それとも、いつも不機嫌なのだろうか。
「すみません。もっと落着いて話すように心がけます。それで私の机をここに用意させて頂きましたが、いいですか?」
テオバルト様はチラッと私の机と、机に飾られた花を見た。
花を見たテオバルト様は、一瞬目を細めた。
「構わない」
「あの、それでは、早速お茶を淹れますね。本で勉強したので昨日より美味しいと思います」
私はテオバルト様の返事を待たずに、隣の部屋の台所に行った。
昨日淹れた時にはしなかったポットとカップを温め、蒸らした。
出来上がった紅茶は、甘い匂いが漂い、美しい褐色の色をしている。
「どうぞ。テオバルト様」
「別に今飲みたい気分じゃないけどな」
そう言いつつ、テオバルト様は紅茶を一口、口に運ぶ。
どうやら今回は捨てられないようだ。
良かった。
「それで、どんなお仕事をお手伝いすればいいですか?」
「その辺に散らかっている本を全て本棚に入れてもらおうか」
その辺にある本は、1000冊以上ありそう……。
これは、大仕事になりそうだ。
私は、作業に取り掛かるために、髪を束ね一つにまとめた。
その束ねている間、妙にテオバルト様の視線が突き刺さる。
もしかして、ポニーテールがいけないのだろうか。
ポニーテールって体が動くたびに、ゆらゆら揺れるから、視界に入ると邪魔に感じるのかもしれない。
それとも私のうなじにくぎ付けだったりして……、いや、さすがに自意識過剰か。
まあでも、テオバルト様の視線は気にせずに、作業してしまおう。
そして夢中になって作業していたら、気づいた時には、もうお昼前だった。
「テオバルト様、もうこんな時間なんですねー」
「昼休みは適当に取って構わない」
「はい。わかりました。テオバルト様はお昼ごはんどうしますか? 食堂から何か持ってきましょうか?」
「いや、適当に取るから気にしなくていい」
「はい。わかりました」
私は一旦自分の机に戻り、昼食が入っているバッグを引き出しから取り出した。
昼食は裏庭で頂くつもりだ。
こんな地下のジメジメしたところでは、気分転換なんてできない。
それに節約するために私の昼食はパン一つだから、こんなわびしすぎる昼食をテオバルト様に見られたくない。
実はこのパン一つも、レーナお姉様の朝食からくすねてきたもの。
ああ、早くお金が欲しい。
裏庭に行くと噴水があり、その噴水の水が光に反射してキラキラ輝いている。
ベンチも何個もあり、ガゼボまである。
けれど、そんな素敵な裏庭なのに、私以外は誰一人していない。
魔塔の人は、みんな引きこもりなのだろうか。
誰かいたら友達になりたかったのに。
昼休憩が終わり、地下の部屋に戻ると、テオバルト様は真剣に何かを書いている。
私は邪魔しないように、そっと自分の机に座り、カバンを再度引き出しに入れた。
午後の仕事に取り掛かる前に、私は、座ったまま軽くストレッチをすることにした。
重い本を沢山持ったせいで、肩がガチガチだったから。
頭を回し、腕の筋を伸ばし、最後に体の後ろで手を組み、肩甲骨を寄せ、胸を張った。
その瞬間、ブチッという嫌な音がした。
同時に、勢いよく私のブラウスからボタンが飛んだ。
そのボタンはビューンっと、一直線に、テオバルト様の額に直撃した。
「ひぃっ、すっ、すっ、すみませんっっ」
テオバルト様は驚愕の表情をし、私の胸をガン見した。
「痛かったですか? 大丈夫ですか? このブラウス、姉から借りたからサイズが合っていなかったみたいです。本当にごめんなさい」
私は立ち上がり、ボタンを拾うため、テオバルト様に近づいた。
「前をしめろっ」
テオバルト様は声を上げ、怒鳴りつけた。
「すみませんっ。すぐしめます」
私は片手で開いているブラウスをギュッと掴み、はだけていた胸を仕舞い込んだ。
もう一方の手で、テオバルト様の机の上に落ちていたボタンを拾い上げる。
愛想笑いしつつ……。
「上着か何か持ってきているのか?」
テオバルト様は視線を胸からずらし、頭を抱え俯いてしまった。
「今日は暖かかったので、何も持ってきていません。でも、大丈夫です。この部屋暗いですし、後ろを向いて作業すれば問題ないですよね」
「ふざけるなっ!」
テオバルト様は、そう怒鳴ると立ち上がり、突如消えてしまった。
私のこと、見たくないほど怒ってしまったのだろうか……。
でも、ボタンが一つだけ取れただけだし、そこまで胸が露出したわけでもないのに……。
それにしても、これからどうするべきか。
着替えに戻るべきか、それともこのまま定時まで仕事をするべきか、悩む。
そう悩んでいるとき、ふと、テオバルト様の机に置かれた紅茶のカップが目に入った。
あれ、全然飲んでいない。
テオバルト様は一口飲んだだけで、あとは飲んでいないんだ。
なぜだろう。
もしかして、激マズかったのだろうか。
これは味見してみる必要がある。
私は、キョロキョロと辺りを見回し、テオバルト様がいないことを再度確認した。
そして、テオバルト様が口を付けたカップを手に取り、一口飲んでみた。
その瞬間、あろうことか、テオバルト様が目の前に現れた。
「ブハッ、うっ、くっっ、げほっ、げほっ」
びっくりして、私はむせてしまった。
けど、私以上にテオバルト様の方がびっくりしている。
「何してるっ」
「ああ、げほっ、そのっ、味見をしようとっ」
「味見なら、俺のカップではなく、自分のカップでしろ」
「すみませんっ。つい……」
「ついじゃない。いい加減にしろっ」
テオバルト様は顔を真っ赤にして怒っている。
別に間接キスをしようとしたわけじゃないのに。
あ、でもこれってちゃんと否定して誤解を解いておいたほうがいいのかな。
いや、変なこと言うと、もっと怒りそうだ。
「本当に、すみません」
「っ、それと、前をしめろっ。何度も言わすな」
テオバルト様はそう言うと、手に持っていた物を私に投げつけた。
それは、シャツのようだ。
「これは? テオバルト様のシャツですか?」
「そうだ。それを着てもう帰れ」
「でも、就業時間までまだありますし……、せっかくテオバルト様がシャツを持ってきて頂いたので、これ着てお仕事再開します」
「いいから、帰れっ。命令だ」
「わっ、わかりました。帰ります。このシャツ、洗ってお返ししますね」
「いい、返さなくていい」
「えっ、でもすごく高そうなシャツですけど」
「それでもかまわない。それともう二度と前開きの服を着てくるな」
「それですと私、ヒラヒラした服装しか持っていませんが、いいでしょうか?」
「服買うお金もないのか。仕方がないな、あまり変な服は着てくるなよ」
「はい。わかりました」
ほんと、テオバルト様ってうるさい男だなっ。
顔はイケメンなのに、性格がこれじゃあ、絶対にモテない。
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