【R18】悪魔に魅入られて

夾竹桃

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地下室(1)

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 目が覚めると私は自分の部屋にいて、セルはいなかった。
あんなに激しくHな事したのに、身体が怠くない。
逆に爽快な気分だ。
そう言えば⋯⋯、洋服類は届いたのかな。

 洋服タンスを見ると相変わらず何も無い。
けれど昨日まで無かった扉が部屋の中にある。
私はその扉を開け中に入ると⋯⋯、そこはとても大きなウォーキングクローゼットだった。
そこに、白のワンピースがポツンと一つ掛けてある。
洋服は一つだが靴や鞄、装飾品が数多く陳列してある。
どうやら昨日セルが購入してくれた物のようだ。
他に注文した洋服は数日したら届けられるのだろうか⋯⋯。
ウォーキングクローゼットの棚を開けてみると、これまた先日購入した高級ランジェリーが数多く収納されている。

 私はそのランジェリーと、白のワンピースを早速着た。
やはり高級品だからか、肌触りがとてもいい。

 お腹も空いたし、執事のブレオさんにも言いたいことがあるから、私は一階に行き、ブレオさんを探した。

「御機嫌よう、サーラ様」

 私が一階に行くと、ブレオさんは私のすぐ後ろにいた。

「ブレオさん。昨日の、昨日の画像を消して下さいっ」

「嫌です」

「なっ⋯⋯、あれは私が写っているのでしょう? あんな卑猥な画像を撮影するなんて、犯罪よ」

 我ながら馬鹿な事を言ってしまった。
悪魔連中にとっては犯罪は正義だ。
犯罪を犯してこそ悪魔なのに⋯⋯。

「ええ、卑猥で大変良かったです。良かったら今度一緒に見ませんか?」

「ふざけないでっ。私はセルのものだけど、貴方のものじゃない。だからすぐに画像を消してっ!」

「昨日の撮影はセル様が許可なさいました。ですからセル様から消すように指示されれば消します」

「わかったわ、じゃあセルにお願いするから。セルはどこ?」

「セル様はお出掛けになりました」

「いつ戻るの?」

「わかりません」

「執事なのに⋯⋯。もういいっ」

「大丈夫ですよ、サーラ様。すぐにセル様はお戻りになられると思います。サーラ様のことはいたく気に入っていますから」

って、私がまるでセルに早く会いたいみたいじゃないか。
そんなこと全くないのに。

「別にずっと戻らなくても私は全然、平気です」

「そうでしょうか⋯⋯。それとセル様から伝言です。勝手に自慰をしてイカないようにとのことです」

「わっ、私は、そんなことしないっ」

「それは残念ですね。自慰するところも、またお仕置きされるところもぜひ撮影をしたいと思っていたんです」

「最低っ」

「お褒めの言葉、ありがとうございます」

「っ⋯⋯」

「それはそうと、サーラ様。食事の準備が食堂にて整っています。どうぞ召し上がって下さい」

「ふんっ」

 私はブレオさんの言葉に素直に従うのも嫌だったが、食い意地の方が優ってしまった。
食堂には、暖かい野菜スープ、クロワッサン、ヨーグルト、紅茶と、どれも美味しそう。
食材もそうだが、食器もナプキンも全て一級品に思われる。
セルは、どんだけお金持ちなのだろう。
出掛けたってブレオさんが言っていたけど、もしかしてセルは働いているんだろうか⋯⋯。
そう言えば、私はセルについて知らな過ぎる。
今日は、大学も無いことだし、少し、セルについて調べる事にしよう。

 食事がし終わると、玄関の扉を叩く音が聞こえてきた。
それも激しく玄関の扉を叩いている。

「私は、グレースよ、開けて頂戴!」

 玄関の扉を激しく叩いている人は、かなりヒステリックに声を荒げている。
執事のブレオさんは玄関の扉を開け、その人を招き入れた。

「ブレオ、セルは、セルは何処にいるの?」

 入ってきた人は、怖いくらいの美人だ。
10頭身はあると思われるプロポーションで、青い目で髪はブロンド。
どこかのファッション雑誌から抜け出してきた様な女性だ。
ただ、彼女には、“あれ” が付いている。
”あれ“ とはもちろん霊的な物。
恐らく彼女に纏わりついているのは悪霊だ。

「グレース様、セル様は不在です」

「じゃあ、セルが戻るまで待つわ。セルに会うまで帰らないっ」

「しかし、今、この邸宅は、サーラ様の物でもありますし⋯⋯、サーラ様の許可を頂かない事には難しいですね」

「サーラって、まさかセルの新しい恋人? 何処にいるの?」

「あちらにいます」

 ブっ、ブレオさんめ~。
私に面倒臭い事を押し付けたなっ。
そもそも、私はセルの恋人じゃないし、この邸宅の主人でもない。
せっかく物陰に隠れて、やり過ごそうとしたのに。
あんな気の強そうな美人に対して、何もかも負けている私がどう対処すれば良いのか⋯⋯、全く見当がつかない。
それに、グレースって人の脇には、悪霊が付いているし⋯⋯、怖いんですけど。

「出てきなさいよ。サーラ」

「こっ、こんにちわ。初めまして⋯⋯、サラです」

「あんたが、セルの新しい恋人なの? 信じられない」

 グレースさんは、まるで虫ケラを見るような目で私を見る。

「いえ、恋人じゃないです」

「じゃあ、なんなの?」

「⋯⋯、セルの物でしょうか?」

「もの? 何それ⋯⋯。あぁ、分かったわ。要はあんたはセルのおもちゃって事ね」

「まぁ、そんな所です。ですので、私にもグレースさんがここにていいか判断できません」

「それは、そうよね。おもちゃじゃ、私を追い出すことは出来ないわよね。という事で私はセルが戻るまでここに滞在するから。よろしく、サーラ」

「⋯⋯はい」

「ブレオ、部屋に案内して。なるべく広い部屋がいいわ」

 ブレオさんは、グレースさんを客間へと案内する。
すぐにブレオさんは台所に戻って来たので、私はブレオさんに話しかけた。
ブレオさんには聞きたい事も、言いたい事もある。

「ブレオさんは、グレースさんの事知っているの?」

「ええ、知っています」

「その、グレースさんには付いていたわよね? 変なのが⋯⋯。ブレオさんにも見えましたよね?」

「ええ、見えました」

「ブレオさんも悪魔よね。だったら彼女の付き物、取っ払えますよね?」

「それは、無理ですね」

「どうしてですか?」

「私は弱い悪魔ですからね。弱い悪魔は、セル様のような強い悪魔に寄生して生きて行くんです」

「そうなんですね⋯⋯。それと⋯⋯、その、あの⋯⋯、グレースさんは本当に
セルの元恋人なんですか?」

「はい。そうです」

「愛し合っていたんですか? 二人は⋯⋯」

「その様ですよ。まぁ、人間の愛と、悪魔の愛は同じかわかりませんが」

「そうなの⋯⋯」

 私はセルの物で、グレースさんはセルの恋人か⋯⋯。
そんなこと別にどうだっていい事なのに、何で胸の奥がこう、モヤモヤするんだろう。
セルが私をどう思おうと関係ないのに。

「ちなみに、私もサーラ様の事を愛しています」

「は???」

「サーラ様が、そう、イク瞬間に頬を赤らめ、目をギュッと閉じる表情は、最高に愛おしいです。昨日43回イッた時のサーラ様の表情の画像をこれから印刷しようと思っているんです」

「そっ、そんなことしないで。変態!」

「変態と言われると、興奮してきます。あぁ、勃起してしまいました。良かったらこれからお互いの自慰を見せ合いませんか?」

「最低、最低、ほんと、最低!!!」

 セルも変態だけど、ブレオは、かなりヤバイ変態だ。
悪魔は変態しかいないのだろうか。
本当はブレオさんにもっと色々聞きたかったのに、結局あまり聞けずに、自分の部屋に戻って来てしまった。

 こんな状況なら、まだセルがいた方がいい。
セルなら、グレースについている悪霊を取り払うことができるだろうし。
あと、どれくらいあの悪霊と一緒に過ごさなきゃいけないんだろう⋯⋯、憂鬱だ。
お願いだから、セル、早く戻ってきて!
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