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第1章 反乱軍討伐戦

反乱勃発 02

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 国王夫妻は二人の為にそれなりに改装された船室に通されると、クレール・ヴェルノン大尉が部屋に入ってきて、ひざまずくと国王夫妻に説明を始める。

「国王陛下、及び王妃殿下。緊急事態ゆえに、このような部屋で申し訳ございません。本艦はこれより予てよりの計画通りにソンム星系の惑星ア二アンへと向かいます。それまでの間どうかご辛抱のほどを…。隣の部屋に一緒につれてきた使用人二人が控えており、世話はその者達が行いますのでご安心ください」

 クレールの説明を聞いていた国王は、彼女に質問をする。

「フランの予想通りに、反乱が起こってしまった……。そして、この脱出の手際の良さ…、ヴェルノン大尉…この反乱自体があの子によって、起こるように仕向けられたものではあるまいな…?」

 国王のこの疑問はこれまでの事と、そして今の今状況は鑑みれば当然であり、その疑問はあながち間違えではなかった。

「非才な小官の説明では、国王陛下に誤った解釈をさせてしまう恐れがありますので、フランソワーズ殿下に直接お聞きください」

 クレールは国王の問いかけにそう答えると、敬礼して部屋から出ていった。

 その頃、主星パリスの地上部隊から、国王夫妻が逃亡した報告を受けた反乱軍艦隊司令官エティエヴァン公爵は猛り狂っていた。

「地上部隊の奴らめ、肝心な国王夫妻を逃がすとは何を考えているのだ! 国王夫妻を取り逃がせば、我らは反逆者だぞ!」

 エティエヴァン公爵は、地上部隊の不手際をモニター越しに叱責していると、部下が進言してくる。

「公爵、今はそのような話よりも、逃亡した国王夫妻を全速で追跡致しましょう」
「そうだな。全艦に追撃命令を出せ!」

 部下の意見を聞いたエティエヴァン公爵が命令を出すと、モニターから地上の反乱部隊から切実な通信が送られてくる。

「我々は今、地上の守備部隊に攻められている! 我々を艦に収容してくれ!」

「自分達のミスであろう! せいぜい我らが、貴様たちが取り逃がした国王夫妻を囚えるまで持ちこたえるのだな!」

 エティエヴァン公爵は、そう言って通信を切ると追跡を開始する。
 正直公爵には、地上部隊がどうなろうが知ったことではなかった。

 その頃、ソンム星系の惑星ア二アンへ向かう宇宙船の中で、ルイはフランの部屋のソファーに対面で座り今回の計画のあらましを聞かされていた。

 フランは部屋に入ってきたルイに対して、自分の座っているソファーの横を畳んだ洋扇で叩いて、隣に座れとアピールしたがルイは対面のソファーに座った。

「では、国王ご夫妻は主星を脱出して、惑星ア二アンへ向かっているのですね?」
「そうだ。クレールの報告では、計画どおりに無事脱出して向かっているらしい」

 そう答えながらフランは、机を挟んで対面に座るルイのスネあたりを机の下から足を伸ばして、つま先でツンツンと突いている。

「反乱軍は死に物狂いで、父上達を追跡しているであろうな。奴らには大義名分がないから、民と軍から支持を得ていない。父上を捕らえて、自分達を認めさせねば反逆者として、いずれ正規艦隊に討伐されるからな」

 洋扇で扇ぎながら説明をするフランを見ながら、ルイはこのような疑問が頭をよぎる。

(この反乱は、フラン様が仕組んだものなのですか?)

 だが、彼はその疑問を彼女にすれば怖い答えが帰ってきそうなので、別の質問をすることにする。

「これからは、どのような計画なのですか?」

 フランは洋扇を畳むと、机の上に置いてあるコンソールを操作して、この国の星系図を表示させる。

 そして、洋扇で現在地を差しながら説明を始める。

「まずは、周辺に駐留している守備艦隊の集結する惑星ア二アンへ向かう。そこにいる艦隊で父上達を追撃してくる反乱軍艦隊を迎撃し殲滅する。どうだ、至極シンプルな計画であろう?」

 フランは洋扇を広げて、これから行われる戦いを前にして、緩む口元を隠しながらそう答えた。

 彼女は戦いを求めていた、自分の才能を試すために、そして野望を叶えるために。

 反乱勃発から二週間後、フラン達は国王夫妻より先に惑星ア二アンへ到着すると、惑星周辺には戦闘艦艇が既に400隻程集結していた。

 そして、ルイ達を乗せた宇宙船は集結している戦闘艦艇の合間を縫って、白を基調とする一際目立つ新型艦に近づいていく。

「宇宙に白色とは、目立つ艦だな…」

「私が命じて造らせた新型艦だ。フフフ…、私の見た目と同じだから、私の乗艦としてぴったりであろう?」

 ルイの感想に、肌が透けるように白い少女は、その色素の抜けた白に近い銀色の長い髪を指で梳すきながらルイにそう言った。

「フラン様……」

 ルイはフランが自分自身を卑下していると思い心配そうに見ていると、彼女もそれを察して、こう彼に答える。

「ルイ、そのような顔をするな…。別に卑下して言っているわけではないのだから。それに、今の私は自分の容姿を気に入っているからな」

 フランはそう答えた後に、

(オマエが神秘的で素敵だと言ってくれたからな…)

 そう思いながら広げた洋扇で、赤くなった顔を隠す。

 今のフランには元が白すぎるから、照れて赤くなると目立つのだけが困りの種であった。

 新型艦に横付けすると、ルイ達は連絡艇でその虚空の中でその白色を更に際立たせている艦に移乗して、それぞれ割り当てられた部屋に案内され、そこに用意されていた軍服に着替えブリッジに移動する。

 ブリッジに着くと、そこには艦のクルー達が忙しそうに出航の準備をしている。
 クルーの多くはフランが座乗する為か女性が大半を占めており、艦長も女性であった。

 艦長は敬礼すると、自己紹介をおこなう。

「フランソワーズ王女殿下、わたくし本艦の艦長を務めさせていただきます、オーロル・ユレル大佐です。よろしくお願いします」

「よろしく頼む、ユレル大佐」

 フランはそう言って答礼すると、部屋で待機していたリン・マリヴェル博士が手に鞄を持って艦橋にやってきた。

 マリヴェル博士は、さっそくフランに自信作の感想を尋ねる。

「フランソワーズ殿下、どうですかこの新型艦の感想は?」
「なかなかいい艦だな。あとは実戦でどれだけ使えるかだな」

「もちろん、使える艦に決まっているじゃないですか。この艦は最新技術が使われているのですよ? あと十年は前線で戦えますよ!」

「そうあってもらいたいものだな。ところで博士、この艦の名前は?」

 フランのこの問にマリヴェル博士はこう返す。

「それは、殿下がお決めになってください」

 ユレル艦長はフランに命名権の説明をする。

「旗艦級の命名権は国王陛下にあり、今は緊急時なので殿下にあると思われます」
「そうか……」

 フランは、艦長の説明を聞くと艦名を考え始める。

 そして、少し考えた後に命名する。

「この艦の名はブランシュ(白)としよう」
「素晴らしい艦名ですね…」

 ユレル艦長は実に優秀な軍人らしく空気を読んだ言葉を発する。

「ブランシュ(白)って、そのままの艦名ですね……」

 艦橋のクルー一同が思っていても、空気を読んで誰も言わなかったことを、空気を読まないマリヴェル博士がそう発言して、艦橋の空気が一瞬にして凍りつく。

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