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明日は明日1
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今日コウキがデートに誘ったハルミは、出会ってからずっと不機嫌だった。恋人同士の気兼ねない誘いだったが、マンネリ化を止めるお洒落気もないコウキには、暇を見つけてはハルミとどこかに出かけるくらいしか、彼女を楽しませられなかった。
楽しいだろうと思い込んでいるのはコウキだけで、誘う場所もそれほど代わり映えがしない。食事もこじんまりした和風のお店で、そばやうどんが多く、和食の創作料理というところまでの広がりがない。連れて行く場所も、なぜか海が多い。コウキが海へと行くと、コウキばかりが喜んで、ハルミのしらけた雰囲気も感じ取らずに饒舌になる。
ハルミはそんなコウキの姿を見ながら、とことん「女心の一つもわからない男」と心の中では冷ややかに苦笑していた。
コウキが一方的にほれ込んで、押しに押して落としたハルミだが、それだけにハルミとの時間を大事にしようとして、楽しもうとした。ハルミが唯一楽しそうにしているのは、服とか服飾品とか少し高めのレストランとか、それらをコウキのお金で楽しんでいるときだけで、コウキが無理をするにも限界がすぐ見えるようなことばかりで、長続きはしない。それでもコウキは彼女の顔やスタイルや時々やや斜め上に視線を向けながら何かを思うようなつれない仕草が大好きだった。怒っているようなふりをして実は内心大好きだという「ツンデレ」タイプの人かとコウキは思っていた。
コウキはハルミに嫌われているとはまったく思ってはいなかった。なぜなら時折応じるセックスもしっかりと濡らして最後には自分から求めだすからだ。きっと、なんだかんだいって好きに違いないとコウキは思っていた。
日も暮れてきて、コウキは「今日もきっとハルミを楽しませられただろう」と思い、ウキウキしながら車をラブホテルへと走らせると、ハルミは重たいものを引きずるように途切れ途切れに切り出した。
「あの、さ。ホテルいくの?」
「そうだけど。都合悪かった?」
「うん。……もうやめたい」
「え? もうやめたいって?」
「何をやめたいのだろう」と思いつつ車を走らせながらも妙に切ない不安がコウキを襲っていた。ハルミの雰囲気はコウキの冗談を飛ばすような言葉を受け付けないほどに切羽詰っているように感じた。そのハルミから伝わってくる重苦しい雰囲気を感じるごとに、まるでじわじわと胸に広がる渋く苦しい痛みがコウキの落ち着きを奪っていった。
「もう……降ろして。自分で帰るから。あと……さ、別れたいの」
ハルミの言葉は、コウキが予想すらしなかった言葉だった。「えー? 冗談でしょー」なんて軽口を叩こうものなら、一生後悔しそうな張り詰めた空気だった。それゆえに何も言えずに車を走らせていた。
コウキは心の最後の強がりから、笑いながら胸の痛みにこらえていた。別れたいとはもちろん恋人の関係を解消したいということだ。認めたくないが、絶対そうだ。コウキはそれでも本当に別れたいのかを確かめたかった。
「何言ってるの。どうしてさ」
「決まってる。一緒にいてもつまらないから。サイテイ」
くどくどと理由を説明されるよりも、短い言葉のほうがグサリと胸を刺した。「つまらないから。サイテイ」という言葉ですまされてしまうほど自分の価値はハルミにとってなかったのだと思うと泣きそうになっていた。このままアクセルを踏んで電信柱にでも突っ込みたい気分だった。ハルミと一緒に死んでしまおうかと思えるほどで、ハンドルを握っている手が震えていた。
二の句を告げられないコウキは「わかったよ」と言って街中でハルミを車から降ろした。ゆれるハルミの髪を車の中からしがみつくように見入っていたコウキは、未練たらたらだったが、対照的に未練もなくコウキを拒むハルミの背中を、コウキは追いかけることはできなかった。
その晩コウキは女のように泣きじゃくりながらも、枕を蹴飛ばしたり投げ飛ばしたりしながらうさばらしをしたが、気持ちが晴れることはなかった。
楽しいだろうと思い込んでいるのはコウキだけで、誘う場所もそれほど代わり映えがしない。食事もこじんまりした和風のお店で、そばやうどんが多く、和食の創作料理というところまでの広がりがない。連れて行く場所も、なぜか海が多い。コウキが海へと行くと、コウキばかりが喜んで、ハルミのしらけた雰囲気も感じ取らずに饒舌になる。
ハルミはそんなコウキの姿を見ながら、とことん「女心の一つもわからない男」と心の中では冷ややかに苦笑していた。
コウキが一方的にほれ込んで、押しに押して落としたハルミだが、それだけにハルミとの時間を大事にしようとして、楽しもうとした。ハルミが唯一楽しそうにしているのは、服とか服飾品とか少し高めのレストランとか、それらをコウキのお金で楽しんでいるときだけで、コウキが無理をするにも限界がすぐ見えるようなことばかりで、長続きはしない。それでもコウキは彼女の顔やスタイルや時々やや斜め上に視線を向けながら何かを思うようなつれない仕草が大好きだった。怒っているようなふりをして実は内心大好きだという「ツンデレ」タイプの人かとコウキは思っていた。
コウキはハルミに嫌われているとはまったく思ってはいなかった。なぜなら時折応じるセックスもしっかりと濡らして最後には自分から求めだすからだ。きっと、なんだかんだいって好きに違いないとコウキは思っていた。
日も暮れてきて、コウキは「今日もきっとハルミを楽しませられただろう」と思い、ウキウキしながら車をラブホテルへと走らせると、ハルミは重たいものを引きずるように途切れ途切れに切り出した。
「あの、さ。ホテルいくの?」
「そうだけど。都合悪かった?」
「うん。……もうやめたい」
「え? もうやめたいって?」
「何をやめたいのだろう」と思いつつ車を走らせながらも妙に切ない不安がコウキを襲っていた。ハルミの雰囲気はコウキの冗談を飛ばすような言葉を受け付けないほどに切羽詰っているように感じた。そのハルミから伝わってくる重苦しい雰囲気を感じるごとに、まるでじわじわと胸に広がる渋く苦しい痛みがコウキの落ち着きを奪っていった。
「もう……降ろして。自分で帰るから。あと……さ、別れたいの」
ハルミの言葉は、コウキが予想すらしなかった言葉だった。「えー? 冗談でしょー」なんて軽口を叩こうものなら、一生後悔しそうな張り詰めた空気だった。それゆえに何も言えずに車を走らせていた。
コウキは心の最後の強がりから、笑いながら胸の痛みにこらえていた。別れたいとはもちろん恋人の関係を解消したいということだ。認めたくないが、絶対そうだ。コウキはそれでも本当に別れたいのかを確かめたかった。
「何言ってるの。どうしてさ」
「決まってる。一緒にいてもつまらないから。サイテイ」
くどくどと理由を説明されるよりも、短い言葉のほうがグサリと胸を刺した。「つまらないから。サイテイ」という言葉ですまされてしまうほど自分の価値はハルミにとってなかったのだと思うと泣きそうになっていた。このままアクセルを踏んで電信柱にでも突っ込みたい気分だった。ハルミと一緒に死んでしまおうかと思えるほどで、ハンドルを握っている手が震えていた。
二の句を告げられないコウキは「わかったよ」と言って街中でハルミを車から降ろした。ゆれるハルミの髪を車の中からしがみつくように見入っていたコウキは、未練たらたらだったが、対照的に未練もなくコウキを拒むハルミの背中を、コウキは追いかけることはできなかった。
その晩コウキは女のように泣きじゃくりながらも、枕を蹴飛ばしたり投げ飛ばしたりしながらうさばらしをしたが、気持ちが晴れることはなかった。
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