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しゃれこうべの誘惑6
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(ふんどしの上からでもわかるほど安次郎は濡れておった。ということは、あいつめ、少しこすった程度で飛ばすに違いない。せっかく作った美しい千代の顔をあいつの妻代わりにされてたまるか)
と、安次郎の意表をついて、韋駄天のごとき速さでセンズリを始めた。
「うおおおおおお! 千代! 千代! 千代ぉぉぉ!」
突然叫びだし男根を激しくさする松兵衛に、こいつ気でも狂ったかとまで安次郎に思わせたが、狙いはよくわかった。
俺よりも先に千代の顔にかけるつもりであろう。元々しゃれこうべを持ってきたのは俺だ。何を意気込んで出しゃばってくるのだ。一花持たせてやっただけでもありがたしとすべきであるところを、この男、よほど千代のことが好きだったに違いない。だが、お前のその思いもすべて俺のおかげだと思えないからこそ、人に感謝することを知らぬからこそ、おなごに相手されなくなる所以よ。千代はお前に汚させぬ。
「千代殿! 今宵だけ! 今宵だけ失礼させてはいただけぬか!」
安次郎の言葉に、「こいつ、夜這いを想定しておるな」と松兵衛に思わせた。
その瞬間松兵衛の中に安次郎の計画が見えた。夜こっそりと寝静まった妻と子供の閨から抜け出て文十郎の隣で寝る千代の元へと行く。こっそりと男根を千代の口に運びつつ目覚めた千代の口を屹立したもので塞ぐということだろう。
妄想にかけては年季が入っている。熟練の職人は達人の仕事を見抜くのと同じ。安次郎の頭の中など易々と見透かしていた。
(そのような小さなイチモツでは口など塞がるものか)
と、横目で安次郎のものを見ていたが、計画がわかったからには負けていられぬ。
対して松兵衛は「最初から最高潮」作戦に出ることにした。
つまり千代は既に松兵衛のもので感じすぎて何度も逝っているにも関わらず、松兵衛の名前を呼び狂おしいほどに求めてくる。松兵衛は千代の想いを受けて千代の名前を続けて呼び続ける。
「千代! 千代ぉ! 千代ぉぉぉぉ! お前だけだ千代!」
安次郎。気が散っていた。
こうもけたたましく獣のように騒がれてはたまらん。俺は薄明かりのような秘め事が好きであるのに、こいつの節操のなさときたら、おなごはもっと優しく繊細に扱わなければいかんのだ。俺も激しくすればおなごは満足すると考えていた時期があったが、そうではないのだ。その激情を押し付けることこそ、男の我侭というもの。
心の中で諭すように松兵衛を説教していた安次郎だが松兵衛のことなど気にかけていては、こいつに先にかけられてしまう。安次郎の危機感は悟りの境地にも似た穏やかさを導き出し、松兵衛は隣にいないものとして安らかな心持ちへと入っていき、優しくセンズリを始めた。
「おお、そんなに俺を受け入れてくれるのか。千代殿。おおう。そんなにきつく締め付けてきては、俺も耐えられないではないか。おう。おう。そんなに締め付けるな。いくら体が喜んでいるとはいえ、こりゃたまらん。おおう」
安次郎の新たな策に多少の狼狽を見せた松兵衛であったが、千代はすでに俺を求めているのだ。そのような軟弱なまぐわいでは悦ぶものも悦ぶまい、としたたかに冷笑しながらも、余裕の昂ぶりを見せていく男根は既に果ての痺れを感じ始めていた。
「お、おおお、ち、千代ぉ」
松兵衛の叫びが少なくなると気がついた安次郎。先は越させぬ、と同時に男根の高潮を身に受けんばかりの心地よさ。
「千代殿ぉ!」
「千代ぉぉぉぉ!」
正に同時。亀頭の先から水鉄砲のように迸る松兵衛の白液がおしろいで艶めいた頬にべっとりとかかり垂れたのに対し、安次郎先端からところてんのようにとろりと垂れるばかり。松兵衛は内心勝利した気持ちでいた。恐らく夜な夜な淫らな考え事でもして己を慰めていたのであろう。だから勢いもなくなり、いざという時の飛び道具も緩んだ弦で打った弓矢のように地に落ちるのだ。
と、考えていたのも束の間、
「千代という声がしたが! 千代! 千代が見つかったのか!」
戸を勢いよく引き開ける音。
と、安次郎の意表をついて、韋駄天のごとき速さでセンズリを始めた。
「うおおおおおお! 千代! 千代! 千代ぉぉぉ!」
突然叫びだし男根を激しくさする松兵衛に、こいつ気でも狂ったかとまで安次郎に思わせたが、狙いはよくわかった。
俺よりも先に千代の顔にかけるつもりであろう。元々しゃれこうべを持ってきたのは俺だ。何を意気込んで出しゃばってくるのだ。一花持たせてやっただけでもありがたしとすべきであるところを、この男、よほど千代のことが好きだったに違いない。だが、お前のその思いもすべて俺のおかげだと思えないからこそ、人に感謝することを知らぬからこそ、おなごに相手されなくなる所以よ。千代はお前に汚させぬ。
「千代殿! 今宵だけ! 今宵だけ失礼させてはいただけぬか!」
安次郎の言葉に、「こいつ、夜這いを想定しておるな」と松兵衛に思わせた。
その瞬間松兵衛の中に安次郎の計画が見えた。夜こっそりと寝静まった妻と子供の閨から抜け出て文十郎の隣で寝る千代の元へと行く。こっそりと男根を千代の口に運びつつ目覚めた千代の口を屹立したもので塞ぐということだろう。
妄想にかけては年季が入っている。熟練の職人は達人の仕事を見抜くのと同じ。安次郎の頭の中など易々と見透かしていた。
(そのような小さなイチモツでは口など塞がるものか)
と、横目で安次郎のものを見ていたが、計画がわかったからには負けていられぬ。
対して松兵衛は「最初から最高潮」作戦に出ることにした。
つまり千代は既に松兵衛のもので感じすぎて何度も逝っているにも関わらず、松兵衛の名前を呼び狂おしいほどに求めてくる。松兵衛は千代の想いを受けて千代の名前を続けて呼び続ける。
「千代! 千代ぉ! 千代ぉぉぉぉ! お前だけだ千代!」
安次郎。気が散っていた。
こうもけたたましく獣のように騒がれてはたまらん。俺は薄明かりのような秘め事が好きであるのに、こいつの節操のなさときたら、おなごはもっと優しく繊細に扱わなければいかんのだ。俺も激しくすればおなごは満足すると考えていた時期があったが、そうではないのだ。その激情を押し付けることこそ、男の我侭というもの。
心の中で諭すように松兵衛を説教していた安次郎だが松兵衛のことなど気にかけていては、こいつに先にかけられてしまう。安次郎の危機感は悟りの境地にも似た穏やかさを導き出し、松兵衛は隣にいないものとして安らかな心持ちへと入っていき、優しくセンズリを始めた。
「おお、そんなに俺を受け入れてくれるのか。千代殿。おおう。そんなにきつく締め付けてきては、俺も耐えられないではないか。おう。おう。そんなに締め付けるな。いくら体が喜んでいるとはいえ、こりゃたまらん。おおう」
安次郎の新たな策に多少の狼狽を見せた松兵衛であったが、千代はすでに俺を求めているのだ。そのような軟弱なまぐわいでは悦ぶものも悦ぶまい、としたたかに冷笑しながらも、余裕の昂ぶりを見せていく男根は既に果ての痺れを感じ始めていた。
「お、おおお、ち、千代ぉ」
松兵衛の叫びが少なくなると気がついた安次郎。先は越させぬ、と同時に男根の高潮を身に受けんばかりの心地よさ。
「千代殿ぉ!」
「千代ぉぉぉぉ!」
正に同時。亀頭の先から水鉄砲のように迸る松兵衛の白液がおしろいで艶めいた頬にべっとりとかかり垂れたのに対し、安次郎先端からところてんのようにとろりと垂れるばかり。松兵衛は内心勝利した気持ちでいた。恐らく夜な夜な淫らな考え事でもして己を慰めていたのであろう。だから勢いもなくなり、いざという時の飛び道具も緩んだ弦で打った弓矢のように地に落ちるのだ。
と、考えていたのも束の間、
「千代という声がしたが! 千代! 千代が見つかったのか!」
戸を勢いよく引き開ける音。
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