人当て鬼

貴美月カムイ

文字の大きさ
上 下
16 / 34
白骨

白骨4

しおりを挟む
 和夫は初めて見る白骨死体の前で説明を聞いても違いがまったくわからなかった。
「じゃあここにある白骨は男性のものか」
「いえ、肩幅や骨の太さから見て、頭蓋骨の大きさが小さい印象を受けます。小顔にしてもやや小さいのでは。それに全体的にごつごつしておらず滑らかです。断定はできませんが、全体的な骨格の大きさから見て、頭蓋骨は別の人間のものかと。あくまで推測ですが、顔は肉付けしていけば女性っぽい顔になりそうですね。実際つけてみないとわかりませんがね」
 窪田は大きく息を吐いて「そうか」と言った。そして、のたりのたりと玄関へと向かい、「管理人さん、電話あるかい? ここ電波が悪くて携帯電話が繋がらないんだ」と話すと、志穂は、はっと水に打たれたように「こ、こっちです」と管理人室へと向かった。窪田は去り際に「柏田。ちょっくら警察呼んでくる」と言った。
 和夫は驚いて、柏田と呼ばれた若い刑事に聞いた。
「え? あなたたち警察じゃないのですか?」
「警察ですよ。でも管轄が違うと僕ら部外者でしかないんです。ここで僕らが捜査していることも先方さんには知らせていませんからね。こういうものが見つかった限りは所轄通さなきゃやっかいになります」
 和夫は何を言われているのか理解できなかった。警察は警察じゃないのだろうか。警察の中でも管轄が違うと部外者になる。なぜだろうという疑問が拭い去れなかった。
「この現場は現状維持しておかないとあとで色々面倒なことになりますので、いったんこの部屋から出て行ってもらえませんか」
 柏田が和夫を部屋からだして三十分もしないうちに現場は完全に封鎖され、警察関係者で埋め尽くされた。志穂と和夫は洗いざらい紀之のことを聞かれ、そしてなぜここにいるのかなど、事件とは直接関係のないようなことも多々聞かれた。
 和夫は、執拗に警察に詰め寄られた。ここへ来た理由として、「封筒を届けに来た」と答えたが、肝心の封筒が現場から見つからず、「どこかに隠したのではないか」「何か(和夫の)不利になるようなことが書かれているのではないか」とまで疑われる始末だった。
 「封筒がない」と警察から聞き、和夫の背中には妙な寒気が走り、嫌な予感がざわざわと胸をなでた。
 さすがに一日中質問攻めにあい、くたくたに疲れ果ててしまった和夫は、管理人室で志穂とぼんやりしながら座っていた。部署が違うということで同じ警察でも次々と人が来ては、三回ほど同じ質問に答えたこともあった。
 ぐったりと畳の上に横になって天井を見ると部屋が回っているようだった。一日だけでも疲労はピークに達している。体は汗でべとついている。外はもう真っ暗で帰れそうもなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

近辺オカルト調査隊

麻耶麻弥
ホラー
ある夏の夜、幼なじみの健人、彩、凛は ちょっとした肝試しのつもりで近辺で噂の幽霊屋敷に向かった。 そこでは、冒涜的、超自然的な生物が徘徊していた。 3人の運命は_______________ >この作品はクトゥルフ神話TRPGのシナリオを元に作ったものです。 この作品を見てクトゥルフ神話TRPGに興味を持った人はルールブックを買って友達と遊んでみてください。(布教)

紅い呪物

流誠
ホラー
ルポライターの沢木淳一。 出版社からの依頼を受けて、ある人形に苦しめられていると言う女性に取材を申し込む。女性の語る怪現象にのめり込む沢木。 それは踏み込んではならない戦慄の恐怖の始まりだった…

怨念の肉

O.K
ホラー
精肉店で働く主人公が、届いた肉を切るときに怨念を感じ、体調が悪化する。その肉の主が自殺ではなく殺されたことを知り、怨念の正体を追求する。事件を解決し、怨念は薄れるが、主人公はその体験を忘れない。

杭打ち

aika
ホラー
呪い 静かに狂っていく精神世界 ホラー 現実と夢、生と死、正常と異常 世界の境目。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

こわくて、怖くて、ごめんなさい話

くぼう無学
ホラー
怖い話を読んで、涼しい夜をお過ごしになってはいかがでしょう。 本当にあった怖い話、背筋の凍るゾッとした話などを中心に、 幾つかご紹介していきたいと思います。

喫茶店の女

ツヨシ
ホラー
幽霊が出ると噂の喫茶店

【一話完結】3分で読める背筋の凍る怖い話

冬一こもる
ホラー
本当に怖いのはありそうな恐怖。日常に潜むあり得る恐怖。 読者の日常に不安の種を植え付けます。 きっといつか不安の花は開く。

処理中です...