最強の魔帝の少年〜魔力がゼロの無能と思われているが実は最強。落ちこぼれの令嬢を守る為に力を奮い無双する

黒詠詩音

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41話 最悪の事態

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「やはりダメか、これ本当に使えるのか?」

魔帝に愛された武器、今ならば抜けるかと、思ったが、やはりまだダメだ。
きっとまだ実力が足りない、何かをきっかけに抜ける事ができるのか? 客観的に考えていた。
だが、その時、ボクのローブから声が聞こえる。

『緊急事態発生! 動ける風紀員はすぐさまに魔技場に来い!』

声はそこで途切れた、今の感じ前も何処かで……脳裏にある記憶が思い浮ぶ。
まさかなぁと思うけど、念の為に急いで向かう。
螺旋階段を降り、一番下にまで向かう、ソロモンの校門から、真っ直ぐ左に進んだ所。
円形で出来た大きな白い建物がある。
人が中から大量に出てくる、今何が起きている? 通路に入り、観客席に向かう。
そこでボクは、驚愕の物を目の当たりにする。

「ゆ、ユウナさん?」
「来るなクロ!!」

ボクはフィールドに近付く、風紀員長は腕を広げ制止する。
なんだこれ? ボクが魔技場から離れている間、何が起きた? 思考が正常に反応していない。
目の前の惨事を見れば不思議ではない、なんせフィールドにはユウナさんと、魔人がいるのだから。
魔人の黒いローブはボロボロ、肌は黒に近い褐色、ギロリと赤い双眸がこちらを見る。

「来たか無能、お前の主人はオレが貰っていくぞ」

無能、久しぶりに聞いたなその単語、ユウナさんを連れていく? 何処に? 

「クロ君来ちゃ駄目!!」

ユウナさんすみません、それはできません。最近命令に逆らってばっかでごめんなさい。
観客席にある手すりを掴む。

「おいクロ何をする気だ?」

風紀員長がボクを止めようとする、今この人に捕まる訳にはいかない。
体を乗りだして、手すりを離す、地面に落ちる間に金色の指輪を着ける。
魔力を体に流す、地面に着地すると、足下にクレーターができる。

「あのバカ! 前の魔人とはレベルが違うんだぞ!?」

知っている、ドルグアが魔人の時と、全く魔力の量、流れが違う。

「オレとやる気か? いいぜせめて楽しませてくれよ!」
「そんな御託はいい、お嬢様からその手をどけろ!!」

魔人はニヤリと口角を上げる、魔人の手がユウナさんの首に回る。
そのまま首を絞めた。「うぅぅ、く、苦しい」魔人はユウナさんの様子を見て、妖艶な表情。
人が苦しんでいる所を見て何が楽しい? ボクの体から怒りが込み上がる。
あぁ今すぐにでも魔人を、殴り倒したい! 拳を強く握る。

「なんだすぐに来ないのか、がっかりだよ」

魔人は分かりやすく愕然とする、はぁーと首を振る。
やはりボクを怒らせる為にやったのか、魔人はユウナさんを離す。
ユウナさんはゲホゲホと咳き込む。

「わざとボクを怒らせただろ? 激情して向かった所を殺す。それがお前の目的だろう?」
「なんだぁ案外冷静かよ、無能の癖に面白いな! さぁやろうか」

ボクが冷静? それは御門違いだ、全然冷静なんかではない。
今すぐお前をぶっ飛ばしたい、だけど、それよりユウナさんの命優先だ。
激情になると怒りに感情が支配される。
それではユウナさんを助けれない、こっちが攻撃する前に、ユウナさんを殺されたら意味がない。
殺す事はきっとないだろう、魔人の発言的にユウナさんを、生かして連れて行こうとしている。

「クロ君絶対に戦っては駄目! 敵わない。この魔人と君では天と地程の差がある」

そんな事はもう既に分かっている! 対面しただけで、今のボクでは勝てないと悟った。
それがどうした? ユウナさんを見殺しにしろと? できる訳がない。

「リステリ見ていろ、今お前の執事を殺してやるからよ!」

明らかさまに殺意を剥き出し、右手をこちらに向ける。
魔人の右手から魔力が充填する、あの時と一緒だ。
高密度の魔力が溜まり、綺麗な円の球体ができる。球体は赤い魔力を纏っている。

「これを喰らって生きていたら褒めてやる」
「何様だよ」

魔人の右手から放たれる、これを喰らったら一溜りもない! あの球体は多分炎だ。
炎に炎をぶつけても無意味、魔人の方が強力な炎。
ボクの火魔法では通用しない、ある意味万死休す。
炎の球体はゆっくりと徐々に、近付いてくる。

「水虎」

水で出来た虎が顕現する、咆哮しながら炎の球体に飛び付く。
水虎は前足を振り上げ、球体を攻撃する。
球体は爆散し水虎の体も崩れる。
何とか炎の球体を防ぐ事ができた、水魔法でできた水虎が崩れた。
もし生身で直撃したらと考えると恐ろしい、ほんの少し安堵し、隙を作ってしまった。

「やはりお前は無能だな」

一瞬の隙さえあれば、魔人はボクを倒せる。懐に潜られ、腹部に強烈な殴打がくる。
口の中に血が溜まる。

「ほほう? まだ死んでないか」

くっそ、息ができない、ガハッ、血を吐き出す。
口の中から鉄の味がする、前も似たような事が合った。
あの時は反撃ができた。

「簡単に死なないさ!」

体を回し拳を振う、魔人は一歩、後方に下がり躱す。
余裕そうだなぁ、その反対にボクは必死こいている。

「もう終わらせよう! 焔鳥」
「っ!?」
「お前が放った時から気に入ったんだよな」

ボクのとは違い、火球を出さずとも炎の鳥が出現する。
羽を羽ばたかせ、火の粉を飛ばす、あっつい! 火の粉に気を取られていると、眼前には火の鳥。

「中々には面白かったぞ無能」

火の鳥はボクの体を燃やし尽くす。
ユウナさんすみません、貴女様を守れない無能で……。
ボクの意識は消え掛かった。

「何だと!?」
「負けて溜まるかよ! ぶっ潰…….す」
「チッ、少し状況が変わった。リステリお前を連れていく。ソロモンの連中よ、いずれ我々はお前らを潰す」

我々? ボクの意識はまだ消えず、魔人の最後の言葉を皮切りに途切れる。
目が覚めた時には、ユウナさんも魔人も居らず、地面が抉れている。
そうか、ボクは負けてユウナさんを連れていかれた。




 
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