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序章
迫りくる戦火 02
しおりを挟むルイの王立士官学校での生活は一年を過ぎようとしていた。
ある日、食堂でご飯を食べていると何とフランに友達を紹介され驚くことになる。
何故なら、彼の知る限りフランには友達と呼べる存在が、今までいなかったからである。
「彼女は私の友達で、メアリー・コールフィールドだ。工学を履修している時に何度か一緒になり、仲良くなったのだ」
「ルイ・ロドリーグです。よろしく、コールフィールドさん」
彼はフランの手前そう無難にメアリーに自己紹介した。
すると、彼女はルイを少し警戒しながら自己紹介をしてくる。
「メアリー・コールフィールドです…。よろしくお願いします」
ルイは、彼女のその様子を見て
(少し警戒されている気がする…、気の所為だろうか…)
彼女の態度から、そのように感じ取る。
そして、ルイは後日その理由を知ることになる。
数日後、ルイが昼食をとりに王立士官学校食堂に行くと、テーブルの一番端の席で一人サンドイッチを食べているメアリーを見つける。
メアリーは小柄で栗色の髪をしており、行儀よくサンドイッチを食べている姿はハムスターを連想させる。
ルイは、ここはフランの兄代わりたる自分が、その友達と友好を深めておくべきであろうと思い声をかけることにした。
彼はメアリーの対面の席に立つと、警戒されないようにできるだけ威圧感を与えないように声をかける。
だが、そんな事をしなくてもルイには威圧感など皆無であり、ついでに覇気も威厳も貫禄も感じず、むしろ親しみやすい青年に見える。
「こんにちは、コールフィールドさん。一緒にご飯いいかな…?」
ルイに声を掛けられたメアリーは、声の主が彼だと気付くと警戒心をあらわにしてくる。
「あ~、もしかして僕のこと警戒している?」
小動物のように自分を警戒しているメアリーに、ルイはストレートに聞くことにした。
すると、彼女はルイを警戒しながらジロジロ見た後に
「はい、警戒しています…。フラン様が仰っていました。ロドリーグ様は、女性と見ると手当り次第声をかけて、お話した後に別れると…」
「酷い誤解だ! と、思ったけどよく聞くと悪いこと言われてない気がする…」
ルイはフランが酷い事をメアリーに吹き込んだと思ったが、言い回し方が悪いだけで何も悪いことを言われていないことに気付く。
彼のその感想に、確かに悪い話風に聞こえるが、よく聞けば何も悪くないと気付いたメアリーは、どうしてルイが悪い人だと思ってしまったのか不思議に思った。
それは、フランの話し方のせいであり、彼女はルイが悪い男だというような雰囲気を出しながら、注意喚起するような話し方をしてメアリーに誤解を与えたのであった。
その理由は勿論ルイを取られないようにするためである。
自分が誤解していたと気付いたメアリーは、ルイへの警戒心を解くと昼食をしながら色々な会話をした。
彼女の家はエゲレスティアの名門で、代々軍人を多く輩出してきた家系らしく、そのため彼女にも当然軍人になるようにと言われ、仕方なく士官学校に入った。
だが、彼女は自分が軍人に向いてないと自覚していた為に工学を履修し、後方支援に回ることにしたのであった。
ルイはその話を聞いた時に、”その手があったか!”と思ったが、自分に工学の才能がないことに気付いて諦めた。
「フラン様って見た目も神秘的で素敵だし、沈着冷静で聡明で…まるで、物語に出てくる登場人物みたいです」
メアリーは、フランを憧れと羨望の眼差しで見ており、フランもその眼差しが奇異の目や差別の眼ではないことに気づき、さらに少し内向的ではあるがその素直で優しい性格も気に入って友達になったのであった。
「コールフィールドさんは、小説が好きなのですか?」
「はい、幼い頃から読んでいました」
「僕もなんです」
ルイは同じ小説好きという事で、話が盛り上がりフラン以外の異性と初めて、長々と会話することが出来た。
昼休み終了の時間が迫ったので、ルイは最後にメアリーに
「フラン様と、これからも仲良くしてあげてください。ああいう方なので、友人と呼べる存在は余りいないので…」
と、最後に彼女にこれからもフランとの友誼を結んでくれるようにお願いする。
「そのようなことを言われなくても、私はフラン様とずっとお友達でいたいと思っています」
メアリーは、ルイに本心からそう答えた。
彼女はルイにすっかり心を許し別れ際に、この様な提案をしてきた。
「ロドリーグ様、これからは私の事はメアリーとお呼びください」
ルイも同じ趣味を持ち、話しやすい彼女のことを気に入りこう返答する。
「では、メアリー。僕のこともルイでいいよ」
「はい、ルイ…先輩」
メアリーは人生で初めて、異性のファーストネームを呼んだために、少し照れながらルイの名前を呼んだ。
勿論この後大使館に戻ったルイは、フランのヤンデレ追求を受けることになる……
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