29 / 31
決意(3)
しおりを挟む なるほど。確かにそうかも。
あちらの世界に無いから、僕は魔法を使えないのかもしれない。
でも、確証があるわけではない。
「僕にはわからないよ」
僕の答えに、エニグマは納得した。
「だろうね。使えるのならば理由がわかるかもしれないが、使えないのだからわかるはずがない。これは、聞いた僕が悪かったね」
エニグマは軽く首を横に倒して、すぼめた肩に寄せた。
「では話を元に戻そう。君は事故をきっかけにこちらの世界に転移した。そうだね?」
僕はうなずいた。
「そう。事故で意識を失い、目が覚めたらこちらの世界に転移していたよ」
「そのとき、君の人格は入れ替わった。そうだね?」
やはりそうくるか。
仕方ない。答えるしかない。
「そうだと思う」
僕は最後の抵抗で、少しだけ曖昧な言い方をした。
だが、エニグマはそれを許さなかった。
「うん?その言い方だと確定ではないみたいだけど?」
僕は観念して首を横に振った。
「いや、間違いない。間違いなくそのときに人格が入れ替わった。これでいい?」
エニグマは満足げにうなずいた。
「ああ。今後も出来るだけ発言は正確に頼むよ」
わざとらしく釘を刺された。
嫌味なやつだ。
だが僕はそんなことはおくびにも出さずに答えた。
「ああ、わかったよ」
エニグマはまたも満足げにうなずくと、質問を続けた。
「そのとき現れた別人格は、以前から君の中にいたのかい?」
僕は少しだけ考えた。
「……いや、そのときが初めてだと思う。いや、正確に言うんだったな……ああ、間違いなくそのときが初めてだ」
「ありがとう。では次の質問だが……」
エニグマはそこで言い淀んだ。
そして、少しだけ考えてから言った。
「少し僕からの質問ばかりが続いているけど、構わないかい?」
案外そういうこと気にするんだな。
僕は意外に思いながらもうなずいた。
「構わない。僕も質問するときは矢継ぎ早になるだろうし。気になることはその都度解決したいから」
エニグマは、僕のこの回答を嬉しそうに何度もうなずきながら聞いた。
「それはありがたいし、同感だ。もちろん、君の質問の際も、続けてくれて構わないよ」
「ああ、そうさせてもらうよ」
「では質問に戻るけど、その別人格は何故そのとき出てきたと思う?」
来た。
けど仕方がない。
どうせいずれはこの質問になるだろうし。
僕は覚悟を決めると、ゆっくりと口を開く。
「僕の脳が必要だと判断したんだと思う」
エニグマが目を細める。
「ほう、脳がね……。それは何故かな?」
僕は大きく息を吸い込み、次いでゆっくりと息を吐き出す。
そして気持ちを整えると、ゆっくりと言った。
「僕の心が現実に耐え切れないと脳が判断したんだろう。だから、本来の僕を秘密の部屋に閉じ込め、別人格を生み出したんだろうと思っているよ」
あちらの世界に無いから、僕は魔法を使えないのかもしれない。
でも、確証があるわけではない。
「僕にはわからないよ」
僕の答えに、エニグマは納得した。
「だろうね。使えるのならば理由がわかるかもしれないが、使えないのだからわかるはずがない。これは、聞いた僕が悪かったね」
エニグマは軽く首を横に倒して、すぼめた肩に寄せた。
「では話を元に戻そう。君は事故をきっかけにこちらの世界に転移した。そうだね?」
僕はうなずいた。
「そう。事故で意識を失い、目が覚めたらこちらの世界に転移していたよ」
「そのとき、君の人格は入れ替わった。そうだね?」
やはりそうくるか。
仕方ない。答えるしかない。
「そうだと思う」
僕は最後の抵抗で、少しだけ曖昧な言い方をした。
だが、エニグマはそれを許さなかった。
「うん?その言い方だと確定ではないみたいだけど?」
僕は観念して首を横に振った。
「いや、間違いない。間違いなくそのときに人格が入れ替わった。これでいい?」
エニグマは満足げにうなずいた。
「ああ。今後も出来るだけ発言は正確に頼むよ」
わざとらしく釘を刺された。
嫌味なやつだ。
だが僕はそんなことはおくびにも出さずに答えた。
「ああ、わかったよ」
エニグマはまたも満足げにうなずくと、質問を続けた。
「そのとき現れた別人格は、以前から君の中にいたのかい?」
僕は少しだけ考えた。
「……いや、そのときが初めてだと思う。いや、正確に言うんだったな……ああ、間違いなくそのときが初めてだ」
「ありがとう。では次の質問だが……」
エニグマはそこで言い淀んだ。
そして、少しだけ考えてから言った。
「少し僕からの質問ばかりが続いているけど、構わないかい?」
案外そういうこと気にするんだな。
僕は意外に思いながらもうなずいた。
「構わない。僕も質問するときは矢継ぎ早になるだろうし。気になることはその都度解決したいから」
エニグマは、僕のこの回答を嬉しそうに何度もうなずきながら聞いた。
「それはありがたいし、同感だ。もちろん、君の質問の際も、続けてくれて構わないよ」
「ああ、そうさせてもらうよ」
「では質問に戻るけど、その別人格は何故そのとき出てきたと思う?」
来た。
けど仕方がない。
どうせいずれはこの質問になるだろうし。
僕は覚悟を決めると、ゆっくりと口を開く。
「僕の脳が必要だと判断したんだと思う」
エニグマが目を細める。
「ほう、脳がね……。それは何故かな?」
僕は大きく息を吸い込み、次いでゆっくりと息を吐き出す。
そして気持ちを整えると、ゆっくりと言った。
「僕の心が現実に耐え切れないと脳が判断したんだろう。だから、本来の僕を秘密の部屋に閉じ込め、別人格を生み出したんだろうと思っているよ」
0
お気に入りに追加
363
あなたにおすすめの小説


大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる