貴美月カムイ

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誰かの記憶に深く残ればいいとあなたは言っていた。 
誰かが俺のことを忘れなければいつまでも生き続けられると言っていた。 
あなたは、どこへ行ってしまったのだろうといつも思う。 
いつも優しかった。 
優しくしてくれた。 
優しく抱いてくれた。 
「私のこと、愛してる?」 
と聞くと。 
「愛してはいない」 
とはっきり答えた。 
優しいけれど、冷たい人だった。 
 
あなたを思い出すとき最初に思い出せるのは何よりもあの大きな手だった。 
私の胸を撫でるようにして優しく揉んでいくあの大きな手。 
そしてそれと同時に絡んでくる艶めかしい舌。 
愛撫されるような上品なキスはしつこくなく、舌の先でもてあそばれるように絡められた。 
愛はなくて、私を抱けたのだろうか。 
でも、そんなことはどうでもよいように思えた。 
 
彼は私のことを大事にしてくれた。 
私のわがままにできるだけ付き合ってくれて、あなたの冷たさに数多くの涙を流した時もじっと側にいてくれた。 
本当は、愛していないだなんて嘘だと思いたい。 
 
私が恋しくてたまらずにあなたを抱き締めた時、あなたの胸はとても大きかった。 
子猫を撫でるように優しく頭を撫でてくれる大きな手が、私をいつも包んでくれていたのを思い出す。 
私はいつもあなたを喜ばせたくて、あなたに負けないほどのキスをプレゼントしようと唇を重ね、あなたの股間に手を這わせ、絡みつくように手を動かした。 
やがて硬くなったモノを口の中へと優しく咥え込む。 
濡れた唇からあふれ出した唾液が床に垂れる。 
あなたが感じているのが口の中の脈を打つ大きな鼓動でわかる。 
自分の中に迎え入れた時だって、あなたの熱いあの形を、目を閉じたってわかるのに、どうして心だけわからないのだろう。 
 
「愛している……」 
そう、一言虚空へ呟いて涙を一粒流す。 
心の中がわからなくなって寂しくなる。 
誰よりもあなたを求めているのが体でわかる。 
 
小さな夜の積み重ね。 
大きく息を吸ったベッドの上で、あなたを見つめ愛しく思った。 
いつも吸い込まれそうな深い瞳で私を見つめていた。 
首筋をなぞる舌が這っていき、耳たぶが口の中で転がされた時、私はぞくぞくと体を震わせて声を漏らす。 
まるであなたの愛撫は優しい毛布のようで、私の体に触れるその手は羽毛のようにふわりとなぞった。 
まるで雲の上に乗っているような気持ちで、私はいつも自然とあなたを受け入れ、心を濡らし、私の秘部はまたたくまに甘い汁を流す。 
あなたは私がどれだけ濡れているか知っている。 
あなたは私がどれほどあなたを欲しているか知っている。 
あなたはいつも私をじらしながら私を抱いた。 
 
あなたとの時間を思い出すとき、私は自然と体を熱くさせる。 
指が自然と吸い込まれるように秘部をいじり、肉の芽をいじめだす。 
声をあげて、私はあなたに挿入される自分を思い起こす。 
「ああ……愛してる……」 
何度も何度もあなたが私を貫く。 
肉を分け入って犯すあなたの膨張しきった硬い肉が、私の奥を波立たせるように何度も突き上げる。 
私は蜜壷で深くくわえ込んだ男根を思い起こして指を深く入れていく。 
漏れる声を耳で感じ取るよりも、秘部から漏れる濡れた音に神経が集中して乳首を硬くさせる。 
あなたとの思い出に浸る自分がいた。 
 
意識が遠くなって、意識が押し寄せる。 
体がビクビクと震え、波が体全体を駆け巡って秘部から放出されていくように、私は記憶も吐き出す。 
しばらく静寂を楽しみ、あなたを忘れられる自分を感じる。 
いつも、あなたをすべて思い出す前に自分を真っ白にする。 
そのほうが幸福だからだ。 
 
あなたを思い出さなくても、あなたは側にいる。 
だから私はいつもあなたを自然と感じる。 
あなたに黙っていたこと、あなたに言えなかった嘘。 
言えなかったことも、優しい嘘。 
でも、もしかしたら、あなたにとっては未知の嘘。 
あの時、あなたから「さよなら」を告げられて、「もう二度と会わない」と告げられた。 
「そうだね」と一言言ったけれど、あれは嘘。 
 
寝ていた赤子が泣き出した。 
ミルクが欲しいのだと泣き声でわかる。 
そうだね、まるであなたみたい。 
私が欲しかったんだと、そう信じたい。 
あなたの子供、あなたについた嘘。 
二度と会えないのは嘘。 
私は毎日あなたに会っている。 
あなたは記憶だけじゃなく、分身も作ったんだよ。
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